Lesson10


国際歯科ニュース


愛飲家にとっては耳が痛い話だが、アルコールはタバコよりも口腔癌を引き起こす可能性が著しく高い。これは最近の研究によって明らかにされたことである。ビールやワインは同量のウイスキーを飲むよりもリスクが高いことも報告されている。スーフィ教授がその詳細を調査した。

口腔癌は非常に予後の悪い悪性病変である。インドやパキスタンでは40〜50代の人が罹患していることが多い。また、性差は男性に多く、口唇に好発する。口腔癌に罹患した患者の男女比は14:1である。
この病変は北西部周辺の開拓地およびカラチなどの都市部でよく見られる。また、これらの地域では喫煙の習慣が高頻度であることも観察されている。癌患者は総合病院で化学療法、外科手術並びに放射線療法などの治療を受けている。
口腔癌は以下のことが原因であると考えられていた。

・上顎最後臼歯などに見られる、粗造面を有する歯から生じる外傷
・かぎタバコを吸う
・喫煙

ごく最近、愛煙家で飲酒をする人の調査が行われ、その結果深酒をすることはタバコを吸い過ぎることよりも口腔癌になるリスクが大幅に高いこと、またビールかワインを飲むことは同量のウイスキーを飲むよりもリスクが高いことが示唆された。

著書ら(アーサー・マッシュバーグ=退役軍人局医学センター、ニュージャージー州、とローレンス・ガーフィンケル=米癌学会)は1日に6〜9ウイスキー相当のアルコールを飲む人のリスクは、ヘビースモーカーのリスクに比べて3倍も高いことを見出した。なお、1ウイスキー相当とは1オンスのウイスキーもしくは4オンスのワインあるいは12オンスのビールを示している。

調査員は口腔癌を有する181人の患者と口腔癌を有しない497人を対象として調査を行った。

<喫煙と飲酒>


調査員は1日に10から19本のタバコを吸う患者は喫煙をしない人に比べて3.2倍も口腔癌になるリスクが高いことを明らかにした。また、1日に20〜39本のタバコを吸う場合は4.5倍、40本以上のタバコを吸う場合は5倍もリスクが高い。

1日に6ウイスキー相当以上のアルコールを飲んだ場合、飲酒をしない場合に比べて3.3倍もリスクが高い。1日6〜9ウイスキー相当のアルコールを飲んだ場合は15.2倍もリスクがあり、10ウイスキー相当以上の場合は10.6倍もリスクが増す。

最も大酒を飲む人のリスクの倍率が明らかに低くなっている理由としては、6〜9ウイスキー相当を飲むグループのほとんどの人がワインやビールの愛飲家であるのに対し、10ウイスキー相当以上を飲むグループではほとんどの人がウイスキーを好んで飲んでいたことが大きな原因であろうと考えられる。

飲酒も喫煙もしない人が口腔癌に罹患する可能性は非常に少ない、ということに調査員は注目している。

いくつかの報告が飲酒と口腔癌との相関関係を明らかにしてきたが、喫煙という因子を切離して考えられたことはない。(Asian Dentist, 3巻3号, 1996.)
日本歯科医師会雑誌 Vol.49 No.6 1996-9