ジルコニアなどの疎水性物質界面に、レジンセメントを使用して接着操作をする場合に、特別に何が必要となるかは、術者が必要としていること、すなわち、何と何を接着させるのか、直接的素材は象牙質なのかエナメル質なのか、間接的素材はジルコニア、アルミナ、セラミックス、金属のいずれなのか、ということに依存する。そしてその接着状態を最上のものとするためには、歯質上に塗布される接着剤と、間接的素材へ塗布されるプライマーが重要な役目を果たすのである。
ジルコニアはこの数年、歯科臨床の現場で成功裏に使用されてきた。しかしながら、実際にはジルコニアやアルミナなどのシリカを含まない酸化セラミックス素材を使用して良好な接着を得るためには、その使用が限定されている、ということに留意しなければならない。そしてこのことは、ジルコニアに関するこれまでの理解を変容させるものなのである。
ジルコニアとは、シリカを含まない耐酸性の多結晶のセラミックスであり、不定形のシリカガラスを含まないので、従来のシラン処理前に行われてきたフッ化水素酸処理は効果がない。サンドブラスティングによって疑似シラン化処理面をつくりだすのも、ジルコニアへの接着を進展させるひとつの方法である。ある研究では、サンドブラスティング処理を施して、なおかつプライマーを使用したときに接着が改善されることを示している。
グラスアイオノマーセメントは、ジルコニアに対しては最小の接着強度しか有さず、その科学的性質のために、水分の影響で接着強度が低下する。セルファドヒーシブ・セメントに含まれるリン酸モノマーは、ジルコニアのようなシリカを含有しない多結晶セラミックス材料への接着に効果的であることが証明されている。またジルコニア、アルミナ、メタル専用の特別なプライマーもつくられている。数えきれないほど多くの研究が示していることは、リン酸モノマーやホスホン酸モノマーはジルコニアの接着を改善するには極めて効果的であるということだ。リン酸モノマーが、ジルコニア表面との化学的接着を形成して、端末側終端レジングループを有して、適切なレジンセメントの結晶力のある接着を可能にする(図1)。

図1 水素グループのリン酸モノマーがいかに酸化ジルコニアグループと反応し、
ジルコニア表面上のリン酸単層を形成するかを示した図
リン酸モノマーを配合しているセルファドヒーシブ・セメントは、両重合型であり、完全な保持形態のクラウン形成がなされていれば使用できるが、同時に酸性レジン成分を有するがゆえに親水性となり、通常のレジンセメントよりも物理的・機械的特性ともに低くなる。セルファドヒーシブ・セメントはまた粘性や化学重合効率も製品によって様々である。セルファドヒーシブ・セメントの接着強度は典型的には通常のレジンセメントよりも低くなるが(表1)、維持的形成を施すことによって、装着の容易さが得られる。セルファドヒーシブ・セメントは、維持的形成が行われていないジルコニア修復物をセメンティングする際には、歯牙あるいはジルコニアの表面のどちらの使用に対しても強度が十分であるとはいえない。セルファドヒーシブ・セメントでジルコニアへの接着を改善させるにはプライマー使用が有効なのである。

表1 ジルコニアのサンドブラスト処理面に対して行われた試験の
引張せん断接着強さ(Mpa)の平均偏差値と標準偏差値
わずかに維持形態をつけただけか、全く維持形態のないクラウン形成を行わなくなったものに対しては、伝統的な接着技法が有効であることが実証されているし、また必要なのである。維持的形成によらないで、接着結果を最上とするためには、セルフエッチングタイプあるいはトータルエッチングタイプの象牙質/エナメル質用接着剤とジルコニア専用プライマー両重合型で疎水性レジンセメントを使用することが肝要である。
シリカを含有しない酸化物(ジルコニア、アルミナ、メタル)の特別な性質に対応するように開発されたプライマーの使用が便利であり、維持形態がない修復物には安心して使用できる。研究結果によれば、間接法用材料の接着を成功させるためにはセラミックスプライマーやメタルプライマーを使用することが重要であることが示された(表2)。これらのプライマーを使用した臨床ケースでは、直接法および間接法のいずれの接着においても改善がみられた。

