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肥満と歯周病の関係

肥満と歯周病の関係についてお教え下さい

肥満は脂肪の塊です。脂肪細胞がサイトカインの仲間であるアディポカインといった炎症性の物質を出すのですが、それが血液を介して歯周組織に回って来ます。つまり炎症があるのと同じ状態になってしまうのです。そういった作用が口腔内の歯周病などの炎症を更に悪化させます。

歯周病から肥満になるかというと、そちらはまだ分からないのですが、肥満の人は歯周病を悪化させるという矢印はよく分かります。糖尿病の場合には、糖尿病により局所での免疫機能の低下が起こります。歯周病は一種の感染症ですから、免疫が低下した状況では感染症がどんどん進んでしまいます。さらにそこで炎症が起こる。炎症性のサイトカインが出て来る。サイトカインのひとつであるTNF-αが今度はインスリンの抵抗性を上昇させてしまう。さらに、糖尿病が悪化し、歯周病の増悪につながるという悪の循環に陥ってしまいます。そこまではよく言われているのですが、現在はもう少し細かいところまで突き詰めているという状況です。

患者さんの高齢化が進むに連れて、他の疾病をお持ちの方も増えているかと思いますが、現状はいかがでしょうか。

大学病院ということもあって、高齢者の方、有病者の方は多く来院されます。また、ここ何年かの患者さんの層と、10年、20年前のそれとは全然違いますね。

服用しているお薬や、他の疾患を気にする必要が高まっているかと思います。

そうですね。ただ、患者さんは自分からは仰らないことも多いです。いかに聞き出すかが重要です。患者さん自らが意識して頂く為にも、新患でいらした際にアンケートに記入して頂き、今度は問診。医療面接になりますけど、そこでも全身の状態をまず聞く。通院しているかどうか。通院していたら、どんな病気で通院しているのか。また、どんな薬を飲んでいるのか。血圧を計る、脈を取ることも重要です。

歯周病の患者さんに関して、注意する点はありますか

歯周病の場合には全身状態の問診、これは絶対必要です。あと、家族歴。おじいちゃん、おばあちゃん、子供くらいまで、どういう状態なのか絶対に聞くべきです。それから、服用している薬を聞いてすぐわかる様に、手元に薬の一覧や薬に関しての書籍などを置いておく事をお勧めします。

鹿児島大学病院の歯周病科に在籍していた時に、歯周病科で治療を行っている患者さんがどういった疾患を持っているかあるいは罹っていたか調査したことがあります。そうしましたら40歳代で半分の患者さんが何かしらの疾患を、例えば糖尿病なり高血圧症などを、50歳代で3分の2、60歳代で5分の4程度といった罹患率が出ました。それは大学病院だからそういう患者さんが確かに多いのですが、それを調べたのが15、6年前ですから、今はさらに高まっていると思います。

全身疾患との関わりに関しまして、大学としてどのように取り組んでいらっしゃいますか

大学としてもそれに向けての教育カリキュラムを組んでいます。本学では、医学部と歯学部の医歯融合教育という事に取り組んでいます。それは今年の入学者からそういうことをきちんとやっていくのですが、急速に増加している高齢者の方への対応と有病者の方への対応を考えてですね。

今までは医科の先生にお願いして、そういった講義をしていたのですけど、これからはちゃんと医科と歯科と話し合いながら教育カリキュラムを組んでいきます。医科の学生さんも歯科の教育をしている。今までそれはなかったんですよね。医科の学生さんに対しての歯科の教育っていうのは、口腔外科的な教育、すなわち、顎骨骨折だとか口腔癌だとか。そういうものばかり教育していました。歯科に一番多く見られる歯周病やう蝕などは含まれていませんでした。そういうことを含めて教育することですよね。そうすると例えば、歯周病と全身の関わりも医科の先生から見て、歯周病があるから糖尿病の悪化の診断につながる。この患者さんの糖尿病、ちょっと口の中診てみようってなると思うんです。そういう教育を始めたということです。

患者さんの医科的治療を進める時、例えば、心臓や循環器系疾患の外科手術をする前に、口腔ケアをしっかり行ってから手術を行うようになったり、糖尿病患者さんに対する教育として歯科を含めた糖尿病教室を開いたり、入院患者さんに対して口腔ケアを積極的に行ったり、医科と歯科との連携が今まで以上に密接になりました。

教育の上でも、口腔と全身の関係が更に近づいていきますね。ますます、口腔メンテナンスの重要性が高まってくると思いますが、最近、電動歯ブラシを患者さんのメンテナンスの為にお薦めされることがあるとお伺いしましたが。

もともとは、電動歯ブラシって重要視していなかったんです。電動歯ブラシでも手用歯ブラシでもプラークを除去する効果は同じだと思っていたんです。でも、だんだん年齢の高い患者さんのメンテナンスが増えてきますよね。そうするとやはり磨けないんです。細かい動きが出来ないとか。そういう方は電動歯ブラシを使っていくと、歯ブラシが動いてくれますから効果が出てきます。男性で手用歯ブラシを使っても結局、ガーって磨いたりね、そういう方がいらっしゃいます。そういう方に電動歯ブラシを薦める。そうするとよく磨いたりします。まったく口腔内のケアに関心なかった人も電動歯ブラシを薦めたら面白がってしっかり磨いたり。今まで、あまり重要視してなかったんですけど、最近電動歯ブラシ薦めています。

ただ、患者さんが間違えて、電動歯ブラシが動いているのに手の方も動かしたりする事があります。一カ所に固定して動かさない、意外とこの磨き方を知らないんです。ですので、歯科医院での基本的な指導は絶対必要です。それにあった知識を、我々も蓄えないといけません。

(インタビュアー:DW編集部 今泉

2012年6月25日