豊富な干し柿・おから
整腸+生活習慣病の予防効果
麦ご飯も効率摂取

食物繊維はたっぷりとっていますか? 十分にとれば、便秘になりにくいだけでなく、高めの血糖値やコレステロール値を下げる効果も期待できる。しかし、現代人の摂取量は減る一方。意識してとる必要があるが、ドライフルーツやおからなど、手軽に食物繊維がとれる食品も多彩だ。機能性食品も登場している。

豆や野菜、精製度の低い穀物、いも、きのこなどに多く含まれる植物性成分、食物繊維の働きが注目されている。消化吸収されにくいため、かつては栄養にならない不要物とされていたものだ。

「特に注目は整腸作用。食物繊維を多くとれば排便量が多くなり、便秘しにくくなることがわかっている」と、腸の健康に詳しい光岡知足東京大学名誉教授は話す。

便秘に悩んでいる現代人は多い。女性でその傾向が目立つ。ロート製薬が2003年に10−50代の女性1330人を対象に行った調査では、自分は「便秘」もしくは「便秘になりやすい」と答えた人は全体の56%。一方、「比較的毎日お通じがある」という人は全体の34.5%だった。

便秘が問題な理由は、「便が大腸に長くとどまるほど、腸内に悪玉菌が増える。さらに、この悪玉菌が作る腐敗物質が、疲れや肌荒れなどの様々な不調を引き起こすから」と光岡名誉教授。

近年、食物繊維の摂取量は減り続けている。今年4月から栄養指導などに使われる、『日本人の食事摂取基準(2005年版)』では、健康維持に十分な食物繊維の摂取目安量を定めた。性別、年齢で違いはあるが、70歳未満の成人で1日の目安量を19−27グラムとしている。だが、実際の平均摂取量は、男性で1日14.7グラム、女性は14.6グラム(『平成14年度国民栄養調査』による)と目安量に比べ約5グラムは足りない。

原因としては、植物性食品が多い伝統的な和食から、肉や脂肪の比重が大きい洋食へと現代の食生活が変化したことなどが指摘されている。

では、食物繊維摂取量を増やすにはどうしたらいいのか。「まず、穀類なら精製度の低いものを多くする。続いて熱を加えないと食べられない歯応えのある野菜や豆類も意識的にとる。さらに、干しシイタケ、ドライフルーツなどの乾物を加えればいい」と大妻女子大学の青江誠一郎助教授は指摘する。

同大学の池上幸江教授が食物繊維摂取量を増やす具体的な食事例を挙げる。「白米に食物繊維量が多い麦を5割混ぜて、1日2ぜん食べれば食物繊維は約6グラムも増える」

手軽に食物繊維がとれる代表的な食材を表にした。量の多さで際立っているのが、ドライフルーツ。干し柿なら1個で約9グラム、ドライイチジクなら3粒で6.6グラムと5グラム以上になる。大豆の繊維分を取り出したおからも多い。ただし、ドライフルーツはカロリーが比較的高いため、食べ過ぎには注意を。

食物繊維をとることで得られる効果は整腸作用だけではない。高めの血糖値やコレステロール値を下げるので、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病を予防する効果も期待できる。

食物繊維には大きく分けて、水に溶けない「不溶性食物繊維」と水に溶ける「水溶性食物繊維」の2種類がある。不溶性食物繊維は「腸内で水を吸って膨らみ、便のかさを増やし、便が進むスピードを速める」(池上教授)。

一方、水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌の餌になって、整腸作用を発揮。さらに、「食物に入っている糖分の吸収を抑えて、血糖値の急上昇を防ぐ」と国立病院機構宇都宮病院(栃木県河内郡)内科の森豊医長は説明する。

それぞれの含有比率は異なるが、食物繊維の多い食材には、不溶性と水溶性の両方が含まれている。食物繊維を多くとる食生活をしていれば、整腸作用も生活習慣病予防効果も期待できるわけだ。

食生活ではなかなか食物繊維摂取量が増やせないという人には、食物繊維を配合した機能性食品もある。中でも、「お腹の調子を整える」「糖の吸収を穏やかにする」「コレステロールの吸収を抑える」などと表記された特定保健用食品は効果を確認済みだ。
なお、食物繊維を急に大量にとると、お腹が張ることがあるので気をつけたい。
(日経ヘルス編集部)


手軽に食べられて食物繊維が多い食品ランキング

1
干し柿(1個)
9.0g
2
ドライイチヂク(3粒)
6.6g
3
おから(50グラム)
5.8g
4
アボカド(2分の1個)
3.7g
5
納豆(1バック)
3.4g
6
ゆでトウモロコシ(1本)
3.3g
7
焼き芋(2分の1本)
3.2g
8
ドライブルーン(5粒)
2.9g
9
コンニャク(2分の1枚)
2.8g
10
ゴボウ(4分の1本)
2.6g
「五訂ベターホームの食品成分表」を基に日経ヘルス編集部で手軽に食べられる食材をピックアップ。ドライフルーツは繊維の量が豊富なものが多い


2005.3.19 日本経済新聞