私たちが日常とる脂肪は植物油とかバターなど目に見えるものばかりではない。見えない脂肪としては、肉や魚介類、卵、牛乳、そして総菜類や菓子類の中にも脂肪は含まれているし、穀物や豆類などにも含まれている。

2001年の国民栄養調査によると、日本人1人の1日当りの脂肪摂取量は55.3グラム、そのうち見える脂肪は13.3グラム(24%)、見えない脂肪は42.0グラム(76%)となる。そして見えない脂肪のうち、血中総コレステロール値を上げる動物性の脂肪が植物油に対して2倍近く占める。

近年とみに食が欧米化され、若い人は肉好きが多い。血や肉になり、スタミナを作るたんぱく質は十分に確保できるが、おのずと動物性脂肪の摂取も増えてくる。心配なのは血中総コレステロール値が上がり、動脈硬化を促進して心臓病や脳卒中が起こりやすくなることである。

一方において、脂肪摂取過多が気になって、見える脂肪、植物油の摂取量が抑えられている。実は植物油には、オレイン酸、リノール酸、アルファーリノレン酸、植物ステロールなどが含まれ、これらは血中総コレステロール値低下作用があり、動脈硬化を防いでくれる。

厚生労働省では動物性・植物性・魚介類の脂肪の摂取率は4対5対1位が良いとしている。そこで、動物性脂肪を見えない脂肪の取り過ぎに注意し、魚介類や野菜をてんぷらやフライのように植物油で揚げたり、またいためたりして食べるように心がけてみたらどうだろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2005.10.29 日経新聞