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口腔衛生用研磨製品による
エナメル質の光沢度と磨耗度について

著者 マーク・パット カール・クレバー 
ジョセフ・ミューラー予防研究所(アメリカ)

デンタル・ハイジーン誌(アメリカ)1982年9月号掲載論文

要約
研磨構成物質の異なる10種類の口腔衛生研磨用製品についてエナメル質光沢度と磨耗度が実験室でテストされた。様々な製品が効果面で重要な差異を示した。特にパミスや二酸化ケイ素を含む製品による光沢度が悪く、またある製品のエナメル質磨耗度は甚大だった。最高の光沢度を示してなおかつエナメル質研磨度が極めて低かったのは酸化マグネシウムあるいはアルミニウムシリケートを含む製品だった。

イントロダクション
多くの歯科医や衛生士たちは、過度の磨耗と引っかき傷が光沢度を落として外的汚れが付着する可能性が増しているにも関わらず、効果や安全性が疑わしいパミスの混合作業を自ら行ってでもその使用に固執してきた。ほとんどの歯科医や歯科衛生士による製品選択の判断基準は汚れ除去能力の高さにあるが、口腔衛生用ペーストの非常に大切な要素として歯の光沢度を上げるという機能もあるのだ。専門家用の多種類の口腔衛生用研磨ペースト市場が流通しており、それらの中には訴求内容と実際の性能が食い違って混乱をもたらしている場合もある。本紙で報告される調査内容は、より適切な口腔衛生研磨製品の選択を合理的に行えるようなアプローチを駆使して情報供給を試みるものである。

材料と方法
基本的条件
●検体は牛の切歯使用(研磨性と磨耗性がヒトに近いため)。
●各研磨剤は蒸留水と3:1で混合。
 比較目的でパミスと1%カルボキル・メチルセルトース・ナトリウム溶液1:2で混合。
●プロフィーカップ、負荷300g、回転数毎分1000、接触10秒ごとに2秒インターバル設定。
光沢度評価
各検体は0.2MHCLに30秒間浸漬。完全洗浄後ヤングデンタル社プロフィーカップで研磨。研磨用ペースト泥は無作為抽出使用。テスト標本、毎分30回転。プロフィーカップ、中心から±3.6ミリで毎分5回側方に振動。テスト後標本、完全洗浄、乾燥後リフレクトメーター使用、光沢度テスト前後で計測。
磨耗度評価
標本、5分間の往復運動で研磨。未処置エナメル質両サイド磨耗後、二並行証跡をプロフィロメーター計測。磨耗深度、被験部位実験前後結果、重ね合せ決定、プラニメーター計測後磨耗深度平均値計算。

結果 グラフ2点で明示する通り。


ディスカッション

エナメル質光沢度で最も高い数値が得られたのは、マグネシウム・シリケート(P)であり、ナトリウム・カリウム・アルミニウムシリケート(プロケア)、再結晶カオリン(CP)やジリコニウム・シリケート(Z)がこれにつづいて良好な数値を示した。それ以外の製品の効果は低く、磨耗度においてパミスと統計学的に同等か、あるいはそれ以下だった。実際の臨床での平均的治療時間が5分であることを考慮すると、急速光沢率が重要である。つまり、急速光沢可能製品だけがそのような短時間内で鑑識し得る程度にエナメル質光沢度を改善できるのである。
口腔衛生研磨用ペーストの口腔内硬組織に対する磨耗度の問題は強く関心の度合いがもたれ始めている分野である。これまでは、年1回あるいは2回の口腔衛生治療による磨耗に関しては無視してもよいとされてきたが、それは頻度が低いことに加えて、全人口によって行われている日々の歯磨きの影響度に比較してのことであった。しかしながら、口腔衛生材料が歯に与える影響が全くなしではない、という証拠があるのだ。例えば、ブラッシュらは様々な歯磨材の通常の使用と影響度はスケーリングや研磨作業によって生み出される磨耗に比べれば小さいものである、と観察した。口腔衛生用研磨ペーストによる磨耗の重要性は、むき出しのセメント質や象牙質を有した沢山の人々が継続的に増え続け、歯科治療技術が改善され、寿命が延びていることを考慮すれば、その重要度が増すことは明白である。デイビスは、口腔衛生用に供される典型的な研磨ペースト材料は歯磨材に比べれば10倍、ものによっては20倍のエナメル質への磨耗度を有していると報告している。
全体的に、実験室で行われたこれらのテストは、現在市場流通している様々な研磨材料を含んだ口腔衛生研磨ペーストの代表的な10種類で得られるエナメル質光沢度と磨耗度に大きな変差があることを示した。P、プロケア、CPの3種類の製品だけが光沢度と磨耗度の双方のテストで良好な結果を示した。

2007.2.1 クリニカル・M・リポート新聞