佐藤つとむ先生の

ー第4回ー
子供たちを襲う“オジン化・オバン化”現象は、
レシチン、ファイバーで立ち向かう

近ごろの子供は皆、早熟だといいますが、はたしてこれは褒め言葉になるのでしょうか。
たしかに昔の子供たちに比べれば体格はいいし、情報が氾濫しているので大人顔負けの物言いをする子供たちもいます。これを成長が早いと受け止めれば、そうかもしれません。
しかし、子供たちの体を見ていると、私たちは安易に喜んでばかりもいられないのです。
子供たちの体は、その多くが「早熟」を通りこして、むしろ「早老化」している、といえるのです。

実際、外来で診る子供たちの検査データを眺めていると、確実に“オジン化・オバン化”現象が起きているのが、手にとるようにわかります。まるで、ビール腹の中年男性の検査データを見ているような気になってくるのですから。また、その訴えも、更年期障害を疑わせるものが多いのです。

成熟を通りこして、早々と老化しようとしている子供たちの体が、いったい何を訴えているのか。ぜひ耳を澄ませて、その声を聞いていただきたいのです。

小中学生の10〜15%の子供たちが高脂血症だ

私がこれまで診察した中で、もっとも印象に深いのは、小学1年生の男の子です。コレステロールや中性脂肪が高いのはもとより、肝機能障害まであり、腹部エコーの検査をしてみると、みごとに脂肪肝になっているのです。これではとてもタフな子供の役はつとまりません。仕事に疲れたお父さんたちと同じで、家でゴロゴロしているのが関の山でしょう。

しかし、この子は特別ではないのです。コレステロールや中性脂肪が高い、いわゆる「高脂血症」という病気が、なんと小学1年生から中学生までの子供たち全般に見られるのです。東京都のある地区では、小中学生の10から15%の子供たちが高脂血症だ、というショッキングな統計も出ています。

また女の子に多いのが、「便秘」「冷え症」「肌荒れ」などの症状で、いわゆる不定愁訴をうったえる更年期の症状そのものではないかと思えるほどです。
そして彼らの話を聞くと、大抵がこういいます。「あまり外で遊ばない」「運動は苦手」「とくに好きな教科はない」「やりたいことが見つからない」「ジュースとかコーラはよく飲む」「甘いオヤツが好き」――と。共通しているのは、おっとりとしていて、無気力。いつも倦怠感を持っていて、ときにキレやすい。こうした性質もまた「早老化」といえるでしょう。
あなたの周囲を見渡してみてください。もはや“オジン化・オバン化”現象は、社会現象となりつつあるのです。

毎食の献立に、海・山・陸の幸を取り入れる

では、早老化した子供たちにどんな救いの手を差しのべられるのでしょうか。
まずは、基本的なことですが、食事指導です。食事の内容をチェックして、改善できる範囲で指導していきます。
とくに子供たちにとって楽しみであるオヤツは、制限してもなかなか実行できないものなので、最低限の約束にとどめます。約束は3つです。

1. オヤツは、食後3時間以上たってからにする。
2. 時間を決めて、ダラダラ食べはやめる。
3. ジュースやコーラは飲まない。

この3点を子供と約束した上で、お母さんには献立のアドバイスをします。これもやはり細かい指導をすると、途中で面倒くさくなって続きませんから、単純明快な内容にします。つまり「毎食、海・山・陸の幸を食べる」という、これだけのことです。

海の幸とは、魚介類や海藻類。山の幸は、果実類・きのこ類。陸の幸は、豆類・種実類・野菜類・卵類・乳類・肉類。この3つをいつも献立に取り入れるようにすることで、栄養のバランスコントロールはかなりよくなります。

あわせて調理上のことで、いくつか留意点をあげておきましょう。

まず、調味料として使用頻度の高い塩と砂糖ですが、塩は天然塩を選んでください。精製塩にはないカリウムをはじめとするさまざまなミネラルが含まれているからです。同様に砂糖も、黒砂糖やきび糖、オリゴ糖がおすすめです。なかでもオリゴ糖は、カロリー控えめで、腸内の善玉菌であるビフィズス菌の栄養となるので、腸内環境改善に一役買ってくれます。また、これによって便秘や高脂血症の改善が期待できるのです。

もうひとつの留意点としては、「鍋」です。アルミ、ほうろう、テフロン、銅と、いろいろありますが、どれをとっても調理中に栄養素が逃げてしまいます。調理してもなるべく栄養素を逃さず、効果的にビタミンやミネラルを摂ることができるという点では、なんといってもステンレス製の「多重構造鍋」に軍配ありです。

煮るときに「無水調理」ができますから、ビタミンやミネラルの温存が可能で、また「無油調理」によって油の使用量も抑えられます。少々値は張るようですが、家族の健康を守る必須アイテムといっていいでしょう。

EPA、DHAも、小児成人病の守護神だ

さて、こうした栄養のバランスを考えた献立に加えて、コレステロールや中性脂肪が高い人、いわゆる高脂血症の人には、レシチンやファイバー、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ビタミンC、Eといったサプリメントが、改善のための有効なヘルパーとなってくれます。

まずレシチンですが、食品では大豆、豚レバー、卵などにたくさん含まれており、生活習慣病予防の守護神のような存在です。コレステロールや中性脂肪の代謝を促進し、抗脂肪肝作用をもっています。

また乳化作用により、コレステロールが血管にこびりつくのを防ぎます。子供に、というより、まさにお父さんに補給したいアイテムです。

EPA、DHAも同様です。これは脂ののった魚に多く含まれるのですが、生活習慣病に対してオールマイティーの抗力を持っているとして、期待値の高い栄養素です。脂肪肝動脈硬化の予防、高血圧やアレルギーを抑える栄養素としては、ピカイチでしょう。

加えて、ファイバーもさまざまな恩恵をもたらしてくれます。コレステロールを追い出したり、血糖をコントロールする、万病のもとである便秘をを解消するなど、いいことずくめです。ただ、どれも過剰摂取には注意したいので、サプリメントで補給する場合は、医師の指導のもとで摂った方がいいでしょう。

もちろん、これと並んで、ビタミン類の補給は欠かせません。鉄則は食事が基本、それをバックアップするために、サプリメントを上手く使いこなすことが大切です。

(女性セブン)