コーヒーの有効性


 緑茶は、女性の胃がんや進行前立腺がんのリスクを下げる可能性があり、特に女性は、血液内のカテキンの濃度が高いほど胃がんを予防するといわれます。しかし、すべてのがんを緑茶が防いでくれるわけではありません。

 一方、コーヒーは、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、大腸がん、子宮体がんといった緑茶が効果を示さないがんを予防する可能性があります。たとえば男性の場合、コーヒーを1日3杯以上飲む人は、膵臓がんにかかるリスクが4割も下がるというデータがあります。

 肝臓がんは、もっと顕著な効果が報告されており、コーヒーをほぼ毎日飲む人は、男女とも肝臓がんのリスクが約半分に減少しています。特に、1日の摂取量が増えるほど発生率が低下し、1日5杯以上飲む人の肝臓がんの発生率は、4分の1まで低下していました。

 肝臓がんの9割以上は、B型かC型のウイルス性肝炎が原因で発症します。コーヒーは炎症をやわらげる作用があり、肝炎の進行が抑えられ、肝臓がんを予防しているのではないかと考えられます。

 コーヒーと肝臓がんとの関係があまりにもはっきり表れたため、ウイルス性肝炎の患者の多くが「コーヒーを飲まない」ため、「コーヒーを飲む」人に肝臓がんが少ないのではないか、という見方もありました。しかし、研究が進み、コーヒーの有効性は定説になりつつあります。

 さらに、コーヒーは膵臓がんや子宮体がん、大腸がんなど、糖尿病、肥満、運動不足がリスクとなるがんを予防することも分かっています。コーヒーは運動のように糖の消費を促す作用があり、血糖値を下げる「インスリン」を大量に分泌する必要がなくなります。インスリンは、これらのタイプのがんを増殖させることも知られています。コーヒーは、がん予防にも糖尿病の予防にも有効となる可能性があるのです。

 ただし、コーヒーの取りすぎは不眠症や胃潰瘍の原因となるほか、膀胱(ぼうこう)がんを増やす可能性もあります。何ごとも、ほどほどが肝心ということです。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)


2012年7月30日 提供:毎日新聞社