表2 ジルコニアのサンドブラスト処理面に対して行われた試験の
引張せん断接着強さ(Mpa)の平均偏差値と標準偏差値
ジルコニア用プライマーとしては様々の製品がある。それらのセラミックスプライマーのほとんどのものにはリン酸モノマーが含まれていて、ジルコニアには接着するが、レジンセメントの成分と酸性度によっては、接着する強度は異なる。リン酸モノマーは、ジルコニア表面と共有結合による接着を形成し、レジン端末部を有して、レジンセメントに接着する。接着強度は、重合形態の一機能であり、レジン化学の安定性であり、プライマーのセメントに対する親和性を意味する。加えて、素材が汚染する可能性は、各セラミックスプライマーが必要とする固有の使用法のためにかかる時間に関係するとおもわれちなみに製品Jは3分を必要とするし、Zプライムプラスは10秒しか必要としない。セメンテーション前に行うダイアモンドバーやサンドブラスティングなどの切削によるジルコニア内部の変化はジルコニア材料ごとに異なる。ビスコ社内でのリサーチでは、Zプライムプラスのみがジルコニア表面を機械的に変化させる必要のない市販ジルコニア専用プライマーであった。
製品Fや製品Hなどのプライマーは、ジルコニア接着のためのモノマーに加えて、シランプライマー成分をも含有させているが、それはジルコニアとポーセレン双方に有用とさせるためである。しかしビスコ社内のリサーチでは、製品Fや製品Hに含有する成分ともにポーセレン用プライマーとしては有効ではなかった。それは、酸性のリン酸モノマー内でのシランの不安定性によるのである。最良の結果は、ポーセレンプライマーのみによって処理され接着されたときに得られた(図2)。得られた接着強度は、製品ごとに異なり、またレジンセメントの重合方法(光重合、化学重合)と、特に製品の鮮度に依存した。Zプライムプラスとデュオリンクレジンセメントだけが市場流通する製品のなかで唯一冷蔵保存を必要としない。

図2 ガラス系接ラミックスと、各種プライマーとデュオリンクを
組み合わせて化学重合した引張せん断接着強さの加速劣化試験
おそらく、ジルコニア接着における最も重要な要素はレジンセメントの重合型にある。理論的には、5ないし12分強で化学重合する性質を有した疎水性のレジンセメントを使用することが望ましい。光不透過性であるジルコニア・フレームに光が浸透しないという懸念を取除くために、光重合型レジンセメントよりも両重合型のレジンセメントを使用することが望ましい。しかしながら同時に、すべての両重合型レジンセメントが同一の結果をもたらすとはかぎらないことも銘記すべきである。製品選択に際しては、光重合と化学重合のいずれの場合にも等しく性能を発揮するものを選ぶべきである。それが経時変化の影響を受けない方法だからであるし、適切な重合時間を有するからである。
6分以内に完全化学重合するレジンセメントはフロッシングで歯間清掃することが可能だが、重合に10ないし12分を要する製品は接着の進行を阻害しないように適切な処置をとる必要がある。ビスコ社内の研究によれば、ある種のレジンセメントの化学重合状態は芳しくなく、多くの製品の化学物質成分が経時変化を起こすというデータを示した。維持的形態を伴わない形成歯科面にジルコニアクラウンをセメンティングする際の理想的な方法は、
1)エナメル質や象牙質面に接着剤を塗布し、2)ジルコニアクラウン内面をリン酸モノマー配合ジルコニアプライマーで塗布し、3)両重合型セメントで合着することである。疎水性のレジンセメントで、直接的あるいは間接的であれ、素材に対して結合性の強い接着を行うことが最上の封鎖性を得ることになる。適切な維持形態が付与されれば、セルファドヒーシブ・セメントでも許容範囲内のセメンティングが可能となる。
ジルコニアを使用してのレジンセメント、接着剤、プライマーの化学反応を理解することが審美歯科修復における成功のためにきわめて重要なのである。

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