冷え症 足湯で改善

手軽に全身温まる
リラックス効果も

冷え症に悩む人にとって、寒くなってくるこれからの季節はつらい。ひざから下を湯につける足湯をやると、約15分で汗がじわっとでてくるほど全身が温まる。衣服を脱ぐなどの手間がかからず、自宅でも簡単にできる。

秋晴れの10月末、東京お台場にある天然温泉「大江戸温泉物語」内の日本庭園では、若いカップルや女性グループが小川の川べりに腰をかけ、流れる温泉の湯に足を入れくつろいでいた。「初めて来たけれど、足が楽になり気持ちがいい」と、都内に勤める女性(27)はリラックスして話す。普段は立ち仕事が多く足の疲れがたまっているという。

別の女性(31)は「温泉に来ると足湯に入る」。この日は静岡県から遊びに来た母親(56)と一緒に来た。冷え症で普段からストッキングやタイツで防寒をしているが、しばらく足湯につかったあとは「体の中も温まった」とにっこり。

温泉医学が専門の鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンターの川平和美教授は「足湯には全身浴と同様、体全体を温める効果がある」と説明する。足はもともと血管が細く血液が流れにくいが温めると血管が開き血流がよくなる。心臓に戻った血液は全身に送り出され、体温が上昇する。
特に女性では足腰といった下半身が冷えやすいが、足湯では足から近い骨盤内部も効果的に温まるという。

直接、湯に触れる足の皮膚の温度が上昇するだけでなく、体温が約0.4度上がる。約1度上がるといわれる全身浴に比べればやや劣るが、冬の季節でも温かさを感じるには十分。風邪等で体調を崩している時や高血圧症の人でも体に余分な負担をかけずにできる。鳥取大学医学部の西村正広助教授(健康科学)は、「血圧や心拍数を上げず、体をリラックスさせてくれる」と語る。

西村助教らは、学生8人に25度から45度まで5度刻みに5段階の湯に15分間くるぶしまで足をつけてもらい、体調がどう変化するか調べた。実験前後で心拍数や血圧はほとんど変わらないにもかかわらず、心臓付近の自律神経の変化の測定から、副交感神経の働きがよくなり交感神経より優位になることがわかった。リラックス効果は37−41度で最も顕著だったという。

全身浴だと湯の温度だけでなく水圧による影響も加わり、どうしても血圧が上昇してしまう。温度が熱めだと交感神経が興奮しやすくなる。体が冷え切っているからといって、高血圧症や高齢者は長時間、湯船につかっているわけにはいかない。

冷えに悩む女性は3分の1ともいわれる。男性に比べ女性に多いのはどうしてだろうか。

冷えに詳しい東京女子医科大学付属青山自然医療研究所クリニック(東京・港)の川嶋朗所長は「女性は脂肪が多いので体温が低くなりがち。また血液の流れが悪いと冷えやすくなる」と解説する。
体の熱は主に血流が多く代謝が活発な筋肉で作られるため、もともと熱を作りにくい体質の人が女性に多い。また、生理前症候群など体の変化が定期的にあり、冷えを自覚しやすい。

肌を露出するファッションの流行や食生活の乱れなどが原因となり「最近は冷えに悩む女性が増えている」(川嶋所長)。ストレスや更年期障害などで自律神経が乱れても、血行が悪くなり冷えを招きやすくなるという。

自宅で足湯をやる場合には、専用の家電製品も1万−4万円程度を中心に販売されている。保温だけでなくジェット噴流が出るものもある。ただ、高価な専用機器を買わなくても、バケツや洗面器で代用可能。西村教授が提案するのが、大きさの違う2つの容器を使った方法だ。

まず、バケツなどの大きめの容器の中にやや小さめの容器を入れる。内側の容器には40度の湯を、水位がくるぶしからひざ下になるように入れ、外側には熱めの湯を入れる。こうすると湯は冷めにくい。内側の容器に足を入れ、42度の場合は約15分、40度であればそれより長めに足をつける。西村教授は「足が温まると寝付きがよくなり。なかなか眠れないときにやってみてほしい」と勧めている。

自宅で足湯の方法
2つの容器を使う
内側の容器に40−42度湯をくるぶしからひざ下まで入れる
外側の熱が足に直接伝わらないように足よりも大き目の容器を使う
発砲スチロールを使う
発砲スチロールの容器を使うと保温効果がよくなる
(西村助教の話を基に作成)


2007.11.3 記事提供 日経新聞社