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乳幼児のあごの発育

「手づかみ食べ」でかむ意欲
詰まらせないよう見守って

 

小児歯科医や小児科医、助産師らが乳児と向き合い、口やあごの発育の研究を重ねています。親たちの相談にのると同時に、かむ力やあごを鍛えることの大切さを伝えています。(佐々波幸子)


「歯のかみ合わせが気になるんです」。1歳の娘を抱いた母親がこう話すと、ライオン歯科衛生研究所付属診療所元院長の桑原未代子さん(78)は「奥の歯が生えたらまた変わってきますよ。あごは使って育つんです。水で食べ物を流し込むくせはつけないようにね」と答えた。

茨城県つくば市で6月18日に開かれた「赤ちゃんから学ぶ会」。歯科医や小児科医、助産師ら全国に約50人の会員がおり、この日は山形や大阪、沖縄からの参加者も。「あごがかくかくする」「いびきをかく」「あごが小さいといわれ、歯が生えてくるときのことが心配」などと、母親たちからの相談を受けた。

会の発足は昨年2月。つくば市で小児歯科医院を開く石田房枝さん(68)が、子どもの虫歯は以前より減ったものの、歯並びの悪い子や鼻呼吸ができない子が増えていると感じたのがきっかけだ。相談会のほか、講演会や研究発表もしている。

「歯並びなどの問題は、実はあごの問題」と石田さん。あごの発育が悪いと歯が収まりきらず、歯並びが悪くなるという。

「あごの前方・側方部は1歳までに著しく成長しますが、歯科医が子どもに初めて接するのは1歳半検診のころが多い。歯が生え始める前から育ちをみることが大切なんです」

ハイハイはあごの発育を促すので、急いで歩かせようとしなくていい▽何でも口に入れようとする8ヵ月から1歳2.3ヵ月のころは、好き嫌いのない子に育てるチャンス▽だらだら食べは虫歯のもと−。この日、参加した12人の母親たちは、こうしたアドバイスを受けていた。

生後10ヵ月の夏芽ちゃんを抱いて訪れた濱本ゆみさん(31)は「体つきがしっかりしてきたわね」と桑原さんに声をかけられた。

以前は、食が細く、口に運んでもらうのを待っていた。会で「手づかみ食べ」を勧められ、ゆでたニンジンや大根を持ちやすい大きさに切って与えてみた。自分も同じものを手で食べて見せたところ、積極的に何でも口にするようになったという。
親がスプーンで口まで運んであげるのと違い、食べ物を床に落としてしまうこも多いが、「ひどく汚すのは一時期だけ」と石田さん。自分で食べる楽しみを味わうことが、かむ意欲につながるという。「歯が生えそろっていなくても、舌や唇、ほっぺたを総動員しながら歯茎で食べる練習が大切。一緒に食べながら、詰まらせないよう見てあげることも忘れずに」と話している。

「ごっくん」の練習 じゅけむにあわせ

小児科医の石田房枝さんは「口を結ぶ」「つばをごっくんとのみ込む」といった練習に、わらべうたや詩の音読を採り入れている。口をしっかり閉じることができない子が少なくないといい、「楽しみながら意識づけるのに役立ちます」と話す。
たとえば、ま行やぱ行が多い落語の「寿限無(じゅげむ)」の一節=下=をひらがなにして印刷。ゆっくり、はっきりと読んで、区切りの☆マークのところで、口を結んでつばをのみ込んでもらう。

じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ☆
かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ☆
うんらいまつ ふうらいまつ☆
やぶらこうじの ぶらこうじ☆
ぱいぽぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん☆
しゅーりんがんのぐーりんだい☆
ぐーりんだいのぽんぽこぴーの☆
ぽんぽこなーの☆
ちょうきゅうめいのちょうすけ☆


2009.7.6 記事提供 毎日新聞社