かきで味覚障害治す

かきは美味で海のミルクといわれるぐらい栄養的にも優れた食品だ。たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルが満遍なく含まれ、なかでも亜鉛と鉄が豊富だ。

ところでこの亜鉛は、近年注目されているミネラルの1つ。というのは、味覚障害を引き起こす原因の6割近くが亜鉛不足によるものであるからだ。自分自身、自覚していないのに、味覚が衰えているという人が結構多い。

高齢で食欲が低下している場合、また、若い女性の20%近くが偏食やダイエットによって亜鉛不足に陥っているという。亜鉛はDNAやたんぱく質の合成になくてはならない酵素をつくるミネラルで、細胞の新生を促す。味を完治する味蕾の細胞は新陳代謝が早く、ラットでは10日位で入れ替わるという。

人の場合、亜鉛不足による味覚障害は、亜鉛を補うと半年ほどで約80%が回復する。しかし、それを過ぎると回復しにくく、特に高齢者の場合は、治癒率が低下するという。対策としては、亜鉛を多く含む食品を知って積極的にとることだ。牛もも肉100グラム中に4.4ミリグラム、豚レバーには同6.9ミリグラムと多く含まれるが、それにも増してかきの場合は100グラム(中サイズ7−8個)に、なんと13.2ミリグラムも含まれている。

亜鉛の1日に推奨量は、男性9ミリグラム、女性7ミリグラムである。典型的な日本食をとっている場合で9ミリグラムくらいはとれるが、ダイエット中の女性に食事内容では約6ミリグラムしかとれないという。かきは寒さに向かって、どんどん美味しくなるので、酢の物、フライ、煮物、鍋物、みそ汁などにして大いにとってみては。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2006.11.25記事提供:日経新聞