食品には3つの機能がある。それは、栄養素を供給する働き、おいしさをもたらす働き、生体を調節する働きである。つまりそれは、老化や生活習慣病を防いだりする働きである。

肉類はこの3つの働きを備えた食品だ。栄養素としては、主としてたんぱく質、脂質、ビタミンB類を供給する。おいしさとしては、グルタミン酸、イノシン酸のようなうまみ成分が含まれている。生体を調節する働きとしては、次のようなことが挙げられる。

第一は、肉類のたんぱく質は免疫を高める。免疫の働きの中で大きな役割を果たしているのはリンパ球だが、肉類の場合は、卵、乳類、魚介類、豆類などのたんぱく質と比べて、リンパ球の一種、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性を増加させる働きがある。NK細胞とは、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を排除するといわれている。

第二に、抗疲労作用がある。肉類を食べるとスタミナがでるとよくいわれるが、これは動物実験で証明されている。マウスに肉類のたんぱく質を与えたところ、他の食品のたんぱく質に比べて、バテずに長く泳いだという。

第三に、精神安定、催眠、鎮痛などの働きがある。脳にはこの働きをするセロトニンという物質があるが、これは肉類などに多く含まれるトリプトファンとよばれるアミノ酸からつくられる。

第四に、肉類などに多く含まれているアラキドン酸という必須脂肪酸は、幸福感をもたらすアナンダマイドという物質をつくる。肉類は誰もが好む食品だが、偏食や大食は生活習慣病の源、必ずたっぷりの野菜と一緒にバランスよくとろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)


 2006.10.28 日本経済新聞