栄養バランス保ち健やかに


朝 野菜サラダ追加・昼 具だくさん選ぶ・夕 ご飯もの控える

健康のためには毎日30品目食べる、野菜を300グラム取る、カロリーの過剰摂取は控える、アルコールを一滴も飲まない「休肝日」をつくる――。体にいいことだとわかっていても、実践するとなるとなかなか難しい。忙しくて不摂生になりがちな中高年の人でも、ちょっとした工夫で栄養バランスを保つことは可能だ。

都内の出版社で働く40代の中年男性Aさんのある1日の食生活を見てみよう。
(午前7時半)起床後、コーヒー1杯を飲み出社。
(午後1時)昼食は会社近くの牛丼チェーン店で食事。頼んだのは牛丼とみそ汁。
(同8時)居酒屋でビール2本と焼酎3杯、揚げ物や焼き物をつまむ。
(同11時過ぎ)帰宅後、夜食にお茶漬けを食べる。

「悪い食生活の原因は夜の食事が遅く、食べ過ぎてしまうこと」。こう話すのは、ビジネスマンの栄養状態に詳しいせんぽ東京高輪病院(東京・港)の足立香代子・栄養管理室長だ。仕事が忙しいとどうしても夕食が遅くないり、ストレスなどから食べ過ぎ、飲みすぎになる。そのため、朝起きても空腹感がなく朝食が食べられない。

いきなり理想の食生活を追求するのではなく、ポイントを絞ってできることから工夫していくことが大切だ。

朝食をパンと牛乳だけで済ませてしまう人は多い。野菜サラダを1品加えると栄養バランスはグッとよくなる。野菜ジュースでも構わない。さらにバナナを1本加えれば腹持ちもよくなり、適度な糖分も取れて頭もすっきりする。

昼食や夕食を外食に頼りがちな人は、野菜や植物性たんぱく質を取る機会が少ない。
「外食で取りにくいものを朝食で取るようにする」(足立氏)。スープやみそ汁の具に野菜を加え、ご飯に納豆を追加する。朝時間のない人は、牛乳の代わりに豆乳を飲む習慣から始めよう。

昼食はコンビニ弁当やそばなどを食べる人も多いだろう。メニューを選ぶ際、納豆そばなど具がたくさん入ったものにする。うどんとおにぎりのように炭水化物の組み合わせは避ける。カロリーの過剰摂取になるからだ。

夕食時、1杯飲みながらとなるとアルコールの影響でつい食べ過ぎる。飲む前にサラダや野菜の煮物、刺し身など油分の少ないたんぱく質を食べることだ。おかずで栄養は足りるため、最後にご飯ものを頼むのは控える。

食事と食事との時間があくときは「おやつを取ると過度の空腹を抑え、次の食事の食べすぎを防ぐことができる」と足立室長は指摘する。時間の目安は「食事まで3時間あける」。午後8時に夕食を食べるなら午後5時までに取る。分量はプリンやヨーグルト1個が目安だ。

栄養バランスを心がけるといっても、何をどれだけ食べたらいいのだろうか。

農林水産、厚生労働両省が最近公表した「食事バランスガイド」が参考になる。男性肥満者や外食の多い単身者でもバランスのよい食事ができるよう、1日に必要な食事の摂取量とメニューが一目でわかるようにした。

料理を「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」に5分類し、主食なら食パン1枚が「1つ」、副菜なら野菜いためが「2つ」などと単位を統一した。「主食5−7つ」といったようにグループごと決められた分量を食べると1日に必要なカロリーと栄養バランスが保てる。栄養知識がなくても安心だ。

中高年を中心に頭痛や不眠を訴える人が増えている。「食生活の悪さが原因の1つ」と東海大学医学部の高橋正絋教授は指摘する。乱れた食生活をちょっと見直すだけでも、こうした症状の回復のきっかけにつながる。


2005.7.17 日本経済新聞