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歯の幹細胞で脊髄損傷治療 神経再生し、運動機能回復

 人の乳歯や親知らずから取り出した、骨や神経などさまざまな細胞に成長する幹細胞を、脊髄を損傷したラットに移植すると、中枢神経が再生し下肢の運動機能が回復することを、名古屋大の上田実(うえだ・みのる)教授(顎顔面外科)らの研究チームが明らかにし、1日付の米医学誌電子版に発表した。

 ラットの実験では、歯の幹細胞は移植しても腫瘍は形成されなかった。上田教授は「胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った再生医療よりも倫理や安全面のハードルが低く、脊髄損傷の治療に新しい可能性を提供でき、医療廃棄物の有効利用も可能」と話している。

 歯の幹細胞がある組織は、もともと神経系だった細胞から分化したため、神経再生治療に有効と考えられていた。

 実験では、ラットの脊髄を切断し、断面とその周囲に歯の幹細胞を移植。約8週間で歩行できるまで運動機能が回復した。比較のため骨髄の幹細胞などを移植したラットは歩行できなかった。

 歯の幹細胞を移植した脊髄は、神経細胞で情報伝達を担う軸索が切断部を越えて再生したり、幹細胞が神経情報を早く伝達するのに必要な細胞に分化したりするメカニズムも解明。ほかの幹細胞にはない、強い再生能力を示したという。

※米医学誌はジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション

2011年12月2日 提供:共同通信社