新百合ヶ丘駅前・ホワイトファミリー歯科

接着剤・セメント

1.はじめに

一般概論

歯科用セメントは、種類が多く、その用途も多岐にわたっていますが、各材料ごとの特徴を充分に理解した上で臨床に用いることが重要になります。

◎歯科用セメントは、合着・接着の効果によって、以下の3種類に分類されます。

1. 嵌合力によるもの
2. 嵌合力を主体とし、極めて小さい効果であるが歯質のCaとキレート結合することによるもの
3. 象牙質に対しては、接着性モノマーを浸透させることによって、また、金属に対しては接着性モノマーが金属の酸化膜を介して、それぞれ二次的結合することによるもの

◎一般的な歯科クリニックで現在使用されている接着セメントの種類には、
   下記のようなものがあります。

1. リン酸亜鉛セメント
2.

グラスアイオノマーセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント、カルボキシレートセメント、酸化亜鉛ユージノールセメント

3. 接着性レジンセメント

 インレー、クラウンやブリッジなどの歯冠修復物の合着・接着に関して、様々な選択肢があります。例えば金属補綴物や陶材屋焼付鋳造冠においては、グラスアイオノマーセメント(レジン添加型グラスアイオノマーセメント含む)が、その機械的性質、生体親和性、操作性、フッ素徐放により歯質強化が期待できるなどの点から第一選択として挙げられると考えられます。また、レジン系補綴物やポーセレンジャケットクラウンのようなオールセラミック補綴物では、審美性の点や接着の良否と理工学的強度が破折と関係しているとされるため、接着性レジンセメントを使用することが望ましいとされています(ただし、近年市場に登場したジルコニアなどを使用した高強度のセラミックスには、その材料そのものの機械的強度が高いため、グラスアイオノマーセメントも使用できます)。

スタッフレポート2014へ:接着セメントの種類

 
 

WFでは、3接着性レジンセメントのみを
使用しております。

30年以前から、
接着タイプのセメントの接着方法を工夫してきました。

現在でも、最高の接着システムのセメントのみを使って、最高の条件でセットしております。


精密な適合のためのステップ
どのような接着システムを用いるかを決める。もし材料の強度が350MPaよりも低い場合やクラウンの長さが短く維持力が低下している場合は、施術部位の防湿が可能であれば接着システムを用いる。もしセラミックの強度が350MPaよりも高い場合は、従来型の合着(できればグラスアイオノマーセメント)が選択される。
(Fig.:Kunzelmann)


ミクロンの話。ボンディング処理の方法。

接着阻害因子との接触によるリスク低減
塗布後の「待ち時間なし」により、処置時間がさらに短縮されますので、特に唾液の多い下顎部や、長時間開口が困難な小児・高齢者の症例等で、スムーズな治療が行えます。
図1
ボンド硬化物の吸水率

試験条件
照射器:ペンキュアー2000標準モード37℃
水中24時間保管
クラレノリタケデンタル(株)測定
図2
人歯象牙質に対する微小引張接着強さ

データ測定
東京医科歯科大学う蝕制御学分野

測定条件
#600研磨面、被着面積1.0×1.0mm2、
37℃水中保管、24hr後
SKB-100:「クリアフィル®ユニバーサル ボンドQuick」
SE ONE:「クリアフィル®ボンド SE ONE」
MB:「クリアフィル®メガボンド®」
日本歯科保存学会 2016春季学術大会(第144回)発表より


2.歯科接着用セメント製品

セメントの使い分け

リライエックス™ ユニセム2 オートミックス
(歯科接着用レジンセメント)

2012年4月24日

RelyXTMUnicem 2 Automix Self-Adhesive Resin Cement
術後疼痛の発生率が低いレジンセメント!
リライエックスTMユニセム2 オートミックス

【1】術後疼痛の発生率が低い!

■pH値の変化

リライエックスTMユニセム2 オートミックス
しみる 1〜2日 CTP+
ph measurement.3M ESPE internal data


【2】シンプルな術式で審美治療にも!

