放射能のリスクを少なくする栄養学的対策? 


健康と医療「放射線のリスクから体を守る栄養学的対策」

 今回の原発事故の結果、私たちの生活環境が大きく変化してしまいました。 これをターニングポイントとして、欧米化した食生活や自然から離れた人工 的で不自然な食生活を止めて、日本に昔からある伝統的な食文化(マゴワヤ サシイ食・マ=豆類、ゴ=ゴマ類、ワ=ワカメなどの海藻類、ヤ=野菜類、 サ=魚類、シ=シイタケなどのキノコ類、イ=イモ類、などを多く摂る食事 +主食は玄米)を見直すことが重要です。

 そのためには、学校給食のあり方に関しても、従来の献立のままでよいかどうかの検証が必要になってくるでしょう。  

 今回の問題を通じて、いかに「専門家」と呼ばれる学者たちが、自分たちの研究(業績)や地位のことばかり考えていて、国民のかけがえのない「命」 について深く考えていないかということがよくわかりました。

 現代の日本社会の不幸は、戦後、こうした名ばかりの「専門家」が、医療、食、エネルギーなど、国民の命に関わる分野で、「間違ったこと」をいかにも正しいと我々国民に植え付け、それに基づいて国の指針を決定してきたこ とにあります。

 栄養学の分野においてもそれは例外ではなく、「牛乳は骨を作る」とか「マーガリンは植物性だから安心」とか、そういった「間違った事実」が日本 の指針となり、日本ではいまだに当たり前のものとして受け入れられていま す。

 確かに、牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。しかし、それに対してマグネシウムの含有量は非常に少なく、牛乳を多飲していると体内のカ ルシウムとマグネシウムのバランスが大きく崩れてしまいます。結果として、 骨はかえって弱くなってしまうのです。

 しかも、牛乳には、子牛の発育に必要な成長ホルモンや、子牛の成長促進 にかかわるホルモン様物質が高濃度に含まれています。牛乳を飲むと、これらは全て、人間の体内でもそのまま同じ成長ホルモンや女性ホルモンとして作用してしまうことが分かっています。その結果として、前立腺ガンや乳ガン、卵巣ガンなど、性ホルモン系のガンの発症リスクが高まることは、海外の複数の研究のほか、厚生労働省による日本国内の調査でも明らかになっています。  牛乳は体内でミネラルやホルモンのバランスを乱し、さまざまな病気やア レルギーの原因につながっていることが多くの研究によって指摘されている にもかかわらず、日本では未だに学校給食で子どもたちに強制的に飲ませて います。

 また、マーガリンやショートーニングに多く含まれるトランス脂肪酸は、 心臓病だけではなく、あらゆる病気のリスクを高める有害な油であることが明らかになってきています。このトランス脂肪酸の食品表示義務化に関しても、政府のガイドライン発表後も、いまだに改善されることなく、少しも進展していません。これらのことはほんの一例に過ぎず、現代日本の栄養学が抱える問題点は山ほどあります。

 医学や健康を論じる立場の人間にとって、「細胞レベルから見た正しい栄養学」の知識を身に付けることは、もっとも基本的かつもっとも重要なこと です。こういったことを正しく知らないままに、無責任な指導のもとで間違 った食事を続けていると、健康で生きていくことはできなくなります。従っ て、食生活の改善による栄養学的な被曝対策の実践が、被災地の人々だけで なく、すべての国民にとって急務であることは間違いありません。

 本当に大切なのは、経済でも権力でもなく日本に生きる国民の健康と安全であり、一人ひとりの健康と安全が保障されてこそ、日本という国が成立す ると私は考えています。

 私たちは、「専門家」と称する人たちの肩書きやうわべの発言だけで判断するのではなく、幅広い情報から何が正しくて何が間違っているのかを冷静 に判断し、正しい知識を身につけて、それを日々の生活に取り入れていくことが、来るべき未来を生き抜いていくために重要になってくるでしょう。

               杏林予防医学研究所 所長 山田豊文 氏

 

2011.8.04 提供: Lifestyle通信