高血圧や胃がんの危険度を高めるのは食塩(ナトリウム)の取り過ぎである。といっても、ただ食塩やしょうゆを減らそうとすると、料理が味気なくなったり、長続きしない。

そこで提案したいのは、トマトやその加工品を料理に使用することだ。洋食にはトマトを使った料理、スパゲティ、トマト煮、スープなどたくさんあるが、それほど食塩を使っていないのに、味は濃くおいしく食べられる。それはトマトが持つ酸味とうまみ、こくが働くからである。

トマトをよく味わってみると、強いうまみを感じる。それはグルタミン酸とアスパラギン酸といったうまみ成分がたくさん含まれているからである。トマトケチャップは、トマトジュースを約3倍に濃縮し、さらにタマネギやニンニクなどと一緒に加工されているので、より味が濃く、うまみとこくが出、栄養素も2倍くらいに増える。

トマトケチャップは真っ赤な色なので、着色料を使っているのではと思っている人がいる。だが、実はこれは抗酸化力の強いカロテノイドの一種のリコペンと呼ばれるものの色で、がんや動脈硬化をもたらす活性酸素を除去する働きが強い。これは加熱しても壊れず、また脂肪と一緒に使用すると吸収率が高まる。

トマトケチャップは調味料として広範囲に使用できる。例えばハンバーグやフライ、ロールキャベツにかけたりするとおいしい。トマトケチャップの食塩の含有量は大さじ1杯で約0.6グラム。これに比べて同量のウースターソースは約1.3グラム、しょうゆは約2.6グラムも含まれている。ケチャップを料理に大いに使ってみてはいかがだろうか。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2007.3.17 日本経済新聞