若くなくても?
若年女性の喫煙は脳卒中リスクを高める

タバコの喫煙数と虚血性脳卒中リスクとの間に用量反応関係があることが研究でみつかった Allison Gandey

【8月20日】若年の女性はタバコをたくさん吸うほど、脳卒中のリスクが高まることが最新の研究で判った。

『Stroke』8月14日号オンライン版において、タバコ喫煙数と虚血性脳卒中との間に用量反応関係があることが示された。

「喫煙で体内に導入される毒性物質はおよそ400種類あり、それが健康に悪いことは直感的に分かる」と第2著者であるメリーランド大学(ボルチモア)のJohn Cole, MDはMedscape Neurology & Neurosurgeryに語った。「しかし今回の我々の研究で、さらに強いエビデンスが得られた。」

「若年女性脳卒中予防研究」の一環として行われたこの研究は、15歳から49歳までの女性における虚血性脳卒中のリスク因子に関する地域住民ケースコントロール研究である。

この研究の対象となったのは、ボルチモア?ワシントン大都市圏の脳卒中女性患者466例と、対照者604例(非脳卒中女性)で、無作為番号の電話で特定した。

現喫煙者と喫煙経験のない者とを比較したオッズ比は多変量で補正後で2.6だった(P < 0.0001)。ロジスティック回帰モデルでオッズ比を算出してみると、補正後オッズ比は1日あたりの喫煙本数が多いほど高くなった。

表.1日あたりの喫煙本数による虚血性脳卒中のオッズ比

1日あたりの喫煙本数 オッズ比 95%信頼区間

P値

1-10本
2.2
1.5-3.3
<.0001
11-20本
2.5
1.6-3.8
<.0001
21-39本
4.3
1.8-10
.0009
40本以上
9.1
3.2-26
<.0001

*比較対象は非喫煙者

この研究グループのリーダーで、自身もメリーランド大学のViveca Bhat, MDによれば、前喫煙者と非喫煙者とでは脳卒中に差がなかった。Cole博士はMedscape Neurology & Neurosurgeryに対して、喫煙を止めた者は一般的に禁煙から2.5年以内にリスクが元の状態に戻ると語った。「これは前喫煙者にとっては良い報せだ」と博士は言う。

喫煙歴などの今回の研究のデータは、標準化質問表を用いて採取した。この研究は後ろ向きのデザインなので、想起バイアスが含まれる可能性があると研究グループは指摘している。「血清コチニン濃度といった喫煙曝露の客観的マーカーは利用できなかった」と著者らは記している。またこの研究では、アルコール摂取量や運動量といった因子についても対照が採られていない。

しかし同時に研究グループは、今回の研究は若年女性の早期発症脳卒中の研究としては最大級のもののひとつであるとも述べ、この大規模な標本サイズのおかげで比較的精度の高い用量反応関係の推定が可能になったと主張している。

被験者集団は民族的に多様であった。著者らによれば、「今回の研究では、症例群と対照群の両方で喫煙者の黒人が多くいた(被験者集団のほぼ半数)。これは、この集団において喫煙が軽く見られがちな公衆衛生上の問題であることを強く示している。

Bhat博士らのチームは、今回の研究によって若年女性の脳血管疾患の予防可能・改変可能なリスク因子として喫煙に対する取り組みが必要であることが支持されたと結論で述べている。禁煙、断煙、減煙を促進する大規模な公衆衛生キャンペーンが必要だと研究チームは提唱している。

Cole博士は取材のなかで、タバコを止めることが健康にとっていいことを知っていても人々はなかなかタバコを止められないことを認めている。「私はいつも、患者にタバコを減らすことから始めるようにと勧めている」と博士は言う。「最初の2週間でタバコの本数をそれまで吸っていた本数の半分になるようにさせている。」

日常習慣を変え、新しい活動を開始することを人々に勧めていると博士は言う。「患者がコーヒーを飲んだり新聞を読んだりしている時にいつもタバコを吸うようならば、渇望感を紛らわせられる何か他のものを探すように勧めるようにしている」と博士は言う。「散歩に出るとか、早めに出勤するとか、なにか違うことを試しなさい。」

患者が禁煙までもう一歩の本数(1日に5本から10本)にまで減らせたなら、薬物やニコチンサプリメントが習慣の名残を抑えるのに役立つと博士は言っている。

禁煙はすべての年齢の男女にとって重要かつ即効的な健康へのベネフィットだが、このベネフィットはタバコを止める年齢が若ければ若いほど大きくなると著者らは記している。著者らによれば、35歳までにタバコを止めた者の余命は非喫煙者と同じ程度である。

著者らの開示情報に、関連する金銭的利害関係はない。

Stroke. Published online August 14, 2008.


2008.8.20 記事提供 Medscape