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口内炎にステロイドでなく・・

「口内炎にはステロイド」から脱却を

「そういえば先生、口内炎が治らないんですけど」「最近舌がヒリヒリするんです」。診察のついでに患者からのちょっとした“口の訴え”があったとき、どう対処しているだろうか。医科と歯科の境界があいまいな「口腔内」は、医師から見れば「歯科の領域」とされ、診察でおろそかにしがちだ。だが、医師の視点で口を診れば、対処できることがたくさんある。

 まずはプライマリケアの現場でも比較的なじみがあり、遭遇する頻度も高い口内炎の診かたのポイントをまとめてみよう。


「医学教育の中でも、口腔内に関する内容は他と比べ著しく少ない。口の中も診ようと意識しても、学ぶ機会がないため、患者の訴えに困ってしまうこともしばしばある」―ある内科開業医はこう打ち明ける。
 
本来、口腔粘膜や舌の異常といえば口腔外科医が専門だが、その数は少なく、患者の身近にいないことも多い。患者は何科にかかったらいいのか分からず、放置しているケースも少なくないのだ。

だからこそ、医師が患者からのちょっとした“口の訴え”に対応できれば、QOLを上げることができるだけでなく、重篤な疾患を早期に発見して専門医に紹介できる可能性もある(図1)。

図1 ありがちな患者の訴えから念頭に置きたい主な疾患(取材を基に編集部で作成)

図1

痛みが強いのはアフタ
口腔内の症状の中でも、口内炎はプライマリケアの現場でも比較的なじみがあり、遭遇する頻度も高い。とりあえずステロイド軟膏や含嗽薬を処方するという医師は多いのではないか。

しかし、口内炎といってもウイルス性、真菌性、物理的な刺激など、いろいろな要因があり、ステロイド軟膏が効果があるケースは限られている。「『口内炎』とひとくくりに診断されてしまい、適切な対応がされていない症例は多い」と兵庫医大病院歯科口腔外科講師の岸本裕充氏は指摘する。

では、口内炎をどう見極め、対応すればよいのか。まずは、口の診かたの基本を押さえておきたい。

舌圧子などを用いて口腔前底をぐるりと一周診て、舌背、舌両側、口腔底、そして舌を出してもらって色を診るのが一般的な流れだ。静岡県西部浜松医療センター歯科口腔外科科長の内藤克美氏は「左右差を見ること、自分なりに見る順番を決めることがポイント」と話す。

口内炎があれば、義歯などが当たっていないか、口内炎の周囲粘膜の状態、痛みの有無や範囲、いつごろから口内炎があったのか、などを把握することが大切だ。

最も頻度が高く、一般的な「口内炎」のイメージに当たるのが、アフタ性口内炎。強い疼痛を伴うため、他の病気の診察のついでに患者から痛みを訴えられることもあるだろう。

アフタは、表面が白い偽膜に覆われた浅い潰瘍。境界は不明瞭で周囲粘膜に発赤が見られるのが特徴だ。「通常は2週間程度で治るか小さくなるため、疼痛が強い場合の対症療法のみで十分だ」と岸本氏は話す。「接触痛を和らげるにはステロイド軟膏や貼付剤が有用だが、これらは治癒促進にはつながらない。必要最小限で使用するよう指導している」と岸本氏。

単純ヘルペスなどで見られるウイルス性口内炎も、経過とともに消失する口内炎の一つ。こちらはアフタより小さく、数mm大の白い潰瘍が出現、癒合する。病歴を確認し、発熱、口内炎出現前の水疱が出現していれば診断できる。

2008.6.9 記事提供 日経メディカル