気をつけなくっちゃ! 「クスリの食べ合わせ」
体にイイもの同士でも、こんなに危険なケースが
薬が効かない!かえって体調が悪くなった。
それは「飲み合わせ」が原因かも。
どの成分とどの成分の相性が悪いのか?検証しました。

総合感冒薬・鼻炎薬
Aさんは、風邪気味だった。友人がイギリス土産で高級なチェダーチーズをくれた。大のチーズ好きのAさんは鼻がつまっていては味がわからないので鼻炎薬を飲み、チーズ・サンドイッチでランチをすることにした。
ところが、ワインを飲んでもいないのに、心臓がドキドキとしはじめ、頭痛がしはじめた。
「なんかあたし変」。 同僚のBさんが見ると顔や腕に赤いまだら状の斑点ができている。頭を押さえてうんうんうなっていて、意識がもうろうとしてきた。驚いた同僚は救急車を呼んだ。
Cさんは日曜の昼にワインを飲んだ。ちょっと風邪気味だったのでそのまま昼寝をしようと思ったのだ。ところが悪酔いをしたのか、胸がむかむか苦しくなった。頭が激しく痛み、涙がぼろぼろと止まらない。風邪薬を飲んでいたのに、鼻水が出てくる。そのうち全身が赤くなり、大きな水玉のようなまだらになってしまった。
ひどい悪酔いだと考えて、そのまま横になって休んだが動悸がして苦しい。そのうち眠ってしまって数時間後に目が覚めた。赤ワインには気をつけようとCさんは思った。

犯人の名は「チラミン」
どちらも薬と食べ物の飲み合わせのケースだという。病気を治すはずの薬も場合によっては、逆の作用を起こすこともあるのだ。

「チーズに含まれるチラミンが激しい症状を起こすのです」と話すのは、伊藤由紀先生(名古屋第二赤十字病院薬剤部)。
普通、チラミンは肝臓で分解されて体の外へ出てしまうが、特定の薬を飲んでいると肝臓での分解が遅れるのだ。

「もともと結核の薬との飲み合わせが報告されているのですが、海外では死亡例の報告もあります。この塩酸フェニルプロパノールアミンは、市販の鼻炎薬や総合感冒薬でよく使われる薬です。まだ日本では薬と食べ物の飲み合わせの報告が少ないのですが、これは『飲み合わせ』自体があまり知られていないためとも考えられます。」

見過ごされて、ただの悪酔いと片づけられてしまったという場合も、もしかするとチラミンと風邪薬の飲み合わせだったかもしれない。

「このように、処方箋による薬だけでなく、薬局で売っている薬でもこの『飲み合わせ』が起きる可能性がありますから注意する必要があります。
要注意食品
チーズ
チェダーチーズやスティルトンチーズに含まれるチラミンが飲み合わせの原因になる。チェダーチーズでも長期熟成の高級品に多いから、高いからとがっついて食べないこと。短期熟成の10倍を超すチラミンが含まれているのだ。
ワイン
そのチラミンは、赤ワインにも含まれていることがある。チーズほど多くはないが、チラミンに対する反応には、個人差があるので激しい症状が出ることがある。とくに赤ワインで悪酔いをしたことのある人は気をつけたい。

頭痛薬
Dさんは、頭痛もちで頭痛薬が手放せない。ある時、友達と甘味店でお茶をしながらおしゃべりをしていると、ひどい頭痛がしてきた。
さっそくいつもの頭痛薬を飲んだのだが、いっこうに効いてこない。追加して薬を飲もうとしていると、友人が、「もしかして、(和菓子の)あんこと頭痛薬の飲み合わせかもしれないよ」と言い出した。薬があんこで効かなくなることがあるという。え〜、そんなことってあるのかしら。

油断は禁物! 意外な「飲み合わせ」
頭痛薬や総合感冒薬に含まれるアセトアミノフェンは意外なことにあんこと飲み合わせを起こす。
「この薬は効果が高く安全性が高いので、風邪の頭痛や発熱、生理痛の薬によく使われています。炭水化物や糖分と結びつきやすく、吸収が遅れることがありますね」
でも、こういう薬って食後に飲むことが多い。つまり効き目が遅れてしまう。

アルコールを連用している人では、アセトアミノフェンの肝臓での処理が亢進していることがあり毒性の強い物質を作りやすくなり、肝臓にダメージを与える場合もある。
頭痛薬として使われることが多いアスピリンもお酒やコーラと飲み合わせが。
「ビールやコーラとアスピリンを一緒に飲むと効き方が遅くなることがあります」
市販のドリンク剤にはアルコールが含まれていることが多いので、風邪をひいたからとドリンク剤をがぶ飲みするのは危ないよ。

