健康維持のためには栄養のバランスが大切とよくいわれているが、なぜ大切なのか。どのような食品を組み合わせて取ったらよいのか即答できる人は少ない。

栄養のバランスの必要性は車にたとえると分かりやすい。車のボディや車輪、エンジンなどの機械部分は人でいうと、皮膚、筋肉、骨、内臓などにあたり、栄養素でいうと、たんぱく質が主成分である。この車を動かすためにはガソリンが必要である。人でいえばエネルギー源。

これは主として脂肪、炭水化物(糖質)で供給される。しかしこれだけでは車は円滑に動かない。エンジンや車輪をスムーズに動かすためには潤滑油がなくてはならない。潤滑油は栄養素でいえば、ビタミン、ミネラルに当たる。

人は、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5つの栄養素を満遍なく取らなければ、精神的、肉体的にも活発に動けないし、また健康長寿はおぼつかない。

食生活の欧米化にによって現代人にもっとも不足しているのは、ビタミン、ミネラルの供給源である野菜。厚生労働省では1日350グラム(うち120グラム以上を緑黄色野菜で)以上を取ることをすすめているが、300グラムも満たしていない。

それとカルシウム。1日600ミリグラムが理想だが、現実には570ミリグラム前後しかとっていない。これらを満たすための手っ取り早い方法は、日常、野菜と牛乳および乳製品、小魚を積極的に取るようにすればよいだろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2005.4.16 日経新聞