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ドライマウス 生活を変えて、よく噛もう

ドライマウス、生活変え改善
増える「口の筋力低下」原因 よくかむことが重要

 口が乾く「ドライマウス」(口腔(こうくう)乾燥症)。クッキーが食べられない、世間話ができないなど、放置すれば日常生活に支障をきたす。背後にはさまざまな原因があるが、飲み薬の種類や生活習慣を変えることで改善するケースも多い。【元村有希子】

 ドライマウスに悩む人は、潜在患者を含め人口の25%程度と見積もられている。鶴見大歯学部付属病院(横浜市鶴見区)は02年、国内初の「ドライマウス外来」を開設。以来、3600人の患者を診療してきた。中高年の女性が中心だが、最近は10代の患者もいる。

 診断は問診に加えて唾液(だえき)の量を測る。ガムをかんで唾液腺を刺激しても、10分間の唾液が10CC以下だと、唾液腺の異常を疑う。代表的な例が、難病に指定されている自己免疫疾患の一つで、涙や唾液などの分泌障害を起こす「シェーグレン症候群」だ。

 東京都多摩市の建部良子さん(77)は06年、大好きなご飯がまずくなり、食事の量が激減して10キロ近くやせた。調べるうちに、唾液量が減ったことが原因と判明、シェーグレン症候群と診断された。

 根治は難しいが、適切な対処で日常生活を送っている。唾液分泌を促す薬を毎日飲み、うがいや水分補給を欠かさない。夜は専用のマウスピースをつけるなどして口内を保湿する。「食事も水分が多いものを選べば楽しめるし、視覚障害者のための朗読ボランティアも続けられた」と建部さん。

 しかし実際には、病気ではないのに「口が乾く」と訴える患者の方が多い。同病院の斎藤一郎院長によると、受診者の7割近くが、唾液腺は正常だった。

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 こうした人たちで最も多いのは、薬によるドライマウスだ。抗うつ薬や睡眠導入剤、高血圧の薬、花粉症対策の抗ヒスタミン剤などには、口が乾く副作用がある。支障がない範囲で服用量を減らしたり、別の薬に変えるなどの対策で改善する。

 ストレスが原因になるケースも少なくない。唾液腺は自律神経の影響を受けており、緊張すると口がカラカラになるのは、交感神経が唾液腺の働きを抑えるためだ。職場環境や人間関係、家族の介護といったストレスにさらされ続けることで唾液分泌が減る。

 「最近特に増えているのが、口のまわりの筋力低下」(斎藤院長)。高齢者に加え、軟らかいものばかり食べて育った子供たちは筋肉が発達しないため、日ごろから口が開きがちだ。猫背など姿勢が悪い人や、鼻が詰まっている人も口呼吸になりやすく、唾液分泌が正常でも口内が乾燥してしまう。

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 ドライマウスにならない生活とは。

 「とにかく正しく、よくかむこと。かむことで筋肉が鍛えられ、唾液分泌も活発になる」と斎藤院長。根菜類などかみごたえのあるメニューを心がけ、よくかんでゆっくり食べることで、唾液中の消化酵素が働く。唾液は口内を清潔に保つため、分泌が不十分だと虫歯や歯周病のほか、口臭の原因にもつながる。高齢者では細菌が肺まで入り込み、肺炎を起こしやすくなる。

 口のまわりの筋肉を鍛える手軽な方法もある。「いー」と言いながら口を横に広げた後「うー」と言いながら口をとがらせるしぐさを繰り返すとよい。また、舌を上あごにつけてはじかせるように「タン、タン」と鳴らす運動は、舌の筋肉を鍛える。舌が上あごにきちんと収納され、口も自然に閉じてくる。

 斎藤院長が主宰する「ドライマウス研究会」は「ドライマウスは歯科医が診る」を掲げる。全国の歯科医や歯科衛生士ら約3000人の会員が加入し、主要大学病院の歯科や口腔外科がドライマウス外来を併設したり、クリニックでも相談に乗っている。会員施設は研究会のホームページ(http://www.drymouth-society.com/)から検索できる。

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 ■こんな人は相談を

・口の中がいつもネバネバしている

・クッキーなどパサパサしたものが食べにくい

・口が常に乾いていて、会話をするのがおっくう

・食べ物をのみ込むのがつらい

・入れ歯がすぐに落ちてしまう

・舌がひび割れて痛い

・こうした状態が3カ月以上続いている

 ■ドライマウスを防ぐには

・お茶や水で水分を補う

・室内が乾きすぎないよう加湿する

・食事はよくかむ。前歯より奥歯でかむ方が唾液は出やすい

・ガムやあめ、すっぱい食べ物で唾液腺を刺激する

・交感神経が優位になるたばこはやめる

・過度の飲酒も体の水分を奪い、乾く原因に

2010.2.26 記事提供:毎日新聞社