ストレスの克服

 

當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

 ストレスとは、環境から影響を受けたことで生じる体の反応のことを指します。そして、この反応の原因となる影響や現象のことをストレッサーと呼びます。

 一般的にストレスというと原因と反応の両方を指す言葉として使われています。ストレッサーとなるものには、寒冷、騒音、栄養不足、低酸素、汚染物質、病原体などがあります。さらに、仕事、家事、受験、スポーツなどが精神的ストレッサーとして作用すると考えられています。

それらは感じかた、気持ちのあり方しだいで、強いストレスになったり、弱いストレスになったりもしますし、無意識下でのストレスとして作用したりして自律神経に影響します。

 つまり、ストレッサーはごくありふれたものであり、体で起こるストレス反応も、いつもある程度起こっていると考えられています。しかし、ストレッサーにさらされる機会が重なり、ストレス反応が強くなると、人は苦痛を感じます。

 強いストレッサーにさらされると、緊張反応が表れます。動悸(どうき)がしたり、血圧が上がったり、体に力が入ったりします。場合によっては、冷や汗、鳥肌が起こります。これらの反応は交感神経の活動と、副腎という臓器から分泌されるアドレナリンというホルモンの作用によります。交感神経とアドレナリンの作用で体の緊張を高め、性能を高めて、ストレッサーを克服しようとしているのです。

 もしストレッサーが長く作用し続けると、さらに副腎皮質ホルモンが分泌されて、体に蓄えられたエネルギーを総動員して、抵抗力を高め、ストレスを克服しようとします。通常は、これらの作用で何とか難局を乗り越え、ストレッサーをやり過ごすことができるのです。というわけで、アドレナリンや副腎皮質ホルモンはストレスホルモンと呼ばれることがあります。

 もし、ストレッサーにさらされることが長期にわたると、ストレスホルモンの分泌が低下して、体の抵抗力を失うことが知られています。長期のストレスは病気を引き起こすことになるというわけです。例えば、高血圧、糖尿病、がんなどの発症にストレスが関与することが分かっていますし、頭痛や不安、うつ状態を起こすことも知られています。

 つまり、少々のストレスはすぐに克服できるので、軽く考えがちで、無理をしてしまいます。でも、それが度重なると、ついには耐えきれなくなり病気になってしまいます。ストレスの芽は小さいうちに対処しなければなりません。

2013年2月18日 提供:毎日新聞社