酒たばこ、同時は避けて がんを避ける
 

Dr.中川のがんの時代を暮らす:/42 酒たばこ、同時は避けて

 歌舞伎役者の中村勘三郎さん(十八代目、57歳)が18日、食道がんを公表しました。今月初め、誕生日後に行った定期健診で早期に発見されたものだとのことです。

 勘三郎さんは、僕の母校、暁星学園(東京都千代田区)の小・中・高校の先輩です。在学当時からカッコよく、いつも女性ファンに囲まれていた記憶があります。ちなみに、暁星の卒業生には、中村吉右衛門さん、松本幸四郎さん、市川染五郎さんなど、歌舞伎役者がたくさんおられます。東京大文学部に進学し、「九代目市川中車」を襲名して歌舞伎界にも進出された俳優の香川照之さんも暁星出身です。

 勘三郎さんのような早期がんでは症状は出ませんから、今まで通りの元気は変わらず、「7カ月のロングラン公演を無事に終え、57歳の誕生日会でドンチャン騒ぎをした後のことで私自身も大変に驚いちゃいました」とちゃめっ気たっぷりのコメントを出しました。

 これまでの連載で何度か書きましたが、食道がんはお酒を飲む男性に多いのが特徴です。特に、顔を赤くしながら深酒をする人が危険で、こういう人がお酒と同時にたばこも吸うと、食道がんの危険は30倍になるというデータもあります。たしかに、勘三郎さんもお酒が大好きで、息子の勘九郎さんの披露宴で喜びのあまり泥酔してしまい、その後の会見をキャンセルしたなど、お酒にまつわるエピソードも多いようです。

 これまでに小澤征爾さんや桑田佳祐さん、やしきたかじんさん、そして、なかにし礼さんも食道がんを告白しています。芸能人に食道がんが多いのは、飲酒や喫煙が原因だと思われます。

 食道は、胃や腸と違って臓器を包む「漿膜(しょうまく)」がないため、がんが周囲に広がりやすい傾向があります。リンパや肺などに転移しやすい点も特徴で、治癒率も胃や大腸のがんと比べると格段に劣ります。勘三郎さんの場合は無症状のうちに健診で発見された早期がんのようですから、まず完治すると思います。それでも、お酒はほどほどにしてくださいね、先輩!(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

2012年6月25日 提供:毎日新聞社