無理なくデトックス
キャベツやセリ献立に

春といえば衣替え。冬の厚ぼったい衣類をしまい込み、薄着になる季節だ。実は体も同じこと。新陳代謝が衰える冬にため込んだ老廃物を排出し、体をすっきりさせたいシーズンである。無理のない春のデトックス(解毒・老廃物の排出)の主役は、今が旬の春野菜たちだ。

スーパーマーケットの店頭に、春キャベツやチンゲンサイが緑鮮やかに並ぶ。セリや根三つ葉、パセリなどセリ科の野菜やフキノトウ、ウドなど山菜類も豊富に出回る。そんな春野菜には“デトックス成分”と呼べそうな成分が多く含まれている。その第一は植物性アルカロイドだ。

西洋医学をベースに東洋医学を取り入れた治療をしている医療法人水嶋クリニックの水嶋丈雄院長は「タラノメやフキノトウ、ウドなどの山菜や春野菜の独特の苦味は植物性アルカロイドによるもの。この成分には、体内にこもった余分な熱分と水を排出する解毒作用がある」と話す。

植物性アルカロイドには、腎臓のろ過機能を上げる作用がある。強心利尿の漢方薬として有名なジギタリスに、植物性アルカロイドが多く含まれることからもわかる。

デトックスに役立つ第二の成分は春野菜に含まれる鉄やマンガン、亜鉛、ゲルマニウムなどの微量元素と、ビタミンCやEなどの栄養素だ。ビタミンCやEは微量元素と一緒になって、がんや動脈硬化の原因となる有害な活性酸素を除去していく。中でもキャベツは葉脈部分に豊富なビタミンCを含む。米国立がん研究所が発表した「デザイナーズフード」(がん防止効果の期待できる食品)でも、ニンニクに次いで高い有効性が認められたほどだ。

肝臓機能をアップ
キャベツやチンゲンサイなどアブラナ科の野菜に共通して含まれるグルコシノレートという成分も見逃せない。女子栄養大学の五明紀春教授はグルコシノレートについて「肝臓の解毒機能を強化し、がんの発症を抑えるということで注目されている」と説明する。特に生キャベツを刻むと、グルコシノレート化合物が分解されて、辛み成分のアリルイソチオシアネートが発生し、がんや血栓を抑制する働きが期待できる。

このほかセリ科の野菜の独特な香りは精油成分のテルペン類によるもの。この成分には血行促進やストレス緩和、抗酸化作用がある。サヤエンドウやグリーンピースなどマメ科エンドウ属の仲間は色素成分のフラボノイドを含み、抗酸化作用がある。

鉄やマンガンなど微量元素には利尿作用もある。「体の細胞膜の水チャネルという穴をふさぐ働きが、微量元素にはある。浸透圧で細胞膜の外に出た水分が内側に染み込まずに、尿として排出されやすくなる」(水嶋院長)

ではこうした春野菜をどのように取ればよいのだろう。
代表格のキャベツなら、巻きの緩い若いものほどよい。春キャベツは内部まで黄緑色を帯びて、葉が柔らかくみずみずしいので、生の葉を1−2枚(約100グラム)食べれば、1日に必要なビタミンCの半分近くを取れる。

とりすぎに注意
同じアブラナ科の菜の花は、葉やつぼみまで全部食べられるので、高い栄養価を丸ごと摂取できる。ただし、ゆですぎるとせっかく豊富なビタミンCが大幅に減ってしまうので気をつけたい。緑色が濃く、つぼみが固く締っているもの、茎の切り口がみずみずしいものを選ぶ。

グリーンアスパラは、穂先が締まり真っすぐで太いもの、茎に筋のないものが良い。鮮度が落ちると固くなり苦みも出るので、みずみずしさが大切だ。全体的に春野菜は鮮度が勝負。特にフキノトウ、タラノメなどの新芽は足が早い。とれ立てを選ぶことだ。鮮度で食べる春野菜は煮物には不向き。塩茹でや網焼きなどシンプルな料理法が良い。

もちろん、同じ野菜ばかり食べていては逆効果。植物性アルカロイドなどをとりすぎると、人によって下痢をすることも。バランスを大切にし、春野菜をたっぷり入れた献立で「体すっきり気分すっきり」を体感してみては。

主な春野菜の栄養素と効果


ビタミンC=活性酸素を除去、コラーゲン生成、免疫力強化
キャベツ、菜の花、チンゲンサイ、セリ、根三つ葉、パセリ
●β−カロテン=活性酸素を除去、細胞の老化抑制
チンゲンサイ、セリ、パセリ、ワケギ、グリーアスパラ、グリーンピース、サヤエンドウ、スナップエンドウ
●食物繊維=腸内の善玉菌を活性化、コレステロールの体外排出を促進
チンゲンサイ、根三つ葉、ワケギ、グリーンピース、サヤエンドウ、スナップエンドウ、タケノコ
●カリウム=血圧降下作用
セリ、根三つ葉、ワケギ、タケノコ
●ビタミンK=解毒・利尿作用
パセリ
●アリシン=活性酸素を除去、発汗・血行促進、疲労回復
ネギ、ワケギ、タマネギ
●アスパラギン酸=乳酸など疲労物質を除去
グリーンアスパラ、ウド
●グルタチオン=活性酸素を除去、細胞の老化抑制
グリーンアスパラ


2006.3.25 日本経済新聞