アレルギーも治せる!!

第21回日本アレルギー学会春季臨床大会より
ピーナッツアレルギーも食べて治る?
急速特異的経口耐性誘導療法で5人中4人が継続摂取可能に

食物アレルギーの患者に対し、原因食物を食べさせて耐性を誘導する特異的経口耐性誘導療法(SOTI)の研究が、国内で活発化している。6月4日から岐阜県で開催されている第21回日本アレルギー学会春季臨床大会では、鶏卵や牛乳など、さまざまな食物アレルギーに対するSOTIの成果が発表された。

 中でも、注目されたのがピーナッツアレルギーに対するSOTIだ。ピーナッツアレルギーは食物アレルギーの中でも症状が重く、患者の多い欧米では特に治療法が求められている。ピーナッツアレルギーに対するSOTIについては、世界でもこれまであまり報告がなかった。

 神奈川県立こども医療センターアレルギー科の栗原和幸氏(同科部長)、伊藤直香氏(写真、4月から東大医科学研究所炎症免疫学分野に所属)らの研究グループは、6歳以上の重度のピーナッツアレルギーの患者を対象に、患者を入院させて比較的短期間に摂取量を増やす急速特異的経口耐性誘導療法(rush SOTI)の臨床研究を実施した。

 まず、炒りピーナッツの粉末を使い、二重盲検負荷試験で症状が出る閾値を判定した。その後、閾値の10分の1の量から、1日5回を目標に漸増しながらピーナッツを摂取。腹痛の訴えや何らかの症状が出た場合には、摂取量を一旦減らすなどし、増量が不可能または摂取量が10粒(7g)に達した時点で退院とした。退院後は、週2回以上維持量の摂取を継続した。

 臨床研究に参加したのは5人の男児で、平均年齢は8歳7カ月。閾値の平均は0.026gで、平均16日間で全員がピーナッツ10粒を摂取できるようになった。ただし治療中、全例で呼吸器症状や蕁麻疹など比較的重度の症状が認められ、必要に応じて気管支拡張薬、経口ステロイドの投与、抗ヒスタミン薬の予防投与を行った。エピネフリン(商品名エピペン)の使用はなかった。

 既に以前、卵アレルギーの患児を対象にrush SOTIを実施したことのある伊藤氏は、「ピーナッツアレルギーは、卵アレルギーと比べ、治療中の症状の発現頻度や重症度が高い印象だ」と話した。

 5人の男児のうち1人は、退院後2週以内にピーナッツ摂取後に嘔吐し、家族の判断で維持を中止した。しかし、そのほかの男児については、維持量が不十分な例や間欠的に症状が出現する例があるものの、基本的に維持を続けており、ピーナッツアレルギーに対するrush SOTIの一定の有用性が示された。

 とはいえ、現状のSOTIはどれも研究段階。伊藤氏らの臨床研究も安全性が確立されたものではなく、入院の上、医師が付きっきりで行っている。伊藤氏らは今後、卵アレルギーなどでSOTIの大規模臨床研究を実施する計画を立てている。実現すれば、プロトコルの統一や安全性の確立など、SOTIの実用化に向けて一歩前進することになりそうだ。
久保田文


2009.6.5 提供 日経メディカルオンライン