筋骨とホルモン=當瀬規嗣
 

 男性ホルモンは、男性として身体の働きを支えるために必要なものであることは、言うまでもありません。ごく簡単にいうと、男性ホルモンの働きで「男らしくなる」ということです。

 男性の生殖機能はもちろん、男らしい性格、男らしい体格も、男性ホルモンあってのことです。男らしい体格というのは、大きな体と発達した筋肉を指しています。これは、原始の昔、妊娠、授乳、育児をしている女性を助けるために、生活の糧を得る、外敵から女性を守るという役割が必要だったためです。

 実際、男性ホルモンが筋肉を肥大、強化する作用はとてつもなく強力です。例えば、男性ホルモンの分泌が盛んな時にトレーニングなどで筋肉を使うと、筋肉はみるみる太くなっていきます。男性ホルモンがたくさん出ているのは10代、20代の男性ですから、この時期にスポーツに励めば、立派な体ができあがるわけです。

 でも、筋肉の肥大は、成長期だけの現象ではありません。よく、使わない筋肉はやせるといわれますが、まさにその通りで、日常生活で筋肉を使っている分だけ、筋肉が肥大していると考えるべきなのです。ですから、今のあなたの筋肉は男性ホルモンによって維持されているのです。

 実は、女性でも男性ホルモンは結構分泌されていて、やはり筋肉の肥大に関わっていることが分かっています。日ごろ、支障なく体を動かすことに男性ホルモンは一役買っているというわけです。

 ところが、筋肉が働く土台となる骨の維持には、女性ホルモンが必要です。なので、閉経期以降に女性ホルモンが減って、骨粗しょう症になってしまう女性が多いことはすでにご存じでしょう。

 では、男性はどうなのかというと、やはり骨の維持に女性ホルモンが必要なのです。「男性の骨に必要な女性ホルモンの由来は」というと、骨の中で男性ホルモンを原料にして女性ホルモンを作り出しているのです。男性が年をとって骨粗しょう症になるのは、女性ホルモンの材料となる男性ホルモンが減少するためと理解できます。

 こうしてみると、男女ともに男性ホルモンと女性ホルモンが必要です。筋肉は男性ホルモンの担当、骨は女性ホルモンの担当です。女性が作った土台の上で、男性が力を出すと考えると、示唆に富んでいますね。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は18日掲載

2013年2月4日 提供:毎日新聞社