熱い風呂 角質層を傷め
洗い過ぎ 保湿成分失う
入浴剤・乳液で水分補給を

脚や腕の皮膚がカサカサしたり、粉をふいたようになって、かゆい――。冷え込みが厳しく、空気が乾燥する1、2月は、乾燥肌や乾皮(かんぴ)症に悩む人が増える季節。意外にも、体を温めるために入る熱いお風呂と体の洗い過ぎが、肌の乾燥を助長するケースもある。肌の乾燥を防ぐ入浴法を紹介しよう。

「すねの部分がカサカサになり、夜かゆくて眠れないこともある」。会社員の足立里美さん(39)は毎年冬になると、こんな肌のかゆみに悩まされてきた。ところが今年はすねの肌はツルツル、不快なかゆみもない。というのも皮膚科医のアドバイスで昨秋から入浴法を変えたからだ。

その教えとは、タオルでゴシゴシ洗うのをやめること、熱い湯への入浴をやめることの2つ。それ以外はこれまでの入浴と変わらないが、乾燥肌は治まったという。

「日本人は風呂好きのせいか長く入浴し過ぎたり、肌を洗いすぎたりして乾燥肌になる人が多い」と指摘するのは国立病院機構九州医療センターの今山修平皮膚科科長。

角質層が蒸発防ぐ
肌から水分が蒸発しないのは、角層細胞が集まって肌表面を層状に覆う角質層の働きがあるから。細胞や角質層の中にアミノ酸や油分などの保湿成分が含まれる。これらが細胞とその周囲に水分を行き渡らせ膨らみを保ち、すき間のない層構造を作る。その結果、肌の内側から水分が逃げないようになる。

ところが42度近い熱い湯に長時間入って肌がふやけると、角層細胞の内外にある保湿成分がお湯に溶け出してしまう。「保湿成分を失った角層細胞は、風呂上りに乾くと弾力のない干からびた状態になる。すると細胞同士の間にもすき間ができ、そこから水分が逃げて肌の乾燥が進む。アレルゲンなども進入しやすくなる」と今山科長。特に湿度が下がる冬場は、風呂上りの肌の乾燥も早い。

さらに「タオルで肌をゴシゴシ洗うと、角質層を無理にはがすことになり、肌は一層痛みやすくなる」と、野村皮膚科医院(横浜市)の野村有子院長はいう。肌の乾燥によるカサカサやかゆみを防ぐには、角層細胞とその内外の保湿成分が失われにくい入浴法をこころがけたい。

そこで皮膚科医たちが指摘する「冬の乾燥肌を防ぐ入浴法」を5つのポイントにまとめた。

適温は38−40度
第一はお湯の温度。乾燥肌の人には38−40度のややぬるめの温度を薦める皮膚科医が多い。これ以上の熱い湯は肌の保湿成分を損なうだけでなく、角質層を著しく痛める可能性があるという。

第二はお湯につかる時間。乾燥肌の人は肌がふやけない程度にとどめる。できれば10分以内が望ましい。冬に必ず肌がかゆくなる人は週のうち数日はシャワーでいい。

第三は洗い方。タオルでゴシゴシ洗うのはやめ、タオルやスポンジで立てた細かな泡でなでるように塗り、ぬるい湯で流す。「乾燥しがちな人は、わきの下、陰部と尻、足の裏を石けんの泡で洗うだけにして、ほかの部位はお湯で流す。これだけでも十分清潔に保てる」(今山科長)

第四は入浴中の保湿成分の補給。バスタブにつかるのが大好きという人は、油分などの保湿成分が入った入浴剤を入れるといい。「セラミドなどの保湿成分を配合した入浴剤を使うと、乾燥肌が改善することが多い」と三重大学医学部皮膚科学講座の水谷仁教授は指摘する。

第五は入浴後、さらに保湿成分を補給すること。乳液などをすねや腕、乾燥しやすいところによくすりこむ。その際、浴室を出る前に行うのがポイント。浴室外の乾いた空気で肌がかさつくのを防ぐためだ。面倒なら「油分入りの入浴剤をキャップ3分の1ほど洗面器に溶かし、風呂上りにかけ湯するだけでも違う」と水谷教授は助言する。

寒い時期の入浴は、冷えた体を芯(しん)から温め元気にしてくれる。肌をいたわりながら、この効果も楽しみたい。
(日経ヘルス編集部)
2005.1.22 日本経済新聞