あぶら抜きダイエットが流行している。私の診療所に来られた厚化粧の中年女性「最近、肌荒れがひどく化粧がうまく乗らない」と。食事内容を聞いてみると、肉や脂肪は一切避けているという。実は肌荒れの原因はここにあったのだ。

脂肪を断ってしまうと、皮脂の分泌が減って肌がかさかさになったり、しわが増えたりする。そこで適度に植物油をとることを勧めたい。その理由は皮膚を守る必須脂肪酸リノール酸、そして老化を防ぐビタミンEを多く含むからだ。

ビタミンEは体内で有用な抗酸化作用を持ち、老化の原因になる細胞の酸化を防ぐ、さらに毛細血管の血行をよくし、皮膚の栄養をよくする。

ビタミンEは植物油に多く含まれ、日本人のビタミンEの必要量のおよそ25%を充たしているという。ビタミンEの目安量は成人男子9ミリグラム、成人女子8ミリグラムとされ、植物油を含めて、栄養バランスの取れた食事をしていれば、その中で満たされる量だ。また植物油で人参などのビタミンAの多い食品を料理すれば、これは脂溶性ビタミンなので吸収を促す。このビタミンは皮膚や粘膜を健康に保つ働きがある。

といっても植物油は高エネルギー。過剰になるのを抑えるのには、ローエネルギーの野菜をとってエネルギーを薄め、肉や魚、卵、牛乳、豆腐などのたんぱく質食品をしっかりとることが大切。皮膚はたんぱく質でできているからだ。中国人や韓国人は肌が美しいと言われるのは、植物油を主体にして栄養のバランスを取っているからだと思われる。

(新宿医院院長  新居 裕久

2005.11.5 日経新聞