「日本料理はヘルシーだ」と言って、欧米人は注目している。ごはんを主食とし、野菜、海藻、大豆及びその加工品といった植物性の食品と魚介類を多食するので、欧米人に多い狭心症や心筋梗塞(こうそく)の予防につながると考えているからだ。

植物性食品は低エネルギーで、動脈硬化を促すコレステロールを含まず、さらに血中総コレステロール値の上昇を抑える成分がたくさん含まれている。大豆及びその加工品には大豆たんぱく質が、野菜、海藻には食物繊維が、魚介類には不飽和脂肪酸であるEPAとDHA、そしてタウリンが含まれている。

といっても短所もある。日本は、かつては漬物、みそ汁でごはんを大食するといった一汁一菜のパターンだった。そのため食塩の摂取量が増加し、高血圧、胃がんといった病気が多かった。だが、戦後、食の欧米化によって、適度に肉や卵、牛乳及びその加工品や油脂をとることでおのずと減塩され、同時にたんぱく質をしっかりとるようになった。その結果、脳の血管が丈夫になって脳出血を防ぎ、また免疫が高まり結核、肺炎などの感染症が減り、いまや世界有数の長寿国になった。

つまり日本料理の誇れるのは一汁一菜の食事ではなく、国の薦める日本型食生活に準じた一汁三菜の食事である。それはごはんを主食とし、汁もの、そして肉や魚介類、卵、大豆などのたんぱく質源が主菜で、野菜が中心の副菜、漬物や常備菜などの副副菜からなる。こうすれば栄養バランスがとれるし、肉や脂肪のとりすぎが押さえられるのでおのずと世界に冠たる長寿食になる。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.6.16 日本経済新聞