また、アスピリンとお酒を同時に飲むとアルコールの吸収がよくなることも報告されているので同じお酒の量でもアスピリンを飲んでいると悪酔いをすることも。
要注意食品
クラッカー
頭痛薬に含まれるアセトアミノフェンは、糖分に弱い。糖分とくっつきやすく、吸収が遅れるのだ。クラッカーは意外に糖分が多くアセトアミノフェンの効き目を遅らせる。糖分だけでなく、ごはんや麺類、パンなどでんぷん食品も要注意だ。
あんこ
上と同じ理由で甘いあんこも要注意。あんこは砂糖とでんぷんが多いから。アセトアミノフェンの吸収が遅れてしまう。おまんじゅうや団子など和菓子も砂糖とでんぷんでできているから、頭痛薬とは一緒に食べないほうがいいね。
キャベツ
キャベツや芽キャベツに含まれるグルクロン酸が要注意。アセトアミノフェンを分解してしまう働きがあるのだ。つまりキャベツや芽キャベツを食べて、頭痛薬を飲むとなぜが効かないということになる。体にいい野菜も時にはとらないほうがいいこともある。

胃腸薬
Eさんは、仕事柄、付き合いで飲むことが多い。食べすぎた時、飲みすぎた時には、店を出る前に薬を飲んでおくことにしている。ある日、焼き鳥屋で飲んだ後、いつもの消化剤を飲んだ。いつもなら、それですっきりして翌日も元気なのだが、なぜかその日は違ったのだ。
「なんだかムカムカして胃がもたれて、さすがに飲み会が続いて胃が疲れていたんですかね」と、島本さん。
実は、焼き鳥のあるものと胃薬が飲み合わせを起こしていた可能性があるのだ。
Fさんは、年末の忘年会で失敗してしまった。忘年会続きで胃が疲れて少し胸やけがする。
今日は、会費制の忘年会でおいしいワインや焼き肉が出る。そこで途中、胃薬を飲んだが、むかむかと吐き気がして、2次会のカラオケボックスでトイレに駆け込み、せっかくの高い料理を吐いてしまった。胃薬が効かなかったのか、それともさすがに食べ過ぎたのか。
「調子にのって飲み過ぎないようにします、っていってもすぐ忘れちゃうのですけどね」とFさん。薬が効かなかったわけがあるかも。
“相乗効果”になりそうだけど・・・
水酸化アルミニウムゲルは、制酸剤。つまり胃酸を抑える薬だ。胃・十二指腸潰瘍や胃炎、胃酸過多、消化不良性慢性下痢などの治療に用いられる。
これは普通の市販薬にもよく使われている。
ところがステーキや焼き肉など、タンパク質と相性が悪い。この薬は、肉のリン酸とアルミニウムが結びついて胃壁を保護する力がなくなってしまうからだ。
胸焼けがする人や胃の調子が悪い人は、焼き肉屋にはあまり行かないだろう。が、誘いを断れないこともある。そういう時に頼りになるはずの薬が効かない! これは困る!
「もともと、胃の粘膜を覆って保護する作用のある薬なので空腹時や食間に飲むとよく効きます。」
お酒を飲む時に牛乳を飲んでおくと胃を荒らさないという人もたまにいる。
「でもその牛乳も、水酸化アルミニウムゲルといっしょになると、高カルシウム血症を起こし、吐き気や食欲不振を起こすことがあります」
胃を守ろうと牛乳をがぶ飲みしたりするのはやめたほうがよい。
またケース1は、消化剤と山椒の飲み合わせのケース。
消化剤パンクレアチンは、山椒の皮に含まれる成分に弱く、効き目が弱くなるのだ。
私たちは市販薬を気軽に買って、気軽に飲む。
そしてあまり効かなくてもそういうものかと案外気にしない。高いお金を出して買った薬が飲み合わせの不注意で効かなかったら丸損だ。
要注意食品
ステーキ
胃のもたれの原因になる胃酸を中和して、粘膜を保護する水酸化アルミニウムゲルは、よく使われる。でもステーキなどのタンパク質といっしょになると肉のタンパク質のリン酸と結びついてしまって、胃酸を中和する力が低下する。
牛乳
大量の牛乳と、胃腸薬に含まれる水酸化アルミニウムゲルや水酸化マグネシウムが一緒になると、高カルシウム血症になることがある。吐き気を起こすことがあるので気をつけたい。牛乳は体にいい食品だが相手によってはよくないことも。

