一日一膳心がけ


1998年、明石海峡大橋が開通し兵庫県の淡路島で暮らす子どもたちに「異変」起きた。本州と結ぶ橋ができたことで肥満児童が増えたのだ。

かつて淡路島にはコンビニが一軒もなかった。橋が架かりその後まもなくコンビニが島のあちこちにできるようになった。

現代人にとってコンビニが日常の生活を便利にしてくれる側面はもちろん否定できない。しかし、食の面からみると、コンビニで売られる弁当やインスタント食品類などは、塩分が多く高コレステロールでしかもカロリーが高い。野菜が少ないなど栄養バランスを欠くものが多い。

兵庫県では過去15年で肥満児童の割合が約1.5倍になった。食生活を調べてみると、朝食や夕食をコンビニ弁当やサンドイッチなどで済ます子どもが多い。明石大橋ができたことで、淡路島も例外ではなくなり、ある小学校は兵庫県下で3番目に肥満児童の割合が多かった。

先日、日本が少子高齢化世界一との報道があった。今の高齢者たちが長寿を謳歌(おうか)できているのは伝統的な日本食のおかげとも言える。ファストフードやコンビニ弁当に子どものころから慣れ親しむと、味覚が磨かれず日本食では物足りなくなる。命を削る食事をどんどん続けていくことになる。

肥満の子どもが増えるなど、食の乱れは生活習慣病の若年化を招く。生活習慣病の増加は短命化につながる。高齢社会を支える若い世代が不健康だと、日本の未来は心もとない。

「ヘルシーランチ計画」で1日1食だけでも塩分を控え、栄養バランスに配慮し、魚や大豆を積極的に取り入れてドコサヘキサエン酸(DHA)やイソフラボンをとれば、短期間で生活習慣病の元凶とも言える動脈硬化リスクを下げることが可能なことがわかった。

1日に1つ善行をし、それを積み重ねていけば仏様のところへいけるというのが「1日1膳」。体によい「食膳」を毎日とる「1日1膳」を心がければ健康長寿は実現する。
(武庫川女子国際健康開発研究所長  家森 幸男)

2006.7.9 日本経済新聞