ウーロン茶、プーアール茶・・・で解明
体脂肪の燃焼を促す

ウーロン茶やプーアール茶など、いわゆる中国茶が人気を集めている。「何となく健康によさそう」というイメージで飲んでいる人も多いが、最近の医学的な研究で、体脂肪の燃焼を促進する効果が確かめられた。体脂肪が気になる人にとってうれしいニュースだ。

ウーロン茶を飲むだけで健康の大敵といえる体脂肪を減らせるとしたら、こんなお手軽なダイエット法はない。このことを検証したのが、徳島大学医学部の山本茂教授。「毎日飲めば、少しずつですが、確実に体脂肪が燃えます」

健康な女子大学生9人に、市販と同じ濃さのウーロン茶と水を、毎朝300ミリリットルずつ飲んでもらう実験をした。すると、ウーロン茶を飲んだ時は水を飲んだ時に比べ、体が消費するエネルギー(基礎代謝)が、飲用後数時間にわたって明らかに増えていた。消費エネルギーの増加は1日あたり40キロカロリー、これは速足で約6分間歩く時の消費量に相当する。毎日300ミリリットルずつウーロン茶を飲み続ければ、1年間に体脂肪が2キログラム減る計算になるという。

ウーロン茶を飲むと基礎代謝が増えるのは、「交感神経を活発にするホルモンの分泌量が増えるため」と山本教授。このホルモンはエピネフリンと呼ばれ、体に蓄積されている脂肪の燃焼を促進する作用がある。ウーロン茶にはカフェインとポリフェノールとが含まれるが、カフェインはエピネフリンの分泌量を増やし、ポリフェノールはエピネフリンが分解されるのを抑制する。両者の相乗効果により、エピネフリンの体内濃度を高めて、体脂肪の燃焼を促している。

主な中国茶

●ウーロン茶(青茶)
カメリア・シネンシスの若芽をもんで30〜70%発酵させた葉のお茶(半発酵茶)

●プーアル茶(黒茶)
緑茶葉にこうじ菌を繁殖させ、長期間発酵させた「後発酵茶」。こうじ菌が作る脂肪分解酵素や消化酵素が豊富
●羅布麻茶(ラフマ)茶
シルクロードに自生するキョウチクトウ科植物の葉が原料。燕龍(ヤンロン)茶とも。フラボノイドやミネラルが豊富
●杜仲(トチュウ)
四川省原産の落葉樹の葉が原料。杜仲配糖体が副交感神経を刺激し、血圧を下げる。ミネラル豊富、ストレス緩和効果も
●苦丁(クーデン)茶
雲南省に多いモクセイ科植物の葉が原料。アクチオサイドなど抗酸化ポリフェノール成分を含む
●黄杞(コウキ)
広東省、広西壮族自治区などの山中に自生するクルミ科常緑高木の葉が原料。弱い甘みがある

ダイエット効果の高い中国茶の成分

1.カフェイン
体脂肪の燃焼を促進するノルアドレナリンの放出を高める

2.ポリフェノール
ノルアドレナリンの分解を抑制し、体脂肪の燃焼を促進する
3.重合カテキン
脂肪の吸収を阻害し、食後の血中中性脂肪の上昇を抑える


実は、ウーロン茶と日本の緑茶は、茶葉の種類は同じ(カメリア・シネンシス)だ。ウーロン茶は摘んだ後、しばらく置いて自然に発酵させることが違う。ポリフェノールは発酵により、効果のさらに高い形に変わるので、ウーロン茶のほうがダイエット効果が高いとみられている

プーアール茶もダイエット効果が確認されている。プーアール茶はこうじ菌を茶葉に混ぜてウーロン茶より長く発酵させており、「後発酵茶」と呼ばれる。後発酵茶では、長時間の発酵により、食べたものの中に含まれる脂肪分を体が吸収するのを阻害する成分が増えるという。

京都大学大学院人間・環境学研究科の森谷敏夫教授とサントリーが共同で、この脂肪吸収阻害効果を確認している。ケーキと一緒に後発酵茶を飲んでもらい、血液中の中性脂肪濃度を測ると、中性脂肪値の上昇が抑制されたことがわかった。茶の苦み成分でもあるカテキンが後発酵によって重合カテキンに変わり、それが脂肪吸収を抑制するとみられている。

緑茶や紅茶、コーヒーもカフェインなどを含み、体脂肪を燃焼させる効果がある。これらと比べ中国茶の効果はどのくらい高いのか、実際の優劣はまだわかっていない。ただ、中国茶などは基本的に砂糖を含まないカロリーゼロの飲料なので、毎日飲むなら、中国茶が安心と言えるだろう。

コンビニなどで売っているペットボトル入りでもいいが、自宅でくつろぎながら中国茶をいれて楽しむのもいい。その場合は、できるだけ高温のお湯で入れると良い。ポリフェノールなど有効成分が茶葉から多くしみ出してくるからだ。まず、茶わんや急須(きゅうす)を熱湯で十分に温めておく。茶葉を入れた急須に熱湯をいっぱいに入れてフタを閉め、その上からさらに熱湯をかける。

なお、中国茶に含まれるカフェインで眠れなくなったり、心拍数が上がることを心配する人は、カフェインを含まない中国茶を楽しみたい。杜仲(とちゅう)茶、羅布麻(らふま)茶、苦丁(クーデン)茶などがある。(『日経ヘルス』編集部)

(2001.3.31 日本経済新聞)