夏の風物詩というとスイカが頭に浮かぶ。スイカは水分が90%くらい含まれ、がっぷりかぶりついた時のなんともいえない清涼感を持った甘い水菓子、まさに甘露である。

スイカは昔から腎臓病、心臓病、高血圧、妊娠中のむくみなどに良いといわれてきた。これらの病気に良い理由については、カリウムが多く含まれ、利尿作用や血圧低下作用が期待できるからだという。オレンジにはカリウムが100グラム中180ミリグラム、これに対してスイカは120ミリグラムと少ないのだが、一度にたくさんおいしく食べられるので、その分カリウムと水分も十分にとれる。

スイカには強い利尿作用があるが、これは、カリウム以外にアミノ酸の一種であるシトルリンという特殊成分が含まれているからだ。そこで、熱を取り体を冷やし、口の渇きを癒やす働きのある涼性食品なのである。この点も夏好んで食べられる理由の1つになっている。なお、スイカの皮には実以上に利尿作用があるというから、中国では皮をせんじたものを腎臓病などに使っている。

お茶の水女子大学近藤和雄教授にによると、スイカの赤い色を作っている色素は、抗酸化物質のカロテノイドの仲間で、リコペンと呼ばれるもの。これはトマトに多いが、スイカではこの1.5倍くらい多く含まれているという。活性酸素を消去する働きが強く、がんや動脈硬化予防に良いとされている。この働きはベータカロテンの2倍以上、ビタミンEの百倍以上も強いという。そこで、スイカは典型的な薬食同源のおいしい食品と考えて良いだろう。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2005.8.6 日経新聞