妊娠後では遅過ぎる 見た目よりも「卵巣年齢」 
準備でリスク減少を 「ウーマン・アイ」


 「いつか産みたい」女性たちに、体づくりや検診といった「妊娠準備」の大切さを知ってほしいと、講習会や本を通じ専門家らが呼び掛けている。妊娠後の母親教室はあっても妊娠前に知識を学ぶ機会は少なく、仕事優先で妊娠を先送りするうち不妊になったり、妊娠を機に高血圧などの病気が顔を出したりするなど晩婚化時代ならではの問題が増えているためだ。

  「冷え症や貧血にならないよう食事に注意を。よく歩いて骨盤内の血行も良くしましょう。前向きなイメージを持つのもいい。妊娠後では遅いので普段から気を付けて」

 東京都中央区の聖路加産科クリニック。6月に開講した、妊娠前からの出産準備講座で、女性たちが講師の話に聞き入る。妊娠、陣痛の仕組みや体のケアの方法、ストレス対処法、出産施設の選び方などを学び、分娩(ぶんべん)室も見学する。

 5月の体験プログラムに参加した大橋由布子(おおはし・ゆうこ)さん(34)は「子どもが欲しいけど、妊娠や出産の信頼できる情報を聞く機会がないので」と話した。主催するバースセンス研究所(東京)の大葉ナナコ(おおば・ななこ)代表は「不妊の悩みも増えているが、仕事で頑張り過ぎ、余裕がない人が多い。肩の力を抜いて、赤ちゃんに『この世には面白いことがたくさんあるからおいで』と言えるよう、今を楽しむのが大事」と語る。

 働く女性の増加で晩婚化が進み、出産年齢も上昇傾向。「高齢出産」とされる35歳以上の出産は、2009年は全体の23%。20年余りで2倍以上に増えた。一方、学校で妊娠の仕組みは教わるものの、自然妊娠の年齢的な限界などについて正確に知る機会はほとんどない。多いのは「生理があれば何歳になっても妊娠できる」という誤解だ。

 40歳前後で出産しようとする女性向けに6月に「アラフォー安産」を出版した国立成育医療研究センター(東京)の三井真理(みつい・まり)医師(産婦人科)は「自分は元気だから子どもができて当然と思う人が多いが、大切なのは見た目年齢より卵巣年齢」と話す。生理があっても、卵子は35歳ごろから老化が加速して妊娠しにくくなる上、流産率も高まる。「健康を過信せず定期的に婦人科検診でチェックを」と三井医師。

 共著者で同センターの村島温子(むらしま・あつこ)医師(母性内科)も「高齢だと妊娠をきっかけに糖尿病や高血圧の兆候が出る人もいる。事前に体の状態が分かっていれば、妊娠前から食生活などをコントロールし対処できる」と準備の大切さを強調する。

 妊娠、出産教育に詳しい愛育病院(東京)の安達知子(あだち・ともこ)医師は「今は女性が望んだ時期に妊娠、出産するための教育が不十分」とした上で、「やせや肥満でない適正体重を保つ、先天異常の発生予防に役立つ葉酸が多い野菜を食べるなどは妊娠前から必要。自然出産を望む人が多いが、高齢だと医療が介入した方が安全な場合があることも知ってほしい」と助言する。



2011.07.20 提供:共同通信社