急増する熱中症

水分・塩分不足でも

東京や大阪などの大都市は人や車、オフィスなどが集中するため、中心部ほど気温が高くなる「ヒートアイランド現象」が起きる。近年は地球温暖化の影響もあって大都市の夏は耐え難い暑さになっている。そんな中で急増しているのが熱中症である。昔は暑気あたり、あるいは日射病と言われていた。

人間の体温は常に37度前後に保たれるように、体の機能が働いている。暑い時には皮膚の表面に血液を集め、外気への伝導や放射で熱を逃がそうとする、また、汗をかいて蒸発する時の気化熱で体を冷やし、体温を保つ。

しかし、気温が非常に高い日や湿度が高くて汗が蒸発しにくい場合は、体からの放熱が追いつかず体温が上がる。やがて体温調節機能が破綻して、様々な機能障害が起きてしまう。これが熱中症である。激しい運動をしている場合には気温があまり高くなくても熱中症になることがある。

熱中症は水分と塩分(ナトリウム)の不足によってもおきる。大量の汗をかいた時、汗とともに体内のナトリウムが排出される。体内のナトリウム濃度が下がると脳は水分を減らして濃度を上げようとしてさらに汗をかくように指令を出す。このため、十分な水分と同時に適度な塩分を補給しないと脱水症状を起こしてしまう。

熱中症の初期症状はめまいや立ちくらみ、筋肉のけいれんや硬直である。このような症状があったら直ちに涼しい日陰で衣服をゆるめ、水分補給をする。さらに、冷たいタオルで体をふく、あるいは体に水をかけてうちわなどで風を送り体温を下げるとよい。

熱中症が進行すると頭痛や吐き気、虚脱感などの症状が見られる。重度になると意識障害、全身のけいれん、手足の運動障害、40度を越える高体温などの症状が現れ、生命の危険がある。

熱中症は暑い時期に集中して発生するが、梅雨の中休みや梅雨明け直後など暑さに慣れていない時期が特に危険である。暑い時に体調不良を感じたら、熱中症を疑ってほしい。
(気象業務支援センター専任主任技師  村山 貢司)

2008.7.6 提供 日経新聞