■物性一覧   ■硬化時間  
曲げ強度(MPa):99
圧縮強度(MPa):291
弾性係数(GPa):6.6
被膜厚み(μm):13
溶解度(μg/mm3):0
  光重合での硬化
・余剰セメン卜除去のための光重合:2秒間
・最終光重合20秒間
(高出力光照射器をご使用の場合照射時間は半分)
化学重合での硬化
・余剰セメン卜除去開始:練和開始3分後
・硬化時間:練和開始6分後

【3】前処理が不要、多用途で強い接着力!

■接着強度
リライエックスTMユニセム2 オートミックス
shear bond strength test(24h,on bovine dentin,Ic).
IADR 2010#138025,Guggenberger et al.


  リライエックスTMユニセム2 オートミックス
shear bond strength test of selfcured specimen after
5000 thermocycles.3M ESPE internal data.
  リライエックスTMユニセム2 オートミックス
shear bond strength(Light cured)after 24h and thermocycling (6-60℃/15s dwell time/1000cycles).
S Singhal,J Burgess,D Cakir et al.Birmingham,AL,USA IADR 2010#139456

リライエックスTMユニセム2 オートミックス

※インレー・アンレーのポーセレン、CAD/CAMセラミックス、
クラウン&ブリッジのポーセレンジャケット、CAD/CAMセラミックスには
リライエックス™セラミックプライマーなどの
シランカップリング処理が必要です。


■根管象牙質への接着強度

リライエックスTMユニセム2 オートミックス

出典:大竹志保先生、植田洋二先生、犬塚麻美先生、三浦宏之教授、東京医科歯科大学大学院、医歯学総合研究科、口腔機能再構築学系専攻、摂食機能保存学講座、摂食機能保存学分野
試験方法:アイソメットにてCEJより歯冠切断後に抜髄。
#2根管形成バーにてCEJより10mm根管形成しセメント築盛。37度湿度100%に1時間保管後、37度精製水中にて24時間浸漬。アイソメットにて1歯につき歯冠側より8試料切り出し。接着面積が1mm2となるようダンベル型にトリミング。クロスヘッドスピード1.0mm/min


【4】コアのセットにも使える!

ペーストの流れが良い
エンド用チップを使用する事で、根管内に注入しやすくなります。

リライエックスTMユニセム2 オートミックス
R.Watzke.M.Naumann:Homogeneity,Brisbane,Australia.


親水性から疎水性に変化する

リライエックスTMユニセム2 オートミックス

(c)3M 2011.All right reserved DEN-790-B(1111xx)IT
 

■ユニセム クリッカーとユニセム2 オートミックスの違い
 


歯科接着用レジンセメント
歯科接着用レジンセメント
 
リライエックスTM
ユニセム2 オートミックス
リライエックスTM
ユニセム セメント
せん断接着力(象牙質)
18Mpa(3M社内データ)
14MPa*1
せん断接着力(エナメル質) 22Mpa(3M社内データ) 18MPa*1
曲げ強さ(3点曲げ) 108Mpa (岡山大) 86.6MPa*1
圧縮強さ
291MPa
236MPa*2
皮膜厚さ
13μm
18μm*2
前処理
不要
不要
余剰セメントの除去
簡単
簡単
シェード
A2ユニバーサル、A3オペーク、
トランスルーセント
〈クリッカー〉ディスペンサータイプ3色(A2,A3,トランスルーセント)
〈アプリカップ〉タイプ5色(A1、A2、A3、ホワイトオーペク、トランスルーセット)
重合方式
光・化学
光・化学
フッ素徐放性
 ○
ユニセムと
ユニセム2の違い

ユニセム2 オートミックスは、
1.オートミックスなので、練る必要がない、空気の混入がなく、
 
緊密に練れる
2.流動性、浸水性がよくなった
3.根管象牙質への接着強化 11Mpaが14Mpaに

*1:〈クリッカー〉タイプの場合  *2:〈アプリカップ〉タイプ3Mラボデータより



 

