梅雨 関節痛しのぐ

                   
エアコンはドライで
脚の体操やハトムギ薬膳が効果


 6月は、国内大半の地域が梅雨となる。しとしとと雨が降り蒸し暑いこの季節、年代を問わず関節の痛みを訴える人が増える。悩ましいこの関節痛を抑えるためには、独特の体操や食べ物の工夫が効果的だという。

 「梅雨から8月まで毎年、調子が悪い」。日本リウマチ学会の指導医である富士通川崎病院の行山康院長(内科)のもとには、例年こんな悩みが寄せられる。中には「雨が降り始める前から関節が痛み出すので『これから天気が悪くなる』とはっきりわかる」と話す女性もいる。

変形性関節症も
 「個人差はあるが、特に関節リウマチをもつ人は、そのくらい天候の影響を受けやすいものだ」と行山院長。関節リウマチは30−40代で発症しやすく、4対1で女性に多い。もっとも梅雨時の関節痛の原因はリウマチだけにとどまらない。変形性関節症や運動による酷使、骨折などの古傷が痛む――といったように、様々な原因がある。
 このうち圧倒的に多いのは背景に変形性ひざ関節症がある場合だ。東京女子医科大学東医療センターの井上和彦病院長(整形外科)は「ひざが痛む人の半数以上はこのケース」と指摘する。「ひざの寿命は65歳。特に若い時に運動をしていなかったせいで筋肉が少なく、肥満気味の女性は注意」だという。

  では、なぜ梅雨になると強く痛むのだろう。行山院長はメカニズムをこう説明する。私たちは自律神経によって、暑い・寒いなど外的環境に合わせた温度調節をしている。自立神経には同時に、関節痛のような「慢性的な内因性の痛み」を普段、感じにくくする働きもあると考えられる。ところが梅雨の季節は湿度が上がり、皮膚からの蒸散が妨げられて体内に熱がこもりがち。このため、自律神経は熱を発散させようと代謝を促す働きを活発化させ「痛みのコントロールにエネルギーを割くのが難しくなる」。

ネットに痛み予報
 梅雨時の痛みの対策として、行山院長は「湿度の高い環境を避けること」をすすめる。例えばエアコンをドライ運転にして除湿し、就寝時は風通しのいい部屋で布団を半掛けにして湿度をこもらせないようにしたりするといい。
 対策をとる上で参考になるのが、テルモがインターネットで提供している「テルモ健康天気予報」(http:/kenkotenki.jp/)だ。関節痛が発症しやすい気象条件を統計的に探り出し、それをもとに関節痛について「多い」「やや多い」「少ない」の3段階で1週先まで予測している。予報のほか痛む関節はサポーターによる保温も効果的、エアコンの冷機は直接当てないなどのひと言アドバイスもある。
 変形性ひざ関節症が原因で梅雨時に痛いみを感じる場合は、除湿などの対策だけでなく、日ごろから体操によって大腿(だいたい)四頭筋を鍛えておくことも大事だ。体操を採り入れれば「通院中の人でも8割はよくなる」(井上病院長)ので根気よく続けたい。
 
 食事で痛みの予防や改善をすることもできるという。「梅雨時は蒸し暑いのに汗がすっきり出ず、体の中の水分が多くなり過ぎ体内に滞りがち。関節痛に悩まない体質づくりには体内の水分の上手なコントロールが大事」。そう話すのは「薬膳ごはん 家庭でおいしい食養生」(NHK出版)の著者で薬膳研究家の正岡慧子さん。
 
 正岡さんは水分コントロールに便利な食材として、肺の呼吸作用を活発化させ、利尿作用が高いハトムギを挙げる。正岡さんによると東洋医学では関節痛は、「寒」「湿」などの原因や痛み方によって4種類に分かれる。ハトムギはそのすべてに有効なので、梅雨の間は食べ続けたい。
これらの対策はあくまで梅雨をより快適に過ごすためのもの。大元の原因を知るうえでは医療機関の受診が必要だろう。最も多い変形性ひざ関節症の場合「階段を下りる際にひざが痛んだら受診の目安」(井上病院長)だ。

ハトムギを薬膳で使うには
粒状のハトムギの場合
・土鍋や土瓶に入れ、たっぷりの水を加えてせんじ、その汁を飲む。関節痛では20−30グラムをせんじ、1日3回飲むとよい。
・100グラム程度を水に一晩漬け、水をきって蒸すと、チャーハンなどに便利。汁はわかして飲むか料理に使う
・漬け汁ごと鍋に移し、弱火で煮て水気を切り、冷蔵庫で保存。煮物、炒めもの、ギョーザなどに使える
製粉したハトムギの場合
・ビスケットやホットケーキに入れる
(正岡慧子さんの話より作成)

梅雨に入り先手 ひざの関節痛に効く体操
いすに座り、低い台にかかとを載せるように脚を持ち上げる
ひざを軽く伸ばし、10秒そのまま
※1回に20−30会ずつ行う、ひざの関節に痛みが出ている人は朝昼晩などに分けて、1日に100回以上が望ましい
※つま先を前下方に倒したり、ひざ側に反り返らせたりするとかえって負担をかけるので、さける
(東京所詩歌大学東医療センターの井上和彦病院長の話より作成)

 

2006.5.27 記事提供 日経新聞