キムチはうまい。
代表的な白菜キムチは、塩漬けした白菜に、ニンニク、ショウガ、アミなど魚介類の塩辛、ナシ、リンゴなどを入れ、乳酸発酵させた漬物である。この乳酸発酵に、おいしさの秘密がある。キムチは酸、苦、甘、辛、鹹(塩辛い)の五味の調和がとれている。そのうえ、塩辛のたんぱく質が発行してできるアミノ酸、その過程でできるペプチドのうまみがプラスされるのである。

体によい漬物としても注目されている。もともと野菜が不足しがちな冬に、ビタミンの供給源になるよう作られるものだ。白菜の塩漬けと比べてみるとカロテン、ビタミンB1、B2、B6、B12、Cが多く含まれている。

さらに機能面でも評価されるのが乳酸菌。キムチにはヨーグルト並みに菌がたくさん含まれる。普通の乳酸菌は腸に届くまでに死んでしまうが、キムチの乳酸菌は生きたまま腸に届く大変すぐれたものであるという。乳酸菌は整腸作用と免疫力を高める働きがある。

その他の多くの漬物と異なって、つけ汁ごと洗わずに食べるのが特徴だ。この汁の中に乳酸菌やビタミン類がたくさん入っている。だからキムチの汁は捨てずにそのまま食べること。ラーメンや鍋物にもキムチと一緒に入れて、おいしくとろう。

キムチは4度以下で保存しておかないと発酵が進んですっぱくなってくるが、一度キムチをゴマ油でいためてから鍋物に加えると、酸味が抑えられ、香りやおいしさが増す。古くなった、まずくなったといって捨てることのないように。
(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.2.26 日本経済新聞