3.使わなくなったセメント


ビトレマー™ペースト
前処理不要の簡単な操作で使用できます。日常の合着にご使用ください。
フッ素徐方性も有していますので、二次カリエスの予防も期待できます。
従来型の窩洞または支台歯に最適です。
 

余剰セメントの除去が簡単な合着用セメントです。幅広い症例に安心してお使うことができます。
使いやすさだけでなく保持力の高さで選んでもビトレマー ルーティングセメントなら安心です。

詳しくはこちら

 
2008年、今まで、修復物の接着のステップがシンプルにオールインワンになった製品が3Mや、クラレなど各社から出揃ってきました。
今までのボンディングやエッチングなどの接着面前処理がいらない、セルフエッチング、セルフボンディングで、親水性であり、象牙質、や、エナメル質、メタルも、セラミックも、選らばずに、ジルコニアからアルミナまで、かなりの接着強度が得られ、ワンステップ接着が可能で、皮膜厚さも16ミクロンと薄い。
中でも3M社のミキシングマシーンで、カプセル入りのものを練和するものは、エアーも入らず、接着面へのアプリケーションにも優れ、密封容器は2年以上保存可能で、湿気による性能劣化もなく非常に有用性の高いセメントシステムです。
 
リライエックス™ユニセムセメント
前処理不要の簡単な操作で使用でき、高い接着力を始め優れた物性を有しています。
吸水性が低く高い審美性を持ち、特にポーセレン、ハイブリットセラミックスの病例には最適です。
フッ素徐方性も有していますので、二次カリエスの予防も期待できます。
高い接着力を有しているので、窩洞または支台歯の保持形態が十分できない場合でもお勤めできます。
 

リライエックスTMユニセム アプリカップTM セメント

練和方式
自動練和器による練和
性状
粉/液
重合方式
光・化学
5色
(A1、A2ユニバーサル、A3オペーク、トランスルーセント、ホワイトオーペク)
使用回数
クラウン1病例分
使用量の目安
インレー〜クラウン1病例分/1カプセル
保管方法
15〜25℃
練和時間
自動練和器(別売)で15秒
操作余裕時間
2分
余剰セメント除去の時間
光照射で約2秒、化学重合の場合
練和開始後2〜3分
硬化時間
練和開始より5分
必要な備品
〈カップミックス〉自動練和器もしくは、アマガムミキサー*
*機種によっては使用できない場合があります。
リライエックスTMユニセム アプリカップTMタイプはカップミックスTM自動練和器で練和します。

リライエックスTMユニセム クリッカーTM

練和方式
手練り
性状
ペースト/ペースト
重合方式
光・化学
3色
(A2ユニバーサル、A3オペーク、トランスルーセント)
使用回数
80クリック(クラウン約40症例)
使用量の目安
インレー1クリック、クラウン2クリック
保管方法
15〜25℃
練和時間
20秒
操作余裕時間
2分
余剰セメント除去の時間
光照射で約2秒、化学重合の場合
練和開始後2〜3分
硬化時間
練和開始より5分
必要な備品
練板紙、スパチュラ
 
 
成分
ベースペースト
ガラス粉末、リン酸エステル系モノマー、TEGDMA、シリカ、重合開始剤、その他
キャタリストペースト
ガラス粉末、メタクリレート、シリカ、重合開始剤、その他

原理
本材はクリッカーTMディスペンサー入りのデュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメントである。光重合開始剤と化学重合開始剤によって、硬化する。


【使用目的、効能又は効果】
歯科修復物・歯科修復材・歯科装置・口腔内硬組織のいずれかの相互間の接着に用いること。

【品目仕様等】
1.被膜厚さ: 50μm以下
2.操作時間: 60秒以上
3.硬化時間: 10分以下
4.曲げ強さ: 50MPa以上
5.吸水: 40μg/・3以下
6.溶解: 7.5μg/・3以下
7.X線造影性: 同じ厚さのアルミニウムのX線造影性以上でなければならない。表示した値よりも0.5・より大きな差で小さくてはならない
 

