脳卒中・心筋こうそく・自殺増加
土日の「寝だめ」禁物

40歳を過ぎると月曜日は用心した方がよい。脳卒中や心筋こうそくの発症率が最も高く、自殺者も多い。朝方に血圧が普段より急に高くなる人も少なくないという。気分がふさぎがちになる休み明けの「憂うつな月曜日(ブルー・マンデー)」。うまく乗り切るには休日の過ごし方がポイントだ。

厚生労働省が1月に公表した自殺死亡統計によると、2003年の国内自殺者は過去最多の3万2千9百人だった。最も多かった曜日が月曜日で、約15%にあたる4千7百48人。1日の平均自殺者は男性が80.7人で、最も少ない土曜日の1.5倍、女性は27.3人で同1.3倍だったという。
自殺の理由は様々だが、命を絶つ前の心理状態は、極度なうつ状態にあることが多い。

月曜日に「魔物」が潜む結果、増加するのは何も自殺だけではない。

日本人の死因第3位を占める脳卒中。鳥取大学医学部の研究グループが過去17年間にわたる同県内で脳卒中になった1万2千5百人を調べたところ、男女とも月曜日に発病する割合が最も高かった。特に40代、50代の働く世代でこの傾向は著しく、最も少ない日曜日と比較すると発症リスクは、1.4倍。なかでも脳の血管がつまる脳こうそくに限ると1.5倍になった。

脳卒中と同じように心筋こうそくでも、月曜日の発症リスクが高くなるとの研究報告が国内外にある。

脳卒中や心筋こうそくの発症に関係しているとみられるのが血圧だ。特に急激な血圧上昇で血流の勢いが増すと血管が破れやすくなり、血の塊がはがれて血管をつまらせることになるともみられる。

東京女子医科大学のグループは、ある地方都市の住民135人に協力してもらい携帯式の血圧計を使って木曜日から翌週の水曜まで1週間連続して30分間隔で毎日24時間、血圧の変動を調べた。睡眠中の血圧は曜日の違いによる差はみられなかったが、起きて3時間以内の上の血圧は月曜日が最も高く、平均値が133。しかも月曜日は起床後の血圧が睡眠時よりも20近く上昇していることも分かった。「朝の血圧の急上昇が、脳卒中や心筋こうそくの引き金になっていると考えられる」(同大第二病院の大塚邦明教授)という。

うつ状態や血圧上昇を招く「月曜日の魔物」の正体と考えられるのがストレスだ。新しい1週間が始まることを前向きにとらえることができればいいが、職場で悩みを抱えていたり、仕事へのプレッシャーがあったりすると、休みの反動から負担が大きくなる。

「週休2日制が定着したことが、むしろマイナスになっているのではないか」。こう解説するのは、国立精神・神経センター精神生理部の内山真部長だ。休みが2日あると思って、平日は仕事で無理をしがちになる。睡眠不足を土日の寝だめで補うとなるとつい朝寝坊になり、これが睡眠のリズムを大きく崩す。

軽い「時差ボケ」状態で月曜の朝を迎えなければならない。20代、30代ならまだ体力でカバーできても、40歳をすぎたころから体への負担がズシリとくる。

週休2日制の弊害を避けるために内山氏は「休みの日も平日と同じ時間に起きる。どうしても眠いときは、いったん起きてから午後3時までに昼寝をすること」とアドバイスする。また、土日にだらだら過ごさなければならないほど疲れているのであれば、平日のスタイルをすぐに見直すことの重要性を強調する。

ストレスと心の病との関連に詳しい初台関谷神経科クリニック(東京・渋谷)の関谷透院長は「土曜と日曜の過ごし方をうまく使い分けてほしい」と提案する。例えばゴルフ。土曜日よりは日曜日にプレーする方が、月曜日の仕事に及ぼす影響は少ないそうだ。

「情報機器の普及もあり、体力よりも精神面で疲れている人の方が多い。日曜日に思いっきり体を動かし汗を流せば熟睡につながる」という。

また、月曜日の午前の仕事の仕方にも工夫がいる。週初だからといって過密な予定を組むと休日の精神的負担として跳ね返る。むしろ前の週に片づかなかった残務整理から始めるなどのゆとりを持つことが大切だ。

ひとくちガイド

《本》
◆憂うつな月曜日へ対処法を詳しく知りたいなら
「月曜日の頭痛を止める本」(関谷透著、KKベストセラーズ」
《ホームページ》
◆自殺の最近の傾向を調べるなら
厚生労働省の最近公表の統計資料(http:/www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/index.html)に自殺死亡統計の概況がある
2005.4.10 日本経済新聞