動脈硬化などの予防に

「ご覧のとおり、あなたの血液はドロドロですね」。自分の血液のビデオ映像を見せられ、医師からこう言われたら。血液検査といえば血糖値やコレステロール値といった数値で示されるのが一般的だが、血液の粘度を映像で見せてくれる検査が登場した。

「さすがに患者さんも自分のドロドロした血液を見ると、生活習慣を変えようと決意する人が多いですね」。昨年春から血液サラサラ度を調べる検査を導入した、東京女子医科大学付属成人医学センター(東京都渋谷区)の栗原毅・助教授はこう話す。

健康診断を受けて中性脂肪値や総コレステロール値が高いと高脂血症が疑われるが、患者にはこれといった自覚症状がないため、生活習慣を改善して病気を防ごうという意欲がわきにくかった。

ところが、新開発の血液サラサラ度検査は、自分の血液状態を映像で見ることができる。血液がサラサラだと血液はよどみなく流れるが、血液がドロドロの人は流れが遅かったり途中で滞ったりするのが、一目でわかる。「ここで検査を受ける人の半数以上が血液ドロドロです」と栗原助教授は話す。

血液中に中性脂肪やコレステロールが多かったり、強いストレスを受けたりすると、血液がドロドロの状態になる。この状態が長く続くと、動脈硬化などの病気になる危険性が高まるといわれる。

健康な人は酸素を運ぶ赤血球や、外敵と戦う免疫機能を持つ白血球が体の隅々まで行き渡り、良好な状態を保っている。血管の末端には毛細血管があり、赤血球や白血球に比べて血管の直径が細い。健康な人は赤血球や白血球がしなやかに変形して、毛細血管を通り抜けていく。これが血液サラサラの状態だ。

一方、血液がドロドロの人は血球の細胞膜が硬くなっているためスムーズに毛細血管を通ることができない。また、血液中に脂質が多いので、複数の血球が数珠つなぎのようになって血液の流れが悪くなる。

血液サラサラ度の検査は、採決した血液を人間の毛細血管の太さの金属の溝に流し込んで測定する。このときの血液の流れ方を映像に撮り、通過時間を調べる。

検査は血液をとるだけの簡単なもので、数分で結果がわかる。「患者さんに分かりやすい形で示せるので、高脂血症や脂肪肝などの患者さんの生活指導に利用している」と栗原助教授。

現在、この検査は表に示した医療機関などで受けられる。検査料は2千―5千円程度だが、人間ドックや他の検査の一部として実施している事が多い。

もともとこの検査装置は、独立行政法人の食品総合研究所(茨城県つくば市)の菊池佑二氏らが1990年代半ばに、食品研究のために開発した。

菊池氏らはこの装置を使って血液をサラサラにする食品の研究を進めている。

梅干し、酢、ニンニク、タマネギ、そば、納豆、青魚、緑茶、紅茶、麦茶などを食べたり飲んだりすると、食前にドロドロしていた血液が食後1時間ほどでサラサラになることがわかった。

また、「適度な飲酒や運動、入浴や指圧などによる適度な刺激を受けると、血液がサラサラになります」と菊池氏。

逆に、血液をドロドロにする食べ物は何か。これまでに5千人以上の検査結果を見た経験から栗原助教授は、高コレステロールの食品を避けるより、中性脂肪値を高める食品を控えるといいのではないかとみている。

「中性脂肪値が高いと血小板が固まりやすく、白血球の粘着性が高くなって血液がドロドロになりやすい。脂肪分は血液をドロドロにしますから、控えたい。また、糖分が多い甘いものや炭水化物の取りすぎも中性脂肪値を高くします」と指摘する。

脂肪分や甘いお菓子を控えめにして、ニンニクや納豆、梅干しといった健康にいい食材を毎日食べると、血液サラサラを維持できそうだ。     (『日経ヘルス』編集部)

血液サラサラ度検査を受けられる医療・検診機関の例
東京女子医科大学付属成人医学センター   ・03・3499・1911
血液の一般的な検査と合わせて受診料1万円(要予約)。会員制の人間ドックの場合は2千円プラスすると検査を受けられる。
高輪メディカルクリニック         ・03・3473・8011
血管の硬化、体内の免疫バランスなどから動脈硬化度(老化度)を測る「健康寿命ドック」の一部として血液サラサラ度検査を実施。受診料は1セット9万8000円。血液サラサラ度検査だけも3000円で実施(初診料別)
大阪府立健康科学センター・健康開発ドックコース ・06・6973・3535
「循環器病予防コース」(4万6000円程度)と「冷え・冷房病予防コース」(1万2000円程度)の一部として実施。検査名は「血液マイクロレオロジー検査」

(2002.4.6 日本経済新聞)