3M リライエックス レジンセメント
(接着性レジンセメント)

リライエックスレジンセメントは補綴物の接着用にデュアルキュア型を採用しており,前処理材として接着システムのシングルボンドと組み合わせてお使いいただきます。
これらにより、確実に硬化し、歯質に対する高い接着力を有しています。
術式もシンプルでシランカックリング材であるリライエックスセラミックプライマーの使用により、
メタル、ポーセレン、ハイブリッドセラミックス等の幅広い補綴物を簡便かつ確実に接着できます。

詳しくはこちら

 

トクヤマ イオノタイトF
(グラスアイオノマー系 レジンセメント)

補綴・修復物を装着する際に使用するグラスアイオノマー系レジンセメント。歯質に効果のある接着性モノマー(リン酸モノマー)と、貴金属に効果のある接着性モノマー(MTU-6)を含有しています。水の影響をほとんど受けず硬化します。被膜厚さ:5μm(ISO4049に準じる)
球状粒子の採用で、粉液の馴染みも良好で練和も簡単です。

 


4.接着に関するレポート

@下記のレポートでのメタル修復はWFでは
2009年より禁止していおります。

http://www.white-family.or.jp/htm/white-family/wf-sika/wf03-3mix.html#10

Aインレー形状の修復物も超接着を持ってしても、数年で、マージン部でのセメント崩壊を認めるので、咬合面に堺を置く詰め物はすべて奥歯では禁止しております。
http://www.white-family.or.jp/htm/white-family/wf-sika/wf03-3mix.html#keiseirule

B形成によって露出した象牙質の処理も、現在では、NC消毒洗浄後、フッ化銀塗布と、ルクサボンドによる表面処理に2011年より、変更しております。
http://www.white-family.or.jp/htm/white-family/zairyou/009.htm#1

「齲蝕治療と修復処置」
―治癒をもたらす象牙質コーティング―


第一生命保険日比谷診療所 歯科医長 安田登 歯科衛生士 深川優子

象牙質齲蝕は疾病
保存修復はリハビリテーション


象牙質齲蝕は疾病である。そして外胚葉由来のエナメル質が破られて象牙質が露出したということは、皮膚や粘膜などの上皮が破られて中胚葉由来の結合組織にまで達する創傷になったことと同じである。象牙質齲蝕=創傷と捉えられる由縁である1)。
しかし齲蝕が治癒して、その後に残された痕跡(齲窩)は疾病とは考えにくい。この痕跡は事故や傷害によって四肢を切断され、その傷が治った後と同じとは考えられないであろうか。
そうするとこれは一種の障害であり、そこに施す処置は機能回復や審美性回復を主とするリハビリテーションの意味を持つ。いうならば保存修復はリハビリテーション医療の一つなのである2)。


なにをもって齲蝕の治癒とするか

さて、疾病としての齲蝕はなにをもって治癒としたらよいであろうか。
身体の他の部位では瘢痕組織の形成を経て、傷口が再び上皮によって覆われたときを創傷の治癒としている。しかし周知のように歯は再生力に乏しく、歯における上皮、すなわちエナメル質が回復することはない。
そうするとどこかで、誰かが人工的にエナメル質(上皮)を象牙質の上に生成してやる必要があるのではないだろうか。
従来までの修復物はなぜ人工エナメル質としての意味をなさなかったのであろうか。天然のエナメル質に比べて機械的性質が劣っているのであろうか?あるいは審美性に欠けるのであろうか?
しかし、近年の材料学の進歩でこの2点、十分にクリアしていると考えられる。恐らくもっとも足りないのが象牙質との一体化、すなわち生体の保護膜としての機能ではないだろうか。

