ビタミン13種 働きを知る

水溶性…Cと8種のB群
毎日きちんと摂取を
脂溶性…A、D、E、K
吐き気など過剰症も

 ビタミンが足りないと、体が疲れやすく体調不良を招く。最近では不足分をサプリメントで補う人も少なくないが、種類によっては過剰摂取で体に悪影響を及ぼす可能性があることがわかってきた。健康維持にビタミンを正しく理解しておこう。

 ビタミンは体の中だけで必要量を作り出すことができず、食品から取らなければならない。世界で最初に発見されたのが玄米などに含まれるビタミンB1。明治時代に国民病として恐れられた脚気(かっけ)は、B1不足が原因だった。ビタミンは現在、全部で13種類あり、水に溶けやすい「水溶性」と脂に溶けやすい「脂溶性」に分類できる。
 ビタミンCなどの水溶性は煮物だと煮汁も飲み干さないと体内に十分取り込まれない。女子栄養大学・栄養クリニックの蒲池桂子准教授は「水溶性は必要量意外は尿で排出される。毎日摂取するようにしてほしい」と説明する。脂溶性は、油でいためるなど脂分と一緒に調理すれば吸収されやすい。

 食生活が偏ったり、高齢で食が細くなったりすると、ビタミン不足に陥り様々な欠乏症を引き起こす。例えば、ビタミンAだと夜盲症になる。
 がんや老化の原因とされる「活性酸素」への抗酸化作用で知られるビタミンC。厚生労働省の研究班は2月、男女約3万5千人を対象にした疫学調査を公表した。普段の食事から日本人の平均摂取量(1日約110ミリグラム)の約2倍取っている人は、約半分しか取っていない人より、白内障の発症率が約4割も低かった。ビタミンDに大腸などのがんを抑制する効果があることを示唆する報告もある

 ただ、サプリメントなどで大量摂取を続けるのは考え物。国立がんセンター研究所の津金昌一郎部長は「生活習慣病リスクを下げるという信頼性の高い研究は見当たらない」とくぎを刺す。種類によって過剰症を招くこともある。
 脂溶性は体にたまりやすく特に注意が必要。ビタミンAは皮膚や目の健康、免疫力を保つが、取りすぎで頭痛や吐き気、胎児異常などを引き起こすことがある。成人の摂取量の上限は1日3ミリグラムだ。
 ビタミンEや植物性のビタミンAであるベータカロテンにも抗酸化作用があるが、サプリメントで取りすぎると死亡率が高くなることが国内外の疫学調査でわかってきた。
 ビタミンCは水溶性で過剰症などの報告はないが、「過剰摂取で活性酸素を生み出す可能性がある(東京都老人総合研究所の石神昭人・主任研究員)との意見もある。
 サプリメントはあくまで食事の補助。普段の食事から幅広くビタミンを取ることを心がけたい。唯一例外とされるのが、葉酸。胎児の発育に必要な役割を担い、若い女性に不足すると妊娠したときに胎児の先天異常が起こりやすくなるため、サプリメントで必要量を補うのがよいと推奨されている。
(本田幸久)

ビタミンの働きと多く含む食材
脂溶性   
@ビタミンA
皮膚や目を健康に保ち、免疫力を守る。動物性食品に多いレチノールのほか、緑黄色野菜などに多く含まれる植物性のカロテン類(ベータカロテンなど)がある。カロテン類には抗酸化作用も   
鶏レバー、豚レバー、焼きのり、ウナギのかば焼き

AビタミンD
カルシウムの吸収を手助けし、骨や歯の形成を支える。子供で不足するとくる病、女性や高齢者で不足すると骨粗しょう症の原因に。魚介類やキノコ類に多い   
乾燥キクラゲ、アンコウの肝、シラス干し、イクラ、クロカジキ

BビタミンE
有害な活性酸素を取り除く抗酸化作用   
アーモンド、綿実油、サフラワー油、アンコウの肝、ピーナツ

CビタミンK
血液を凝固させて出欠を止める止血作用。緑黄色野菜や納豆などの発酵食品に多い   
わかめ、モロヘイヤ、納豆、あしたば、バジル、焼きのり

水溶性
DビタミンC
血管や皮膚を守るほか、活性酸素を取り除く抗酸化作用も。喫煙やストレスで失われやすい。野菜や果物に多い   
赤ピーマン、芽キャベツ、黄ピーマン、菜の花、レモン、カリフラワー

ビタミンB群
EビタミンB1
糖分をエネルギーへと変換するのに必要。不足すると疲れやすくなったり、イライラしたりする。玄米などに多いことで知られる   
豚ヒレ肉、いりごま、ボンレスハム、ウナギのかば焼き、タラコ

FビタミンB2
様々な栄養素がエネルギーに変わるのを助ける。乳製品や肉類などのほか、納豆や野菜にも幅広く含まれる   
豚レバー、牛レバー、鶏レバー、干ししいたけ、干しひじき

GビタミンB6
食事から体に必要なたんぱく質を再合成し、成長を促進する   
にんにく、ピスタチオ、ミナミマグロ赤身、牛レバー、カツオ

HビタミンB12
赤血球を作るのを手助けして貧血を予防。動物性食品に含まれる   
シジミ、赤貝、焼きのり、牛レバー、アサリ

Iパンテトン酸
脂質や等質、たんぱく質の代謝にかかわる   
鶏レバー、豚レバー、牛レバー、タラコ、納豆

Jナイアシン
エネルギー代謝やアルコール分解など。不足すると食欲減退などになる   
カツオ削り節、辛子めんたいこ、キハダマグロ、ピーナツ、干ししいたけ

K葉酸
赤血球の生産にかかわる。胎児や乳幼児の発育にも重要。緑黄色野菜に多い   
焼きのり、鶏レバー、牛レバー、ウニ、菜の花

Lビオチン
皮膚や毛髪を健康に保つ
卵、レバー、イワシ、ナッツ類、カリフラワー

 

2007.7.29 記事提供 日経新聞社