飛散の2週前に薬服用 点鼻薬なども併用して

花粉症のシーズンが近づいてきた。鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こすスギ花粉の前線は、2月初旬から順次、九州から全国へと北上を始める。症状を緩和する上で最大のポイントは、本格的な飛散が始まる前に薬を飲み始めるなどの予防策だ。1カ月前からの直前対策をまとめてみた。

花粉症の季節近づく

「スギ、ヒノキなどの花粉飛散量は今春、昨年の猛暑のためほぼ全国的に平年の水準を上回る」と語るのは日本気象協会の堀口貴司・気象予報士。

同協会によると、東海以西では、昨春は飛散量が平年の2〜7割にとどまったが、今春は一転して多くの地域で大量 飛散に見舞われそう。関東以東も一部地域で昨年の飛散量を下回るものの、平年水準は2年連続で上回ることになりそうだ。毎年かかる人だけでなく、新たに発症する人が増える恐れもある。

それでも、本格シーズンが到来する前にきちんと手を打てば症状はかなり抑えられる。対策の基本は、まず耳鼻いんこう科などでアレルギー源のチェックを受け、スギなどの花粉が原因であることを特定しておく。そのうえで適切な抗アレルギー薬の処方を受けて早めに使い始めることだ。

花粉の平年の飛散時期はおおよそ左図の通 り。関東地方なら、2月中旬に小さなヤマがきた後、2月下旬から3月初めにピークを迎え、4月初めまでに飛散がほぼ終わる。暖冬であれば、平年より若干早く飛び始める。関東地方を例にとると、飛散が始まる2週間ほど前の1月中から薬を使い始めるのが効果 的だ。

体内にあってアレルギーの原因になるヒスタミンの働きを抑える抗アレルギー薬を、予防的に使用しておくことで、ピーク時の炎症の程度を軽くできる。こうした抗ヒスタミン剤には内服タイプのほか、点眼薬、点鼻薬など様々な種類がある。内服型には眠気を催すなど副作用をもたらすものもあるので、医師と相談しながら体質や生活習慣に合った薬を見つけておくのがよい。

日本臨床アレルギー研究所の奥田稔顧問(日本医科歯科大名誉教授)は、「最悪なのは無防備にピークを迎えてしまうこと」と指摘。さらに、「せっかく最初の小さなヤマを乗り切っても、そこで薬の服用をやめてしまっては肝心のピーク時に症状を抑えられない」と注意を促す。シーズン中は、医師の指示に従って薬を続けることが大切だ。

ただ、抗ヒスタミン薬も花粉症の症状を完全に撃退できるわけではない。症状が悪化しやすい花粉飛散ピーク時には、ステロイド剤の点鼻薬や点眼薬を併用して炎症を抑えるのがよい。

最近若い女性を中心に、鼻や目、のどだけでなく、スギ花粉皮膚炎と呼ばれる皮膚の炎症の報告も増えている。目の周りや首が赤くはれて激しいかゆみを伴う。90年に症例を報告した1人、横関博雄・東京医科歯科大助教授は「小さな傷からスギ花粉の抗原が皮膚に入り込み、湿しん反応を起こすことが原因と考えられる」という。

アトピー性皮膚炎の患者や、シャンプーの使い過ぎで皮膚がかさかさになった人が要注意。対策としては、外出や洗髪前に保湿剤を塗っておき、花粉が皮膚を通 過しにくくする。花粉症の人がこの時期に皮膚がかゆいと感じたら、化粧かぶれなどと思い込まず、皮膚科に相談したほうが良い。

スギ花粉症の発見者である神尾記念病院(東京・千代田)の斎藤洋三顧問は「入試や転勤を控えている人などは、早めに医師にかかったほうが良い」と、予防の大切さを説いている。

(2001.1.13日本経済新聞)