人工エナメル質(上皮)としての樹脂含浸層

生体の保護膜としての人工上皮の考えにもっとも近い概念が樹脂含浸層である。1982年に東京医科歯科大学の中林宣男教授によって発表され、象牙質との接着機構解明に大きく貢献するものとして世界中で評価されている。
脱灰された表層象牙質にレジンが浸透、硬化して象牙質の構成成分であるハイドロキシアパタイトやコラーゲンに絡まった層を言う。樹脂含浸層は耐酸性で、有機成分の耐分解性、そして物質の不透過性が確認されている。
そうするともし表層象牙質がこの樹脂含浸象牙質に改質されると、脱灰もしなければ、有機質の分解も起こさない、いわば齲蝕にならない層に変化したことを意味する。
著者は中林と共に樹脂含浸層の生成を伴う接着をとくに超接着と呼び、樹脂含浸層とその上のレジン層を人工エナメル質(上皮)と位置づけている。
もちろんエナメル質の機械的性質や審美性が回復されたわけではなく、象牙質や歯髄をはじめとする下部組織を保護するという生物学的意味における人工エナメル質の誕生である3)。


超接着による齲蝕治療と修復処置の実際4)

それでは超接着の概念を活かした齲蝕治療の実際を以下に示す。
その基本概念は前述のとおり齲蝕治療とその後に施す修復処置とは全く別なものと理解することである。

1)1st step:感染歯質の除去と無菌化(図1〜5)

齲蝕治療の第一段階は身体の他の部位における殺菌消毒であり、細菌に感染して壊死した組織を取り除き、無菌化を図ることである。
硬組織である歯質の場合には機械的な除去がもっとも容易で効果的であるが、その前にどの部分が感染歯質かどうかを見極める必要がある。
この見極めにもっとも威力を発揮するのが齲蝕探知液である。探知液によって染色された部分だけを選択的に削除する。この際は麻酔をせずスプーンエキスカなどを使用するとよい。麻酔も、回転切削器具も使用しないのはあくまで健全象牙質の無用な削除を避けるためである。
患者が疼痛を訴え始める時点で細菌層はあらたか除去されたと思われるので切削は終了するが、場合によっては残存細菌層をさらに無菌化するために抗菌剤を使用することもある。

接着

2)2nd step:創面の封鎖(図6〜12)

感染層の削除と抗菌剤の応用によって無菌化をはかることができたなら、接着性レジンの応用で確実な封鎖を行う。これには超接着の概念による象牙質コーティングを行い、人工エナメル質(上皮)を生成して治癒に導く。そしてこの段階までを齲蝕治療と理解する。
具体的には象牙質のボンディング剤としてスーパーボンドC&B、あるいはスーパーボンドDライナーデュアル、その上に硬い被膜を得るためにSBコート(内側性)を使用する。

接着


3)3rd step:修復処置

修復のための削除(保持形態、抵抗形態など)は基本的には行わないが、行う場合にはエナメル質内に限局する。ただし、SBコートがエナメル質も被覆していることが考えられるので、大き目のラウンドタイプのダイヤモンドポイントで窩洞辺縁のエナメル質を露出する(図13)。
その後印象、修復物製作に当たっては通法どおりとするが、次の接着に影響を及ぼさない材料(水硬性セメント、ストッピングなど)で仮封する(図14)
健全歯質の削除を極力抑えた結果、維持形態、保持形態、あるいは抵抗形態など従来考えられていた概念が窩洞に付与されていないので、修復物の装着に当たっては、修復物の材料による適切な接着操作を行うことが重要である。

接着


金銀パラジウム合金インレーの接着

以下に修復物として金銀パラジウム合金インレーを選択した例を示す。

1)歯面および修復物内面に対する接着前処理

[歯面]最初に窩洞内面の仮封剤や仮着セメントを除去する。機械的に除去するのが最も効果的で、最終的にはブラシコーンと研磨剤で清掃すると確実である(図15)。
重炭酸ナトリウムの微粒子を圧で噴射する歯面清掃器の使用も効果的である。
接着対象歯面は多官能性メタクリレートで構成されるSBコート面と窩洞辺縁の露出エナメル質になる。したがって、歯面処理はエナメル質用のエッチング剤(リン酸水溶液)を用いる(図16)。
[修復物]金属に対する接着にはアルミナのサンドブラスト処理が極めて効果的である。
通常は技工室であらかじめ処理しておくが、チェアーサイドで使用可能な製品もあり、試適後に改めて行うとさらに効果的である(図17、18)。


