日本料理は和食ともいわれる。海外では代表的な日本料理として、すしやてんぷらなどが注目されている。ところが、伝統的な日本料理は何かと聞かれると、どうもすっきりした答えが出てこない。すしにしてもてんぷらにしても、その起源をたどると外来のものだからである。

肉じゃがや牛丼、すき焼きにしても、おおっぴらに食べられるようになったのは、明治維新以降のこと。かつては肉をとることは「薬ぐい」といわれていたくらいだから、伝統的日本料理とはいいにくい。とんかつ、コロッケ、ラーメンの類になると、海外の料理が日本化されたものである。最近はやりの和風ステーキ、たらこスパゲティなどは明白だ。日本料理はシンプルで淡白なので、海外の料理と融合しやすいといわれる。

それでは日本料理とは、どう考えたらよいのだろうか。日本は島国で世界に類を見ないおいしい水と気候風土に恵まれているため、あまり手を加えず、素材の持ち味を引き立てる技術が向上した。その結果、日本料理は包丁の冴(さ)え、器との調和、盛り付けなどの美しさ、つまり、見て楽しみ旬を味わう料理に発展したのである。

食材は一般に米、野菜、豆類などの農作物、魚介、海藻といった海産物が用いられる。だし汁には、昆布、かつお節などが使われる。調味料としては、しょうゆやみそが用いられ、香辛料などはあまり使わない。どちらかというと低脂肪、高塩分であり、特に海産物を生食するのが大きな特徴である。

日本料理は、外来の食文化を受けながら食材を選び、風土に合わせて定着してきたもののようだ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.6.9 日本経済新聞