ブラシで舌苔除去
歯のすき間念入りに


なかなか自分ではわからないが、気になる口臭。口のにおいは誰にでもあるので気にしすぎる必要はないが、日々のケアで軽くすることはできる。どんなとき、口臭は強くなるのだろうか。効果的な予防法とは。

東京・新橋にある志村デンタルクリニックでは昨冬、「オーラルクロマ」という口臭測定器を導入した。口の中の空気を採取し、十分弱で口臭のもととなるガスがどれだけ含まれているか数値をはじき出す。同クリニックでは口の中が乾いてしまうドライマウスの女性専用外来を実施しており、症状の1つである口臭を気にしてやってくる女性もいる。「においは感覚的なもの。単に気のせいだとデータからわかることもある」と志村真理子医師は話す。

一口に口臭といっても原因はいくつかに分かれる。「強い口臭は歯周病からくることが多い」と指摘するのは歯科大の八重垣健教授。日本では30代以降の約8割の人が歯周病を患っているといわれている。胃腸の調子が悪いと口臭が出やすいという話も聞くが、「胃が原因のケースは実際にはほとんどない」という。

歯周病になるとなぜ口臭が発生するのか。ライオン歯科衛生研究所研究部の石川正夫副主任研究員は「歯と歯肉の間にたまった汚れを餌に口臭原因菌が増え、もととなるガスを発生させるため」と解説する。歯科医へ通って早期の治療に努めることはもちろん、歯と歯のすきまや奥歯に気を配り、毎日丁寧に手入れすることが大事だ。

歯科医院へ行くことも習慣づけいたい。「半年に1回は歯科医院で歯石を除去し、歯周病を予防するのが望ましい」と八重垣教授はアドバイスする。

ここで注意したいのは歯周病でなくても、弱い口臭だったら誰にでもあるということ。東京歯科大学部付属病院・息さわやか外来の品田佳世子医長は「口臭は1日の間に強くなったり、弱くなったりする」と話す。一番強いのは起床時。眠っている間に唾液(だえき)の分泌量が減って自浄作用が低下するためで、雑菌が洗い流されないと口のにおいが出やすくなるという。

ただし、これは自然な生理的口臭。朝食を取ると唾液が出るので解消される。昼食前、夕食前など空腹時には口の中が乾燥して再び強くなるが、食事をするとおさまる。

ほかに、緊張、ストレスで口の中が渇いたときやスポーツ時、女性は内分泌系の変化などで生理や妊娠時に口臭が強くなることがあるという。

生理的口臭も日々のケアでコントロールが可能だ。食事を取ることと食後、歯磨きをすることは大切。特に年配者は「食事をするときもよくかんだり、何も口に入れてなくても舌を動かしたりして唾液を出すこと」(品田医長)を心がけたい。

舌の奥に白いこけのような、舌苔(ぜったい)が厚くたまっていたら除去するのは効果的だ。舌苔はほとんど細菌の固まりで粘着力が強く、うがいをした程度ではとれない。よくかんで食事するのも舌苔をたまりにくくするが、たまったら掃除してみよう。店頭で売られている専用の舌ブラシか「ふつうの硬さから軟らかめの歯ブラシでも大丈夫」とライオンの石川さんは話す。

コツはごしごししないことと、上あごの奥にふれないこと。強くこすると表面が傷ついて味覚が損なわれるし、上あごの奥にちょっとでもブラシがつくと気持ち悪くなる。品田医長がお勧めするのは「舌を最大限に突き出しながら、真ん中の奥から手前にブラシを動かし、やさしくまんべんなくかきとる」やり方。一度取ったらよく口をゆすぐこと。舌苔がついていなければ毎日やる必要はない。

口臭といえば、ニンニクやネギ、ニラも気になるところだ。これらの食物は臭気成分が血液に溶け込んで肺に運ばれ、呼気として出てくるため、清涼剤やガムで口の中をすっきりさせてもにおいを消せないのが実情。「ニンニクのにおいは半日から1日残る」と石川さん。翌日大事な人と会う際は、食べるのを控えるのが一番の予防法と言えそうだ。


口臭防ぐ5カ条

@歯周病の予防・治療
進行すると口臭も増加する。毎日の歯磨きやデンタルフロスなどでのケアを大切に
A舌苔の掃除
気持ちが悪くならない範囲で、奥の方からかき寄せるように
B食事を取る
誰にでもある起床時や空腹時の生理的口臭は食事することで解消。唾液が自浄作用を促す。ニンニクは注意
C歯磨きを徹底
毎食毎に。食物のかす、虫歯も口臭の原因となる
Dたばこやアルコールも控えめに
やにくささは口の中に滞留。酒は渇きと呼気が原因になる


2005.7.30 日本経済新聞