油の摂取バランス大事

アレルギー抑制に期待
n3系、n6系・・・主に4つの成分

油というと、健康やダイエットの大敵というイメージを持つ人が多い。しかし、実は油は体内で重要な役割を果たしており、正しく適量を摂取すれば、体調や体質の改善に役立つこともわかっている。知られざる油の働きと、体長改善に役立つ油のとり方をまとめた。

油は単なるカロリー源と思われがち。実際、とり過ぎるとカロリーオーバーになりやすく、肥満や生活習慣病を引き起こすため、「できるだけとらないほうがいい」と思い込んでいる人も少なくないはずだ。

しかし本来、油は健康の維持に欠かせない栄養素。「体内で生理活性物質を作るほか、細胞膜の原料になり、細胞の中と外の栄養素のやり取りをスムーズにして代謝を良くする。赤血球でも細胞膜を軟らかく保つことで血流を正常にする働きがある」。お茶の水女子大学理学部の小林哲幸教授はこう説明する。

こうした油本来の働きを高めるには、体内にある油の種類のバランスがとれていることが大前提。そのためには、「とり過ぎ」を防ぐだけではなく、とり方そのものにも気をつける必要がある。

青魚もしっかり
実は、油は単一成分ではなく、「n3系脂肪酸」「n6系脂肪酸」「オレイン酸」「飽和脂肪酸」など大きく4つの脂肪酸の集合体。油の種類によって、この4つの割合がそれぞれ異なる。

特に意識したいのが「n6系」と「n3系」の摂取バランスだ。n6系はいため物や揚げ物などの加熱調理に使われるゴマ油やコーン油といった多くの植物性油の主成分で、n3系はサンマやサバといった青魚に多く含まれる。どちらも人間の体内では合成できず、必ず食事で摂取しなければならない必須脂肪酸なのだが、両者は細胞膜の同じ場所を奪い合う性質があるため、片方を多くとり過ぎると、もう片方が追い出されて、バランスを崩しやすい。

金城学院大学薬学部の奥山治美教授によると、花粉症やアトピー性皮膚炎を患う人が増えているのは、n6系とn3系のバランスの乱れと無関係ではないという。n6系が原料になり、アレルギーと関連する生理活性物質が作られるからだ。

逆に、アトピー性皮膚炎の患者がn6系とn3系のバランスを改善すると、症状が軽くなることも、奥山教授らが行った臨床試験で確認されている。アレルギーに悩んでいる人は、さっそく油のバランス改善に取り組もう。

n6系とn3系は、4対1のバランスでとるのがいいとされるが、「魚をろくに食べず、脂っこいものを食べる頻度の高い人は最大で7対1になっているケースも。現代人の多くは、総じてn6系が過剰で、n3系が不足しがち」と奥山教授は指摘する。

上手に使い分け
n6系を減らすには、まず、調理に使う油の見直しから。n6系が豊富な油を使い過ぎないように注意し、代わりにオレイン酸が豊富なオリーブ油や「高オレイン酸」と表示のある油を用いるのも一案だ。また、外食で使われている油の多くはn6系が豊富な油なので、外食では油の少ない和定食などを選ぼう。

n3系を増やすのに手っとり早いのは、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を豊富に含むサンマやサバなどの青魚を積極的に食べること。また、αリノレン酸が豊富なロースト亜麻仁をゴマ代わりに使うのもおすすめ。亜麻仁とは亜麻という植物の種のこと。クセもないため、どんな料理にも合わせやすい。

さらに、この亜麻仁から作られた亜麻仁油やエゴマの種子から作られたエゴマ油を調理用油に使う手も。どちらもn3系が豊富な調理用油だが、酸化しやすく加熱調理には向きにくいので、ドレッシングに加えるなど、加熱せずにそのまま用いるといい。

ちなみに、n3系には「他の脂肪酸よりも優先的に燃焼されやすく、皮下脂肪として蓄積されにくいという特徴がある」(奥山教授)。つまり、n3系を増やすことは太りにくい体を手に入れるためにも有効、というわけだ。

「n6系とn3系のバランスを意識した食生活を数年間続けると、必ず体が変わるのを実感できるはず。ぜひ、じっくりと腰を据えて取り組んでほしい」と奥山教授は話す。
(日経ヘルス編集部)

油には含まれる主に4つの成分がある
油に含まれる主な脂肪酸

◎n3系脂肪酸(DHA,EPA,αリノシン酸など)

DHAやEPAはサンマやサバなどの青魚やマグロのトロの脂に多い。αリノレン酸はエゴマり種子や亜麻の種子(亜麻仁)、クルミなどの油に豊富に含まれる。必須脂肪酸だが、若い世代では不足しがち

◎n6系脂肪酸(リノール酸など)

大豆油、コーン油、紅花油(高いリノール酸)など調理で使う植物油に多い。必須脂肪酸だが、現代人の多くはとり過ぎの傾向。意識して減らしたい。

◎オレイン酸

オリーブ油、菜種油などに多い。体内で合成できるので、必ずしも食事でとらなくてもいい成分。n3系、n6系のバランスに影響を与えないため、加熱調理に用いるといい

◎飽和脂肪酸
 (パルミチン酸・ステアリン酸など)

肉類やバター、牛乳、チーズなどの乳製品に豊富に含まれている。体内で合成できるりので、必ずしも食事でとらなくてもいい成分

 

主な調理油と、脂肪酸の内訳
主な調理用油と、脂肪酸の内訳



2008.3.1記事提供 日本経済新聞