金銀パラジウム合金は貴金属に属するのでサンドブラスト面に貴金属専用のプライマーであるV-プラマーを塗布する(図19、20)。

接着


2)セメントとして用いるスーパーボンドC&Bの練和
修復物装着に際してスーパーボンドC&Bをセメントとして用いる場合、粉は別売りのラジオぺークを使用するとよい(図21)。
修復物下部のセメント層や隣接部に取り残した余剰セメントがレントゲン撮影によって判別可能だからである。
スーパーボンド練和の基本はモノマー液4滴にキャタリスト1滴の割合で混和した混合液に、ラジオペークを小カップ1杯の割合で調合し、筆を用いて混和する(混和法) (図22)。
多数歯を同時に取り扱う場合や、夏季気温の高い時期に操作時間を延長させるためにはモノマー液、ダッペンディッシュを冷蔵庫で冷却し低温にしておくこと、粉液比を少なくすることなどが考えられている。

3) 窩洞へのインレー装着
修復物内面に塗布してから、窩洞にも塗布する(図23、24)。
インレー体を定位置に置いたらピンセットの先で振動を加えながら圧接する(図25)。
ほぼ定位置に収まることを確認したら、咬合面上の余剰セメントを固く絞ったアルコール綿球で拭う(図26)。
その後、割り箸などを用いて咬合させ、さらに圧接し完全に定位置に収まることを確認する。
余剰セメントの除去は糸引き状態からゴム質に変わる頃がもっとも取り易いので、その時期を見計らって隣接部、歯頸部の余剰セメン卜を除去器、デンタルフロスなどを用いて除去する(図27〜図29)。


支台歯形成によって露出した象牙質の保護(図30-図37)

欠損歯列の補綴、審美的要求等によってやむを得ず健全象牙質を削除しなくてはならない場合、露出した象牙質は細管が開口し外界からの刺激が直接歯髄に伝達されやすい。そこで、形成後(象牙質露出後)、直ちに超接着操作をもって人工エナメル質(上皮)を生成する。
全部被覆冠の生活支台歯の保護を例に取るが、接着操作は齲蝕治療後の人工エナメル質(上皮)生成と同様である。ただし、ここで用いるSBコートは外側性の粘度の薄い方である。塗布、重合硬化後、仕上げ用のダイヤモンドポイントを用いて辺縁部歯質の露出、SB コート面の仕上げを行う。

接着

接着

おわりに

何度も繰り返すが、齲蝕治療と修復処置とは全く次元の迷うものである。
疾病である齲蝕の治癒を見ずして、修復治療に移ることは厳に鎮まなくてはならない。そして、齲蝕治療の治癒は超接着による象牙質コーティングによって達成される。
この後の機能回復と審美性回復を目的として行われる修復処置は、生体に対して最小限の侵襲で行われるように配慮しなければならない。


参考文献
1) 井上孝,下野正基:治癒の病理・臨床編(下野正基,飯島国好編), 53-74,医歯薬出版,東京, 1993
2) 安田登,豊島義博:攻めるか守るか―医療モデルか生活(QOL)モデルか―,日本歯科評論,670:9-11,1998.
3) 中林宣男,安田登:超接着―人工工ナメル質をめざして―,QE, 14(1):42-46,1995.
4) 安田登,鯉渕秀明:接着の予防的視点に基づく臨床応用のすすめ―生物学的封鎖のための象牙質コーティングー, QE year book 1996,27-38,1996.


ホワイトファミリー歯科    神奈川県川崎市麻生区上麻生1-17-1 WTC新百合丘ビル3F