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車で寝泊まり、無償で診察

自らも被災の歯科医

 宮城県南三陸町の歯科医阿部公喜(あべ・こうき)さん(54)は、経営していた医院や自宅が津波で流された。「何もかも失ったが、仕事はできる」。避難所の駐車場に止めた車で妻(57)と寝泊まりしながら、無償で診察を続けている。

 町内に6カ所あった歯科医院はすべて流された。「歯科医がいなくなっては困るだろうから」。診療時間は午前10時から午後3時まで。毎日、子どもから高齢者まで約25人が訪れる。ストレスで歯肉炎になった人や、入れ歯をなくしてしまった人も多いという。

 親類は5人が、まだ行方不明のままだ。「遺体が見つかればラッキーという世界になってしまった」と、力なく苦笑いを浮かべる。

 訪れた患者に町に残ってほしいと言われることもある。阿部さんは「離れるわけにはいかないが、いずれは難しい選択をしなければならないのかもしれない」と唇をかんだ。

2011.4.5 提供:共同通信社