中国の食物の本をみると冒頭に食物の性質について書いてある。例えばこの食物は「温熱性」か「寒涼性」か、中間の「平」であるかというものだ。これは食べ物自体の温度ではなく、体内に入ったときに、どんな作用をするのかを示している。体を温める作用があれば、その食物は熱性か温性。体を冷やす作用があれば、寒性か涼性である。この性質を利用して中国では病気の予防や治療を行っている。

風邪も大きく風寒タイプと風熱タイプに分けられる。前者は体が熱っぽく、寒気が強いのが特徴。頭痛や体の節々が痛む、くしゃみ、鼻詰まり、透明な鼻汁なども典型的な症状である。これに対し後者は、発熱、頭痛、口が渇く、のどが痛む、せきや黄色い痰(たん)・鼻汁が出るといった症状が出る。西洋医学ではどちらの症状が出ても解熱剤や抗生物質を使う場合が多いが、中国の伝統医学では、タイプ別に与える物が違う。

例えば風寒タイプに対しては、温熱性の作用があるショウガと黒砂糖を熱湯に入れて飲むというのが一般的だ。同じ温熱性の長ネギを入れた熱々のおかゆもよく食べる。ネギの根っこのついた白い部分が特に効果的である。うどんやラーメンの中に、おろしショウガやネギをたっぷり加えても良い。

風熱タイプに対しては寒涼性の作用のある乾燥した金銀花(きんぎんか)100グラムと菊花50グラムを漢方薬の店で買ってくるといい。氷砂糖50グラムと水5リットルを加えて30分ほど煎(せん)じ、さましてから冷蔵庫に保存する。朝と夕に40ミリリットルずつ飲むといい。薬嫌いの人は試してほしい。
(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.1.15 日本経済新聞