大腸がんと便秘の関係は

便秘すると大腸がんになるのではないか、と心配している人もいるだろう。この点については、厚生労働省がん研究助成金による「多目的コホート研究」がある。
40−69歳の男女約6万人を約7年にわたり追跡調査・分析した2006年の発表では、便通が週2、3回ならば、毎日ある人に比べて、大腸がんのリスクが高くなることはなかった。
この研究班では、食生活との関係も同じぐらいの規模で調査している。それによると、食物繊維の摂取量と大腸がんのリスクの間には、量が多いほどリスクが低くなるという関連はみられなかった。
しかし、非常に少ない摂取量の場合は大腸がんのリスクが高くなる可能性があった。具体的な量は、この研究でははっきりしないが、欧米で行われた13のコホート研究での73万人の解析結果によると、1日10グラム未満しか摂取していない約1割の人たちでリスクが高くなったという。
この量は、1日にブロッコリー中3分の2、あるいはアーモンド100グラムぐらいに含まれる量だが、日本人は日常、野菜や海藻、きのこ、納豆など食物繊維の多いものをとっているので、そんなに摂取量が少ない人はほとんどいないだろうと思う。
次に野菜と果物の関係だが、当研究班の調査では、摂取量がもっとも多いグループと少ないグループとを比べてみると、大腸がんのリスクは変わらなかった。といっても野菜や果物は胃がんや高血圧、心臓病、便秘などの予防に有用であるということから、日常栄養のバランスのとれた食事の中で十分にとるべきだ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

 

2008.3.15 記事提供:日本経済新聞