光老化ノー

紫外線対策怠ると深いしわやシミ
日焼け止め 厚く
UV量に応じ服装調整

 紫外線の季節がいよいよ本番だ。この紫外線、単なる日焼けの原因になるだけならまだしも、将来にわたって回復が困難な深いしわ・シミを顔に刻み込む厄介な存在でもある。「光老化」と呼ばれるこの現象を少しでも減らすため紫外線との上手な付き合い方を知っておこう。

 2年ほど前から筆者は顔のシミが目立つようになってしまった。学生時代のテニスのせい?「そのとおり」と東京逓信病院皮膚科の江藤隆史部長。過去に浴びた紫外線に妊娠出産のストレスが加わり、シミとなるのだそうだ。

 紫外線が肌に与える急性のダメージが日焼け。一方、気付かぬうちにじわじわ進行する慢性の皮膚障害が光老化だ。皮膚がんも慢性のダメージだが、日本人は白人に比べ紫外線が原因の皮膚がんを発病するリスクは低い。
 では、もし人間が紫外線にまったく当たらずに過ごしたら?「肌にシミや深いしわは絶対にできない」と東京慈恵会医科大学の上出良一教授は断言する。過去に紫外線をたくさん浴びているから今さら何をしてもムダか、というと、そうでもない。現在浴びる紫外線がさらに刺激を与えるから、年齢を重ねてからでも紫外線対策をすれば被害を軽減できるという。

UV−Aが大敵
 まずは紫外線の特性を知っておきたい。地上に届く紫外線は、波長が短く日焼けさせる力が強いUV−Bと、波長が長く皮膚深く入り込むUV−Aに分類される。東海大学科学技術研究所の佐々木政子教授の観測(平塚市)によると、UV−Bは5月から増え始め7−8月にピークを迎える。一方、UV−Aの被害は残る。
 紫外線は空気中のチリなどにぶつかり四方八方に散乱する性質があるのも要注意。木陰でも下から上へ入り込んでくることがある。また、UV−Bはガラスでさえぎれるが、UV−Aはガラスも突破する。室内で日なたぼっこや車の運転中も肌に届く。
 具体的な対策としてはまず服装を考えよう。できるだけ肌の露出を避けるため、長袖・長ズボンがおすすめ。本当は黒い布の方が紫外線を吸収するが、「夏場は暑くて日射病が心配」(佐々木教授)なので、明るい色でOKだ。UVカット素材のほか、ポリエステルは紫外線をさえぎる性質がある。綿は紫外線を通しやすいが、織りが蜜ででこぼこしている布地なら紫外線を肌まで通しにくい。手先はUV手袋でカバー。さらにサングラスで目も守ろう。
 帽子は広いつばが周囲にぐるりとついているタイプがいい。日傘も使えば日射病も防げる。ただし建物や路面に当たって反射・散乱する紫外線には帽子も日傘も無力。そこで大いに活用したいのが日焼け止め剤だ。「日焼け止めは確実に効果が得られる唯一の化粧品」(上出教授)と専門家が太鼓判を押すほどだ。
真珠粒2つ分
ポイントは塗り方。たいていの人は「塗る量が少なすぎる」(江藤部長)。顔の表面に対し直径8ミリ−1センチの「大き目の真珠粒2つ分が目安」(ロート製薬)。これより少ないと効果は激減する。日中は3時間おきに塗り直そう。
 女性は化粧前に日焼け止めを使うことが多く、顔に塗りなおすのは難しい。上出教授は「朝、2度塗りしておくといい」と勧める。耳や首、胸元もしっかり塗ろう。最近はUV−Aをカットする力が強いタイプが登場するなど、日焼け止め剤の性能も向上した。敏感肌の場合はノンケミカル表示があるものがいい。

  毎日の紫外線の強さは気象庁が発表しているUVインデックスを見よう(表参照)。環境省「紫外線保健指導マニュアル」は紫外線との上手な付き合い方を知る上で参考になる。40代、50代と年齢を重ねるほど、紫外線によるトラブルは増える。「子どものうちから紫外線について教えておくことが大切」と専門家は口をそろえていた。
(ライター  藤原 仁美)

UVインデックス
(注)環境省「紫外線保健指導マニュアル」に記された世界保健機関の基準による
1〜2:弱い  安心して戸外で過ごせる
3〜5:中程度 日中はできるだけ日陰を利用。できるだけ長袖シャツ、日焼け止め、防止を
6〜7:強い  日中はできるだけ日陰を利用。できるだけ長袖シャツ、日焼け止め、防止を
8〜10:非常に強い  日中の外出はできるだけ控える。必ず長袖シャツ、日焼け止め、防止を
11+:極端に強い

(注)気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp)で毎日の数値を発表。

2006.5.20 記事提供  日経新聞