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歯科界懸案の「歯科口腔保健の推進に関す法律」 
衆院本会議で可決・成立  

8月2日午後、「歯科口腔保健の推進に関す法律」(歯科保健法)が、衆議院本会議で可決・成立した。

今まで、過去3回、民主党は2008年、2009年、自民党・公明党は2009年、歯科に関する基本法を提出したが、いずれも審議未了で廃案になっていたこともあり、今回の法案成立に向けて、関係者は並々ならぬ意気込みをもって対応していた。

成立した「歯科口腔保健の推進に関す法律」の概要は以下のとおり。「国民保健の向上に寄与するため、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持の推進に関する施策を総合的に推進」を目的にしており、基本理念は「@国民が生涯にわたって日常生活において、歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、歯科疾患を早期に発見し、早期に治療を受けることを促進、A乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進、B保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施設の有機的な連携を図りつつ、その関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健の推進する」としている。

さらに「@国及び地方公共団体、A歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士等、B国民の健康の保持増進のために必要な事業を行う者、C国民について」とそれぞれの責務を規定している。

8月3日、今回の法案提出・成立までに多くの関係者が尽力したが、特に歯系議員5人の議員会館事務所(東京都永田町)を訪ねた。各事務所とも議員本人は委員会出席等などで不在であったが、秘書ほか事務所スタッフからコメントをいただいた。内容要旨は以下のとおり。

「有難うございます。いわゆる基本法が成立したので、まさにこれからです。この法律を生かすように、都道府県地区や臨床の歯科医師の先生方の今後の活動に期待したいです」大久保潔重事務所(参院議員・民主党)、「何とか、成立にこぎつけました。水面下では色々ありましたが、良かったです。何回か提出・審議未了を繰り返したので、今回は是が非でもという思いはあったはず。日歯・同連盟も安堵していると思います。

歯系議員の先生は個々に尽力していたことは事実です」水野智彦事務所(衆院議員・民主党)、「当初6月18日までの国会の会期が、8月31日まで延長されたこともプラスになったかもしれません。委員会と本会議の日程調整などが難しかったかもしれません。法案の文章は、言い回しなどのものですので、それほど苦労したものではなかったと理解しています。でも良かったです」川口浩事務所(衆院議員・民主党)。

また、石井みどり事務所(参院議員・自民党)からは、「石井みどりNEWS」(8月2日VOL22)にコメントを掲載した。「国には口腔保健の推進のための方針・目標・計画を定める義務が、都道府県には努力義務が課せられることとなります。

歯科疾患の予防や口腔の保健に関する調査研究をはじめ、国民が定期的に歯科検診を受けること等の勧奨や、障害者・介護を必要とする高齢者が定期的に歯科検診を受けることまたは歯科医療を受けることができるようにする等の内容となっております。こうした施策が具体化されることにより、客観的データも蓄積され、国民の健康に貢献できる歯科医療の発展へとつながるものと考えております」としており、今後の展開に期待を寄せている。

同じく、西村まさみ事務所(参院議員・民主党)では、"法案成立後のメリットと歯科医療政策への取組み"(問合せ先・西村まさみ事務所)として文章にて民主党の見解を示した。「本法律により、医療や保健に係る制度における口腔保健の重要性をより明確にすることで、歯科保健医療制・xの提供体制やその環境が充実され、国民の健康増進や健康寿命の延伸へとつながることが期待され、医療費の削減にもつながります。少子・高齢社会における予防重視・健康の増進維持という国の医療政策に合致するもので、今まで不十分であった歯科における具体的施策の実現の後押しになります。

例えば、19道県、7市町が既に条例が成立し、各都道府県・市町村等自治体で歯科健診が様々な形で行われていますが、これを人生のライフステージに沿って国としての歯科保健の整備を推進します」と強調している。

法案成立を受け、歯科界も新しい時代のスタートになるが、この法律を意義あるものにするために、今回を契機に歯科関係者のさらなる問題意識と日々の活動次第であることは間違いないようだ。
取材 奥村 勝氏


2011年8月4日 提供:Dentwave.com

歯科口腔保健法が成立
 基本理念や国等の責務定める


「歯科口腔保健の推進に関する法律」が8月2日、第177回国会の衆議院本会 議で可決・成立した。

同法は理念法であり、予算を伴うものではないが、「歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持に関する施策」(以下、歯科口腔保健)の推進に係る基本理念を定めるとともに、国及び地方公共団体、歯科医師、国民等の責務を明ら かにしている。また、国民保健の向上に寄与するべく、歯科口腔保健に関する施策の基本となる事項を定め、施策の総合的な推進を図っている。

いわゆる「歯科口腔保健法」では、口腔の健康を「国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たし、国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取り組みが口腔の健康の保持に極めて有効」と明記。その上で、法律の目的を、基本理念を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務等を規定し、歯科口腔保健の総合的な推進により、国民保健の向上に寄与するこ ととしている。  

基本理念は、歯科口腔保健の推進に関する施策を行う上での前提条件。
▽国 民が生涯にわたって日常生活で歯科疾患の予防に向けた取り組みを行うととも に、歯科疾患の早期発見・早期治療を促進する
▽乳幼児期から高齢期までの口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科保健 を推進する
▽保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進する ―の3項目を定めている。

責務としては、国は基本理念に則り、歯科口腔保健の推進に関する施策を策定し、実施することを規定。地方公共団体は、国との連携を図りつつ、地域の状況に応じた施策を策定し、実施する。 歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士等は、歯科口腔保健に資するよう、医師その他関連業務の従事者と緊密な連携を図りつつ、適切に業務を行うとともに 、国及び地方公共団体の施策に協力するよう努める。  

国民に対しては、生涯にわたって日常生活で自ら歯科疾患の予防に向けた取り組みを行うとともに、定期的に歯科検診を受け、必要に応じて歯科保健指導を受けることを責務に掲げている。

また、国及び地方公共団体は、
(1)歯科口腔保健に関する知識等の普及啓 発等
(2)定期的に歯科検診を受けることなどの勧奨等
(3)障害者等が定期的 に歯科検診を受けるための施策等
(4)歯科疾患の予防のための措置等
(5)口 腔の健康に関する実態の定期的な調査及び研究の推進等―について必要な施策を講じる。

講じられた施策は、厚労大臣が総合的な実施のための方針や目標、 計画、その他の基本的事項を策定・公表する。都道府県においては、地域の状況に応じて、努力義務として基本的事項を策定する。 国及び地方公共団体には、必要な財政上の措置も努力規定として求めている 。 その他では、口腔保健支援センターの設置を明記。歯科医療業務に従事する者等への情報提供や研修の実施などの支援を実施する機関に位置付けるとともに、都道府県、保健所を設置する市及び特別区は任意に設置することができることを定めている。


2011年8月9日 提供:日歯メルマガ