便秘薬
Gさんは、便秘がち。きちんと運動もし、食物繊維をとっていてもダメな時はダメなのだ。そういう時は薬のお世話になることもある。4日目のますみさんは冷たい牛乳をグラス1杯飲んでみた。これで効くことがあるのだ。ところが音沙汰なし。5日目、薬と冷たい牛乳を同時に試してみることにした。冷たい牛乳で便秘の薬を飲んでみたのだ。ところがまったく効果なし。長い戦いとなることを覚悟したますみさんだった。しかし、じつはこれも便秘薬と牛乳の飲み合わせが原因だったのだ?
あなどれない! 牛乳の「ある力」
ビサコジルは、大腸に刺激を与え、腸を動かしてくれる薬だ。したがって大腸で効くようになっている。
「薬のコーティングやカプセルを工夫して、胃や小腸ではとけずにそのまま通過して大腸まで進み、大腸ではじめて溶けるように作られているのです」
ところが牛乳でこのビサゴジルを飲むと、なんと牛乳のために胃酸が中和され、胃で薬が溶けてしまうことがある。
これでは大腸に届くはずの薬が届かないことになってしまう。さらに胃で溶けると刺激が強い可能性もある。また薬が大腸に届くのも6〜8時間かかるので、効いてほしい時間から逆算して飲むといい。 便秘の薬を寝る前に飲むのはこのためなのだ。
風邪薬などでも吸収を遅らせて効き目を持続させる為に、腸で溶けるようにコーティングすることがある。こういう薬も牛乳で飲むと早く溶けてしまって、効き目が長持ちしなくなる。
薬は水で飲むのがいちばん安心ということだ。
要注意食品
牛乳
牛乳と一緒に飲むと胃酸が中和され、本来は腸でとけるはずのビサコジルが胃で溶けてしまい、便秘に効かないということがある。牛乳でのんで便秘解消を、さらに便秘薬で相乗効果を狙っても思うような効果は得られないノダ。

他にもある注意すべき薬
ワーファリン
血液が血管の中でかたまり、血がながれなくなる病気を予防する薬だ。血栓症といって、心筋梗塞や、脳梗塞などの予防に使われる。
「この薬は血液を固める物質を作るのに必要なビタミンKの働きを抑えるのですが、ビタミンKをとると中和してしまって薬が効かなくなるんです。ですからビタミンKの極端に多い食品はとってはいけません」
左の納豆のほか、カブラ菜、キャベツ、ホウレンソウ、レタスなどを連日大量に食べるとよくない。緑色の野菜は要注意である。意外なのが海藻。海藻サラダなどは意外にビタミンKの摂取量が多い。
「健康食品の青汁やクロレラもビタミンKが豊富。健康食品にも気をつけて」

要注意食品
タマネギ
タマネギは、ワーファリンの効き目を強く出しすぎることがあります。ワーファリンは血液が固まりやすすぎるのを防ぐ薬なので、タマネギといっしょにとると出血しやすくなることがあります。脳梗塞、心筋梗塞の方はタマネギのとりすぎに注意。
納豆
納豆についている納豆菌が重要です。納豆菌は体内に入って、ビタミンKを大量に作り出し、これがワーファリンの効き目を打ち消してしまう。少量でもよくないので、この薬を飲んでいる間は納豆は厳禁。納豆菌のついていない煮豆や豆腐、味噌などにはまったく問題ない。

他にもある注意すべき薬
イソニアジド
イソニアジドは最初のページで紹介したチラミンとの飲み合わせで見つかった薬だ。結核菌の活動を抑える薬で肺結核などの病気に使われる。
「チーズやワインなどに含まれるチラミンが分解され無害になるのを邪魔するんです。ほかに魚などに含まれるヒスチジンというアレルギーの元になる物質を分解させない、つまりヒスタミン中毒といった顔面紅潮、頭痛、発疹、といったアレルギー症状と同じ症状を起こしやすくしてしまいます」イソニアジドは飲み合わせが多い薬で、左の食品の他にもソラマメで頭痛を起こすことがある。
またアルコールを分解することも邪魔するので、少量のアルコールでも悪酔いすることがある。たとえば、ドリンク剤に1%ほど含まれるアルコールでも危険なことがあるのだ。
「健康ドリンクだからと、安易に飲むのはやめてほしいですね」

要注意食品
チーズ
イソニアジドがチラミンの分解を邪魔するために毒性が出てしまう。血圧の上昇、発汗、頭痛などの症状がでることがある。チラミンはチーズなどのほか、ビール、ワイン、ニシン漬け、カタツムリ、鶏肝臓、柑橘類、ソラマメ、チョコレートなどに含まれる。
バナナ
ソラマメに含まれる成分と同じ効果がある成分が、バナナやパイナップルにも含まれている。そのため、交感神経を刺激、頭痛や高血圧を起こすことがある。イソニアジドを服用している時は、食べ物には相当気をつけないといけないようだ。

伊藤由紀先生  名古屋赤十字病院
薬と食べ物の飲み合わせは、多くの場合、十分な効果が得られなかったり、効きすぎたりするのですが、場合によっては激しい症状が出ることがあります。
またスタミナドリンクなどにはアルコールが含まれていることがあります。体にいいはずのサプリメントにも薬との相性が悪いものが含まれていることがあるのです。
逆に、かつては、貧血を治す鉄剤にはお茶はよくないといわれてきましたが、詳しく調べてみると鉄分の吸収はあっても、貧血改善の効果は十分得られることがわかりました。いかにも体によさそうな牛乳やジュース類なども薬によっては相性が悪いことがあります。薬は水か白湯で飲むのが安心ですね。お薬に関することは気軽に薬剤師に相談してください。
(女性自身)