脂肪の摂り方AHAが再提言

AHAが、大衆的な栄養アドバイスに対抗してω-6 PUFAを擁護する

HAの最新の科学的勧告は、1日の摂取カロリーのうち5%から10%をω-6 PUFAで摂ることを推奨しており、ダイエット本や栄養本で広まったω-6:3の比率を下げることの健康への有益性を評価していない。

Shelley Wood

【1月28日】(テキサス州ダラス)脂肪分の多い魚に含まれるω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量に対する割合として、植物油に含まれるω-6脂肪酸の摂取量を減らすことを考えるべきではないという、一部の有名なダイエット本に書かれているアドバイスとは逆の最新声明を米国心臓協会(AHA)が強く唱えている。[1]

AHAが今週出した科学勧告によれば、1日に摂るカロリーのうち5%から10%をω-6脂肪酸、それも主にリノール酸から摂るようにすべきである。AHAの栄養勧告に従っていれば、すでにこの割合で摂取している可能性が高い。

この勧告の執筆陣の一人であるDr Dariush Mozaffarian(ハーバード大学、マサチューセッツ州ボストン)の話によると、AHAがω-6脂肪酸に焦点を合わせたのは、その他の情報源から来る栄養アドバイスが植物性PUFAの意義をあまり強調しないことに対抗するためである。

「ω-6脂肪酸が有益であることを示したエビデンスをほとんどの科学者と医師はおおむね認めているようだが、ω-6脂肪酸が有害であると声を挙げて発言し、ω-6の摂取量を減らすことを助言する学者も少数いる」と博士はheartwireに語った。「今回の勧告の目的は、有益対有害のエビデンスを再検討してはっきりさせることである。」

執筆陣の筆頭著者であるDr William S Harrisがheartwireに説明したところによると、ω-6の摂取量を減らすようにという推奨は、実施が続いている一握りの研究を大衆向け栄養本が取り上げたことによる。AHA勧告が引用したその種の本のひとつが、Dr Barry Searsが著した『Omega Rx Zone』である。Sears博士は血糖値を低く抑える「ゾーンダイエット」で広く有名で、このダイエット法は21世紀初頭から映画スターやプロアスリートに人気を博している。

ダイエット本や栄養本で広まった考え方のひとつとして、ω-6:3の比率を最適にするというものがあるが、Harris博士に言わせれば、それは「科学の誤った解釈」に基づくものでしかない。リノール酸摂取量を減らすことの根拠は、リノール酸が前炎症性分子の合成に関与するアラキドン酸に代謝されることを示した研究にある。しかしω-6 PUFAには、前炎症性活性に対抗して働く強力な抗炎症性状もあると、今回の勧告の著者らは述べている。「ω-6脂肪酸は『前炎症性』であるとする見方は正しくない」とHarris博士はAHAの報道資料の中で書いている。「リノール酸の摂食量を少なくしても、(リノール酸からのアラキドン酸の)生合成は体内でしっかりと制御されているので、組織レベルでのアラキドン酸の量は減らない」と博士は言明した。

「心臓専門医なら、長年の植物油、例えばコーン油やサフラン油にいい感触を持っているのではないかと思う。植物油は1970年代以降、食事に含まれる飽和脂肪の健康的で優れた代替物であり、AHAは長年にわたってそれを推進してきた」とHarris博士はheartwireに語った。「今回の論文は、ヒトにおける数多くの一連のエビデンスを整理した総説であり、ω-6摂取量を多くすると心血管系の健康にはいいということを言うものだ……我々が基本的に一般人に言いたいのは、何か違うことを始めることではなく、ω-6の摂取を止めないようにということだ。」

しかし、ω-6摂取減量派の中心的支持者であるDr Artemis Simopoulos(Center for Genetics, Nutrition, and Health社、ワシントンDC)は今回のAHA勧告に異論を唱え、米国を初めとする西洋諸国の食事にはω-6 PUFAの含有量が多すぎ、ω-3類に比べてはるかに多く摂取されている(博士によるとその比率は16:1)とheartwireに主張した。「EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)はとても強い抗炎症物質であるが、リノール酸とアラキドン酸はその性状をほんのわずかしか持っていないということは、実施された複数の研究によってきわめて明確に示されている。西洋型の食事に含まれているそれらを大量に摂取すると、α-リノレン酸が組込みおよび延長・飽和を経てEPAおよびDHAになるのを妨害する」と博士は言う。「次に、進化および進化生物学の観点からして重要である。我々は、150年前までは、いやむしろ50年前までは、これほどω-6脂肪酸が多量に含まれる食事を摂ったことがなく進化した。これは人為的であり、一般大衆を相手に科学的エビデンスなどまったくなくして行われる実験だ。」

Simopoulos博士は、ω-6脂肪酸とω-3脂肪酸の比は2:1が良く、1:1でも構わないと言う。「進化の観点から見るにしても、遺伝子変異の観点から見るにしても、大量のω-6脂肪酸は健康的ないし正常な発達とは相容れない。」

しかしAHA勧告の著者陣は、丁寧に反対している。人々は健康的な食事を食べることに意識を向けるべきである、とMozaffarian博士は言う。「特定の比率にこだわるのは意味がない」と博士は語った。

今回の論文でのHarris博士の開示情報によれば、博士はMonsanto社から研究助成金を受け取っており、同社のコンサルタント/諮問委員を務めている。その他の著者の開示情報は原著に記載されている。

1.. Harris WS, Mozaffarian D, Rimm E, et al. Omega-6 fatty acids and risk for cardiovascular disease. Circulation 2009; DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA. 108.191627. Available at: http://circ.ahajournals.org

 

2009.2.3 記事提供 Medscape