夏が肝心 ダニ対策

      
アレルギー予防に欠かせず
継続的に換気 布団に掃除機

 温度や湿度が高まる夏場はダニが増えやすい季節。人を刺すダニばかりではない。フンや死骸によって、ぜんそくなどアレルギー疾患の症状悪化や発症リスクを高める種類もある。家庭での対策をまとめた。

フンや死骸原因 
 「ダニというと刺されてかゆいイメージがあるが、それはツメダニによるもの」。室内のダニの生態に詳しい神奈川衛生研究所の微生物部環境生物グループ主任研究員の稲田貴嗣さんはこう話す。
 一方、フンや死骸がぜんそくなどの原因となるのはチリダニという種類だ。「今やアレルギー疾患はダニ抜きに語れないといっても過言ではない」。こう話すのは、日本アレルギー学会常務理事で国立病院機構相模原病院副院長の秋山一男さん。
 秋山さんによると、ダニのフンなどが主要な抗原(アレルゲン)となる割合は小児の気管支ぜんそくで8割以上、成人でも4割程度を占める。「通年性のアレルギー性鼻炎の抗原もダニが一番多く、アトピー性皮膚炎も関係を示すデータは多い」(秋山さん)。
アレルギー症状を悪化させたり、ツメダニに刺されたりするリスクを減らすうえで、家庭でのダニ対策が欠かせない。それはアレルギーがない人の発症予防にも役立つ。

湿度60%までに
 では何をしたらいいか。
 「こうしたダニは乾燥に弱く、チリダニはフケやアカをエサにして増える。まずは乾燥と掃除でダニ自体を増やさないこと」と稲田さん。秋以降に死骸などを増やさないように夏場からの対策が欠かせない。実は温度が10度以下だと増えないそうだが、室温はそこまで下がりにくい。このため「増殖速度を抑えられるので湿度はせめて60%までに」と稲田さんは助言する。
 
  湿度を下げるうえで大事なのが換気。住宅の換気に詳しい新潟大学大学院教授の赤林伸一さんは「大量に短時間換気をしてもダメ。少量でも継続すること」と強調する。
 改正建築基準法では、住宅などに24時間機械換気が義務づけられた。赤林さんは「改正法後の住宅なら、梅雨などを除き特に工夫は不要」として吸気口を閉じたり回転を止めたりしないよう注意を促す。それ以前の住宅は、換気口付きサッシなどを使うと防犯も配慮しやすいようだ。
 「換気口は2カ所以上開け、日中不在なら風呂場の換気扇を回す手も」と赤林さん。
 
  一方、室内空気環境などに詳しい千葉工業大学教授の小峯裕己さんは「夏場は外気がじめじめしていて、換気で湿度を下げにくい。閉めきってエアコンで除湿するのが効果的」とアドバイスする。
ダニは布団、畳、じゅうたんなどに潜り込むのを好む。特に寝具は、ダニが好む条件がそろっていてアレルゲンも増えがち。防ダニ加工をしたカバーなどを使う手もあるが、「アレルゲンは水溶性なので洗えば減らせる。できれば布団を年一度洗うといい」と稲田さんは勧める。
 もちろん布団を干して乾燥させることも大事。ここで忘れがちなのがベッドパッドだ。「本来は薄手で洗いやすくアレルゲンも減らしやすいが、調査すると干す頻度は布団より少なく汚染度が高まりがち」。花王ハウスホールド研究所の永井智さんはこう指摘する。ベッドパッドのケアも忘れないようにしたい。

 寝具のアレルゲンを減らすには布団を干した後、掃除機をかけた方がいい。その際は「隅の方まできちんとかけるのがコツ」と永井さん。体を横たえる中央部に注目しがちだが、ダニは寝返りなどの振動や衝撃に弱く、実は中央部より周辺部の方がアレルゲンが多いからだ。
 手早く終わらせたい掃除だが「吸い込み口の回転ブラシを効果的に使ううえで、ゴシゴシと押し付けないことや早く動かさないことがコツ」(松下電器産業)。じゅうたんは十文字がけを。掃除の効率化には、長い時間を過ごす寝室や居間などを念入りにするポイントを決めるといいようだ。

まずふき掃除を
 なお、「フローリングにもアレルゲンはある」(永井さん)ので、掃除機の排気などで空中に舞い上がらせないことも大事。「基本的に先にふき掃除をすると舞い上がりにくくなって効果的」(松下電器産業)という。
 最近はダニのアレルゲンを簡単に調べられるキットも出てきた。例えば、アサヒフードヘルスケアが通販する「ダニスキャン」(1160円)がそれ。調べた場所を採取器で1分間ほどこすり、薬剤を垂らすと15分後に汚染度が判定できる。
 ダニ対策は地道な積み重ねが大事。こうしたキットで実態をあぶり出し、掃除を効率的にする手もありそうだ。

ダニによるアレルギーを防ぐ主な対策
・湿度は最大でも60%までに
・夏場はエアコンの除湿運転が効果的
・効果的な換気は1階と2階など高さの違う窓を開ける方法も
・フローリングに掃除機をかける際は先にふき掃除を
・ハタキはアレルゲンを舞い上げるので使わない
・掃除機は吸い込み口をゴシゴシ押しつけず1往復に2〜3秒かけゆっくり動かす
・布団は干して乾燥させ、取り入れたら掃除機かけを
・布団を外に干せなければ乾燥機かイスを並べた上に置き風を通す
・洗濯できる寝具などは定期的に洗う
(注)稲田主任研究員、赤林教授、小峯教授、花王、松下電器産業の話より作成

2007.7.21 記事提供 日経新聞